FC2ブログ
元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『死にぞこないの青』  乙一
2004-12-08 Wed 21:10
死にぞこないの青 (幻冬舎文庫)死にぞこないの青 (幻冬舎文庫)
乙一

幻冬舎 2001-10
売り上げランキング : 20350
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 飼育委員になりたいために些細な嘘をついたマサオは、担任の羽田先生からいじめの標的にされてしまう。良いことをしても悪いことをしても馬鹿にされ、誰かが宿題を忘れてもクラスが騒がしくても全部マサオのせいにされ、精神的ないじめが執拗に繰り返される。
 次第にクラスメイトからもいじめられていくマサオの精神が壊れそうになった時、「アオ」が見えるようになった。ペンキで塗ったような青い肌、縫われた口、片耳はなく、片目は接着剤でつぶされて、拘束服を着せられている「アオ」。マサオが虐げられていると「アオ」は現れ、その場に現れる恐ろしい姿でマサオをじっと見つめている。
 エスカレートするいじめに限界まで追いつめられたマサオは、先生を殺そうと決意した。

 最近ハマッててすんごい好きな乙一だけど、初めてハズレを引いた。といっても駄作ではない。作品自体は素晴らしいんだけど、これまで私が好きだった乙一とはちょっと違う感じの話だった。
 江戸時代に「部落」が作られたように、クラスをまとめやすくするために羽田先生はマサオをいじめる。子供達は影響を受けて同調し、クラスという狭い社会で追い詰められたマサオは幻覚が見え始める。これはもう、現実としてありそうな話じゃないか。担任教師にいじめられた人って結構いると思うし、こういうふうに標的にされる人もいそうだ。
 いじめそのものもだけど、精神的に追い詰められていくマサオの精神が妙にリアルで苦しい。胸クソ悪いストーリーだけど乙一は文章が上手いから、読んでてこっちまで精神的に追い詰められていくようだった。小学生の目線で書いてるのに妙に大人びた思考してて、それが不快じゃない気味悪さも相変わらず乙一だ。
 これまで私が読んだ乙一作品は、他の人には見えないけど確かにそこに存在する「なにか」があった。例えば「はじめ」も空想だけには収まらなかったし、「しあわせは子猫のかたち」も子猫の飼い主は共存してたし、『暗黒童話』も主人公が見る幻ってだけでは片付けられない不思議な現象が書かれてる。でも「アオ」は、マサオの精神が生み出した幻覚という枠にしか収まらない。ここの所にちょっと物足りなさを感じた。
 違う人が書いた作品だったら、いじめ文学として普通に評価できたと思う。でも乙一の奇想天外な発想が好きだったから、このラストにはちょっと拍子抜け。教師による精神的いじめを鬱々とした気分で読みつつ、乙一だからきっと最後には鬱気分を吹っ飛ばすようなことになると思ってたのに。でも、普通に爽やかに終了。あれ?終わり?いや、面白いんだけど、でももうちょっとさー。って感じ。
 ただ、こんな作品まで書けるんだという驚きはあった。あとがきでマサオの外見は自分がモデルって書いてあったけど、まさかいじめも体験談だったりとかしないよね?乙一をそんな目に合わせた教師とか、万死に値するよ。

 余談だけど、『暗いところで待ち合わせ』での“追われてる主人公が盲人の家に忍び込んで隠れる”というシチュエイションは元々この『死にぞこないの青』で使おうと思ってたネタらしい。でも結果的に切り離して、『暗いところで~』が完成したとか。切り離してくれてありがとう、乙一。私、あの話大好き。
 余談ついでに。私は最近、乙一のタイトルのセンスにも惚れつつある。
別窓 | [あ行の作家]乙一 | コメント:2 | トラックバック:0 |
『失踪HOLIDAY』  乙一
2004-10-31 Sun 22:16
失踪HOLIDAY (角川スニーカー文庫)失踪HOLIDAY (角川スニーカー文庫)
乙一

