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元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『人生激場』  三浦 しをん
2008-02-27 Wed 22:16
人生激場 (新潮文庫)人生激場 (新潮文庫)
三浦 しをん

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 雑誌『週刊新潮』に連載されていたエッセイを1冊にまとめたもの。2003年刊の改装改訂版。
 三浦しをんの『まほろ駅多田便利軒』『風が強く吹いている』が面白かったんでもっと読みたいと思ったんだけど、この人の本は図書館でいっつも貸出中。何とかエッセイコーナーで彼女の本を見付けたという、『しをんのしおり』を読んだ時と全く同じ状況で借りた。
 始終妄想してたりとか、胸毛のある男性が好きだとか、友達との駄話とか、くだらないことが面白い。それでいて、さすがに文学作品には造詣が深そうですなぁ。本の話はそうたくさん出てくるわけじゃないけど、渋いとこ押さえてる。私はタイトルと作品のイメージしか知らない本とかで、面白文章の中に違いを見せつけられた気がした。
 良い本を読んでるせいか、文章や言葉選びはきれいだ。だけど書いてることは妄想だらけで、そのギャップで面白さがプラスされる。
 しかし連載されてたのは『週刊新潮』だったんだけど、読者層である中高年男性はどう思いながら読んだんだろうなぁ。
別窓 | [ま行の作家]三浦 しをん | コメント:0 | トラックバック:0 |
『しをんのしおり』  三浦 しをん
2007-12-21 Fri 00:17
しをんのしおり (新潮文庫)しをんのしおり (新潮文庫)
三浦 しをん

新潮社 2005-10
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 『風が強く吹いている』が結構面白かったんで、他の本はどんなもんかと思って図書館で物色した。しかし人気作家らしく、ほぼ貸出中。私の友達の中でも一番の読書家が「三浦しをんってエッセイしか読んだことないけど、面白かったよ」と力強く言ってたことを思い出し、エッセイコーナーでようやくこれを見付けた。
 この本はウェブ日記を本にしてある。まだそれほど有名じゃない頃のものだからアルバイトとかしてるけど、面白かった。エッセイが面白いというか、面白いこと考えながら生きてる人なんだな。日々の記録としての日記は2~3割程度であとは妄想が詰まっているんだけど、その妄想の書き方もまた上手い。さすが就職試験の作文で文才を見出されただけある。
 あくまで私の中だけど、売れてるみたいだな~と思うようになったのは2005年くらいだと思ってる。これを書いてた頃から数年後、彼女は大ブレイクすることになる。きっと今は専業作家で、バイトなんかしてないんだろうなぁ。
 この著者の本、私は『まほろ駅多田便利軒』と『風が強く吹いている』しか読んでない。2作しか読んでない上で言うけど、何か自分が作ったキャラで小説内以上の妄想をしてそうな人だと思う。
 職場で昼休みに読んだけど、笑いそうになるのを抑える努力は必要だった。
別窓 | [ま行の作家]三浦 しをん | コメント:0 | トラックバック:0 |
『風が強く吹いている』  三浦 しをん
2007-11-29 Thu 22:12
風が強く吹いている風が強く吹いている
三浦 しをん

新潮社 2006-09-21
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 寛政大学4年生の清瀬灰二は銭湯の帰り道で、美しく疾走する万引き犯の蔵原走(カケル)と出会った。すぐさま追いかけた灰二は彼を、自分が住む竹青荘に誘う。竹青荘は、リーダー格の灰二、双子のジョータとジョージ、ヘビースモーカーのニコチャン、在学中に司法試験に合格したユキ、国費留学生のムサ、クイズ番組大好きのキング、どんな時も紳士的な神童、美系マンガオタクの王子、それに走の10人になったところで、灰二は全員に「みんなで箱根駅伝を目指す」と言い出す。最初は唖然とした一同だが次第に走る事に興味を覚え始め、10人は灰二の指導の元で共に箱根を目指しすことになった。性格、身体能力共に考慮した灰二のコーチぶりに何となく走らされてしまうメンバー。高校時代の出来事で競技としての“走る”ことにわだかまりを持っていた走の気持も段々とほぐされて、走る喜びを思い出していく。
 序盤で灰二が全員を説き伏せるシーンがちょっと不自然だと思ってたけど、すぐにどうでもよくなった。しかも4月から箱根駅伝を目指して出場するとかあり得ないんだけど、それもどうでもよくなった。全員のキャラ設定とか腐女子臭がしたけど、それもどうでもいい。ご都合主義とかも。そういうの全部を遥かに凌駕した面白さっていうか、魅力があった。
 この話のほとんどは走の目線で語られてる。でも最後の箱根駅伝のシーンは各区間、それぞれの走者の目線で語ってあった。10人分の思いの中にそれぞれドラマがあって、半端なく引き込まれていく感覚が心地良い。いい具合の爽快感と高揚感でクライマックスを読み終え、その後のクールダウンの程良さがまたいい。
 真剣に読んでても時折ふっと笑ってしまうシーンとかあって、終始楽しく読めた。来年の箱根駅伝は視聴率がちょっと上がる気がする。
別窓 | [ま行の作家]三浦 しをん | コメント:0 | トラックバック:0 |
『まほろ駅多田便利軒』  三浦 しをん
2006-09-15 Fri 18:58
まほろ駅前多田便利軒まほろ駅前多田便利軒
三浦 しをん