角川書店 2000-12
売り上げランキング : 6556
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 乙一ラノベ作家時代の小説。20歳の時に出版された作品だ。さすがラノベ、絵が・・・。まあ気を取り直して。
 母子家庭で育ったナオは、母親の再婚で突然お金持ちの家の娘になった。再婚して2年後に母親は死んだけど、義父は相変わらずナオを娘として自分を大切にしてくれる。その後義父は、別の女性と再婚。ナオは再婚相手のキョウコと、衝突してばかりだった。
 14歳の冬休み、ナオはキョウコとの喧嘩をきっかけに家出を決意する。家出先は、家の離れに住むクニコの部屋。その部屋でナオは狂言誘拐を計画したが、この計画は思ったより大きな騒動を引き起こしていく。
 うーん、ラノベだな。まさにライトで読みやすい。軽いって馬鹿にしてるんじゃなくて、軽いのに面白いと思う。今まで私が読んだ乙一の本はヘビーな話が多かった。でもこの話は、「あとがき」で飄々としている乙一テイストに通じるものがある。今までは作品と「あとがき」とのギャップに驚かされることも何度もあったけど、こういう作品でああいう「あとがき」だと自然だな。とりあえず、面白い。これまでの作品とちょっと違って、ストレートに面白い。特にナオの豪放磊落っぷりがいい。クニコが「ジャイアンのよう・・・」と言いかけるけど、そういう性格。
 今回のオチは途中でわかったかな。まあこれまでと比べて非常にわかりやすかったからであり、とてつもなく大きくてわかりやすいヒントがあったからなんだけど。ていうか、オチを隠そうとしてないし。それでもこの話は面白かった。最後にナオもクニコも幸せになりそうで良かった。
 同時収録の「しあわせは子猫のかたち」は『失はれる物語』で既読だったけど、少し寂しくて結構温かい話で何度読んでもいい。これはラノベって感じはしない。ていうかこれまでラノベってファンタジーとかキャラクター小説しか読んだことなかったけど、こういうのもあるのか。まだまだ勉強不足だな。ていうかラノベの定義が曖昧すぎるのも悪いと思うんだけど。
 でも、これを20歳の若者がねぇ。あくまで出版が20歳だから、執筆したのは18とか19くらいだろう。どの本か忘れたけどいつもの「面白あとがき」で、就職活動したくなかったから作家になったと書いてあった。本当かどうかは知らないけど、神様、乙一のような才能ある人を作家にしてくれてありがとう。
別窓 | [あ行の作家]乙一 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『天帝妖狐』  乙一
2004-09-02 Thu 11:09
天帝妖狐 (集英社文庫)天帝妖狐 (集英社文庫)
乙一

集英社 2001-07
売り上げランキング : 31941
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 「A MASKED BALL」と「天帝妖狐」の2本立て。

「A MASKED BALL-及びトイレのタバコさんの出現と消失-」
 高校生の上村は、学内で最も見つかりにくそうな剣道場の裏のトイレで喫煙するようになった。誰もこないと思っていたトイレだったけど、壁の落書きをきっかけに上村を含めた5人で落書き意見交換を始めるようになる。しかしその落書きが、いつの間にか犯行予告の伝言板使われるようになっていった。
 上村がクールに無防備すぎて、今にも背後から襲われるんじゃないかとハラハラした。しっかし犯人は意外というか、予想だにしなかったというか、びっくり。これは読みだしたら止まらないし、面白い。

「天帝妖狐」
 夜木と杏子の出会いから別れまでが、夜木の独白の手紙を交互に挿みながら展開する。
 杏子は生き倒れの青年・夜木を助けた。彼は体中に包帯を巻いている異常な風体でありながら、杏子とだけは心を通わせるようになっていく。しかし凶暴な事件によって、夜木は杏子の元を離れていった。
 手紙によると、夜木は子供の頃「こっくりさん」で「早苗」と名乗る何かを呼び出していた。早苗に誘惑されて、夜木は不老不死の契約をしたという。その日から彼は怪我をするたびにその部分が人間ではない硬質な物に変わっていき、幼いながらとうとう家を出る決意をしたそうだ。
 ジャンルで言うとホラーなんだろうけど、これは「早苗」が怖いんじゃない。自分の体が変質していくことと、それによって人目を避けないといけないという望まない孤独が怖い。この作家は孤独を描くのが上手いと思う。「Calling you」のような不器用で諦めのような孤独も上手いけど、こんな強制的な孤独も読んでて痛々しい。
 夜木は最後、お面の下でどんな顔して杏子と話してたんだろうな。


 学校のトイレの落書きと、こっくりさん。どっちも見聞きしたことあるネタなだけに、面白かった。特にこっくりさんはもう使い古されたネタだと思ってたけど、取り憑かれるとか殺されるとかじゃなくて体を変質させられてあとは何もしない。孤独という恐怖が押し寄せる。でも「天帝妖狐」、あんまり好きじゃないかな。主人公が最後に救われないという終わり方に、苦しい読後感が残る。「失はれる物語」と同様、描かれ方が上手いから引き込まれるんだけどね。
別窓 | [あ行の作家]乙一 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『暗黒童話』  乙一
2004-06-20 Sun 21:12
暗黒童話 (集英社文庫)暗黒童話 (集英社文庫)
乙一

集英社 2004-05-20
売り上げランキング : 57667
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 私は乙一がかなり好きだ。ネットで調べうる限りを調べたり、雑誌に掲載されたけど書籍化してない作品を取り寄せられる限りの取り寄せたりしてる。私、司書で良かった。ていうか乙一が近所に住んでたりとかする人じゃなくて良かった。絶対訴えられるくらいのストーカーしそうだ。まあ、実家は久留米なんで頑張れば・・・ってまあ、それはいつか。やるんかい!と自分ツッコミ。
 乙一は大好きだけど、どんなに良い作家でも作品によって良し悪しはある。好みの問題も大きいけど、「この作家好きだけど、今回のはハズレかな」っていうのは誰にでもある経験だと思う。だから私は、誰の作品を読む時も期待しない。全く期待しないというわけにはいかないけど、頭の隅で必ず「今回こそはハズレかもしれない」って思うようにしている。
 今回もそうだったけど・・・いや、そうだったからだからかな。またやられた。マイベストに入る勢いの面白さだ。もう読むスピードがどんどん速くなっていく。速読はやらない主義なんだけど、この小説はとにかく先へ先へ行きたくなる。もう一回読めばいいんだからとにかく先へ!と急いて読んで、読み終わってから嬉しい溜息。ああ、これもまたアタリだった。
 『暗黒童話』という物々しいタイトルだけど、内容はもっとグロすごい。
 