文藝春秋 2006-03
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 まほろ市の駅前で何でも屋「多田便利軒」を営む多田啓介は、高校時代の同級生・行天春彦と再会した。美形で成績はいいが孤高の変人で、高校時代に発した言葉は右手小指が断ち切られた時に「痛い」と言った一言だけ。
 しかし再会した行天はよく喋る男になっており、真冬なのに素足にサンダル姿で一晩泊めて欲しいと言う。お人好しだからか過去の後ろめたさからか一晩泊めることにした多田だったが、行天は結局居座ってしまった。2人して便利屋に転がり込むささやかな依頼を引き受けたり、関わり合いたくない事件に巻き込まれたりしていく。

 三浦しをんって前からいた気はするけど、最近見かける頻度が上がってきたな~って時に直木賞を受賞したんで読んでみた。司書として芥川賞・直木賞受賞作品くらいちゃんと読まないといけないかも・・・と去年辺りから思い始めてることだし。今更思うことも、今までちゃんと読んでないことも問題だけど、なによりこれまで新規開拓に全く興味なかったのが何より問題なのかもしれない。いや、最近は頑張ってますよ、本当。
 って私事はさておき。読み始めはハズレかと思ったけど、じわじわと面白さが盛り上がってきた。最初は、多田便利軒に依頼されることを解決しつつ人の温かみに触れるとかいうありきたりだけど盛り上がりに欠けるサクサク読める軽い話かと思った。でもちょっと読み進めると意外に深い。軽そうで重い。
 多田にしても行天にしても、少しずつじわじわと2人のことがわかっていく感じが面白かった。人物を語るに当たって結構大切な事件でも、そう簡単には教えてもらえない。行天の小指切断事件も、多田のかつての結婚生活・・・前妻の浮気や自分の子と信じたい赤ちゃんのこと、ハイシーやルルが意外としっかりしていることもなかなか教えてもらえない。多田便利軒への依頼も季節もどんどん過ぎて、ぽつぽつと断片的に語られていく。だけど全然後出しって感じがしないのは、絶妙なタイミングで明かしてくれるからだろう。そうだったのか!だからあんなだったのか!と納得いく。だからあんなだったのか!も~三浦さんったら出し惜しみしちゃってさ、とは思うけど。
 基本的に多田目線の語りは軽快だけど、時々見え隠れする暗い過去。物語が進んでその過去を知り、多田が抱き続けてる感情を知り、もう一度始めから読むと全く違って見える。単純なヒューマンドラマには絶対見えない。多田はむさいおっさんには見えない。自分と同じ苦しみを抱えているという共通点を前妻に見出して暗い喜びを感じる多田に、ひたすら哀しい視線を向けて読んでしまう。行天の存在は彼を変えれてるだろうか。
 最後に多田が幸福を感じる終わり方で良かった。今後も2人はコンビで行くのかな?ほろ苦い余韻を少しと、いい余韻をたくさん残しながら読み終わって、いい気分で本を閉じれた。
 面白かったけど、ここで冷静になってみる。直木賞作品と考えるとちょっとエンタメに傾き過ぎてる気がする。大衆小説ではあるけど、うーん・・・。感情を振り回されるような面白さではなかったかな。文藝春秋から出してなかったら私の読み浅さを反省するところだけどね。
 それから描いているアングラは石田衣良の劣化版かな。目指す物が違うから比べちゃ悪いけど、似てるからこそ浅さが気になる。ハイシーやルル、星、ヤマシタなんかは、完全にデジャブ感じる。IWGPは好きなんで、読みやすく感じつつも何かデジャブ感が集中力を妨げた。
 とはいえ、何度も書くけどやっぱ面白かった。
別窓 | [ま行の作家]三浦 しをん | コメント:0 | トラックバック:0 |
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