 高校生の菜深は事故で片目を失い、そのショックから記憶も失くしてしまった。以前の菜深は優秀な高校生だったのに、今の菜深は不器用でオドオドした人間で、母親や教師、クラスメイト達はそんな彼女に失望する。事故で失った片目が元に戻すための眼球移植を受けたけど、かえって以前の菜深と今の菜深の違いを際立たせたに過ぎなかった。
 しかし菜深は眼球移植を受けて以来、白昼夢のように眼球が持つ記憶を見るようになる。その記憶の持ち主が「冬月和弥」という名前であることもわかった。白紙の記憶を埋めるように幻覚にめり込む菜深は、ある日少女が監禁されている地下室を見て逃げるシーンを見た。眼球の元の持ち主はその後、犯人の車に轢かれて死んだことも知る。冬月和弥が実在するのか「私」の幻覚であるのかわからないまま、「私」は彼が住んでいた街を訪れることにした。
 一方、奇妙な能力を持つ異常者の視点。彼が危害を加えた者は血を流さず、死ぬことはない。むしろ奇妙な心地よさに囚われ、その異常者の施す異様な手術を受け入れる。肉を割かれ内臓を他人の物と繋がれても彼らは死なずに、不思議とその状況を受け入れてしまうようになる。
 そして時折入る童話。人語を操るカラスは、ある盲目の少女と知り合う。代わりの眼球を持ってくれば少女の目は開くと信じたカラスは、生きた人間から眼球を抉って少女の元に運ぶ。少女はいつも窓から話しかける人が持ってきた球を空っぽの瞼に入れると、目は見えないのに不思議な映像が見えることを喜んだ。少女はその人が不思議な球を持ってくることを心待ちにするようになる。という話が細切れに入っている。
 グロい。怖い。切ない。悲しい。何て言えばいい本なんだろうか。この狂った設定を、こんなにも読まされてしまう。異常者のシーンは恐ろしい。グロいけど、読んでて痛さを追体験することはない。菜深の片目が亡くなるシーンは痛みが麻痺していたようだし、異常者に肉を抉られる時は痛覚が麻痺するという設定のために、読んでてもサディスティックなホラーのような痛グロさはなくて、純粋な恐怖だけが襲ってくる。とても怖かった。
 眼球が見せる記憶と、異常者の能力というファンタジーが2つも入ってるのに白々しさは感じられない。マイナスとマイナスをかけるとプラスになるみたいな、いい感じで作用しているように感じた。それぞれの設定で別の2つの物語ができそうなものなのに、設定の出し惜しみみたいなのはこの作者にはないんだろうか。それとも、そういう考えは素人考えなのかな。
 事件が終わり、入院中の菜深が和弥の姉に「お姉さん、隠していたことがあるの」と話し出す。この一言だけで、ああ全部終わったんだなってホッとさせられた。何だか妙に、事件の終わりを実感させられる一言だった。
 正直言って、この話は狂ってると思う。でも、その狂気に何でこんなに惹きつけられてしまうんだろうか。たまに狂ってんじゃないのかなっていう画家がいるけど、そういう絵から目を離せないことに似てるのかもしれない。ゴッホとか、あの黄色は狂ってるけど美しい。そんな感じ。
 物語のクールダウン的にエピローグのような後日談で、菜深は記憶を取り戻す。眼球の記憶は徐々に見えなくなっていった。それがとても寂しい。でも菜深は覚えていてくれるようだから良かった。
 相変わらず文章が好き。表現が端的だから、そう厚い本でもないのに盛りだくさんに詰め込まれた内容になってる。しかもてんこ盛りな設定が上手くまとまり、きれいな流れになっている。
 乙一の文章は私に合ってるらしく、読み始めてすぐ・・・1行か2行くらいでこの文章の呼吸のようなものに取り込まれてしまう。ぐんぐん吸い込まれて、この文章を読むこと以外何も考えられなくなっていく。書評投稿サイトとか見ると乙一の文章や構造を批判する人もいるから、万人向けではないみたいなんだけど。

 ちなみに私が買ったのは文庫化されたもの。とにかく早く手に入る方をと、本屋にある方を買った。改版前も単行本ではなくて新書サイズ。何でわざわざ文庫で出し直すんだろう。出版業界ってよくわかんないなぁ。でも乙一ファンって中高生にも多いらしいから、300円ちょっとの差額も嬉しいんだろうか。とりあえず文庫版買ったけど、どっちも買うかどうかは悩み中。

暗黒童話暗黒童話
乙一

集英社 2001-09
売り上げランキング : 182378
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

別窓 | [あ行の作家]乙一 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『失はれる物語』  乙一
2004-04-28 Wed 11:51
失はれる物語失はれる物語
乙一

角川書店 2003-12
売り上げランキング : 115967
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 最近乙一にハマりつつあるんで、出版されてすぐにでも読みたかったんだけど遅くなってしまった。図書館・・・ていうか職場なんだけど、リクエスト担当が変わってすぐ買ってくれなくなったんだよね。職権乱用?違います。この作家は今は「知る人ぞ知る」って感じだけど、絶対ビッグになるんだから!!!田舎に住んでるのに車を持ってない私は、本屋になかなか行けなくて図書館に頼ってる。まあこの本はハードカバーで高いから、作家買いするのをちょっとためらってるというのもある。貧乏だから慎重なんです。でも、これ読んで決めた。乙一に関しては作家買いすると。とまあ、駄話は置いといて。
 この本は6編の短編集。

「Calling You」
 人付き合いが苦手な女子高生リョウは、誰もが持っている携帯電話を持っていない。自分には必要ない携帯電話に憧れを抱き、自分が持つとしたらこんな携帯電話がいい・・・と想像していた。ある日、想像であるはずの頭の中の携帯電話が鳴り出す。恐る恐る出てみると、シンヤと名乗る1歳年上の男性からだった。検証の結果、2人はお互いが実存すると知る。

「失はれる物語」
 事故で右腕以外のすべての感覚を失った「私」に、腕に字を書くことで様々なことを伝えようとする妻。彼女は音楽教師であったため、よく「私」の腕を鍵盤に見立ててピアノを弾いた。

「傷」
 問題児として特殊学級に入れられた「オレ」はアサトと出会った。ある日2人は、アサトに他人の傷を自分の身体に移動させる力があることに気付いた。アサトは自分自身は傷だらけになっていくのにも構わず、他人の傷をどんどん引き受けていく。

「手を握る泥棒の物語」
 お金に困った主人公は、旅館に泊まる叔母のバックから貴金属を盗もうと目論んだ。旅館の外から穴を開けて押し入れにあるバックを取るという計画を立て、深夜に実行する。作った穴から手を入れた主人公が掴んだのは、バッグではなく少女の腕だった。

「しあわせは子猫のかたち」
 伯父の所有する家で一人暮らしを始めた「ぼく」。その家には白い仔猫が住み着いていたために仔猫と暮らし始める。しかしその家にはその子猫以外にも住人がいるようだった。調べるとその家の前の住人は雪村と言う女性で、強盗に殺されていた。
 幽霊が幽霊らしくないため、全く怖くない。むしろほのぼの。けど最後は、やはり乙一だった。

「マリアの指」
 線路で自殺した、「ぼく」の姉の友人鳴海マリア。「ぼく」は事故現場の近くでマリアの物と思われる人間の指を拾った。「ぼく」はそのマリアの指を保管し続ける。一方マリアの恋人だった芳和は、千切れたマリアの死体から消えた一本の指を探しているた。マリアに贈った指輪を探しているという。

 またこれが、どの話も素晴らしく良い。ただ、表題作の「失はれる物語」と書き下ろしの「マリアの指」は苦手かな。ラストがどうにも悲しい話で、作話が上手いだけに苦々しい読後感が残る。でもやっぱ話作るのは上手いから、乙一への尊敬は増した。ていうか、一番最初の「Calling You」読んで、心から思った。やっぱこの作家好きだわ。私、乙一についていく。いや、迷惑であろうけれども!
 乙一は基本的に言葉のチョイスが上手い。文章もいい。飾り立てたゴテゴテの文章ではなく、短い文章で巧みに表現している。美しい表現を重ねに重ねて内容そのものが薄くなってる本はたくさんあるし、それはそれで名作も多い。だけど乙一のシンプルさゆえに多くの情報があり、短いながら重厚な物語になっている。私個人としては、乙一タイプの作家がかなり好きだ。短編でありながら、こんなにも濃厚で読み応えがある。
 それから私が好きな部分として、恋愛をきちんと描かない。例えば「Calling You」のように若い男女を描き、お互いが唯一無二の存在になりながら恋愛関係のように濃くない。友情のように熱いこともないけど、家族を超えるような深さがある。もしかしたら今後は恋愛関係になるかもしれないけど、今はまだ違う。そういう感じがいい。『暗いところで待ち合わせ』もそうだった。『GOTH』は・・・そういう世界とは別次元にあるか。多分乙一は、そういう恋愛の部分を避けて書いてるんだと思う。それが文学として良いのか悪いのか、素人の私にはわからない。でも私はそういうとこ、すっごい好き。
 そんなわけで、もう一度言う。私、乙一についていく!
別窓 | [あ行の作家]乙一 | コメント:0 | トラックバック:0 |
BACK | よむよむ記 | NEXT