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元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『クライマーズ・ハイ』  横山 秀夫
2007-05-23 Wed 15:51
クライマーズ・ハイクライマーズ・ハイ
横山 秀夫

文藝春秋 2003-08-21
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 私が読んだことある横山秀夫さんの作品は刑事物ばっかだったけど、これは新聞記者の話だった。さすがは元ジャーナリスト、臨場感はすごい。
 地方紙の新聞記者である主人公の悠木は、地元で起こった飛行機墜落事故の全権デスクとなる。前代未聞の大事故を記事にするために記者達が尽力し、その中で悠木は上司と部下とに翻弄させされながらも何とか自分を貫こうと努力する。
 刑事物じゃないと知った時はがっかりしたけど、緊張感漂う文章と骨太なストーリーは相変わらず。追い詰めたり追い詰められたりとか、驚きの展開とかはなかったけど、事件を追いつつも組織の嫌な所や上司との軋轢、友人の謎の死、家族との問題などを抱える主人公が、いかにそれらを受け止めるべきか苦しんでいる。
 いつもの横山さんのような、事件を深く追い求める話ではない。でも、やはり最後は安心する結末。いい本だったと思う。
別窓 | [や行の作家]横山 秀夫 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『第三の時効』  横山 秀夫
2007-05-14 Mon 21:31
第三の時効第三の時効
横山 秀夫

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 横山秀夫は好きな作家の一人。今のところ期待を裏切られたことはなくて、読んだすべてが気に入ってる。好きなわりには、そうたくさんは読んでないんだけど。
 この本はF県警捜査第一課を描いた短編集。決して笑う事のない朽木が率いる一班、公安上がりの冷血漢楠見が率いる二班、鋭い野生の勘で事件の本質を掴む村瀬率いる三班が、手持ちの事件を解決した順に次の事件を担当していくという仕組みで、お互いの班を敵視している。
 視点はそれぞれの班のいち刑事で描かれている事がほとんど。事件を追いかける刑事達は殺伐としているけど、それぞれの班長の個性が男気溢れていてかっこいい。刑事自身の弱さも強さも描かれていて面白い。
 二転三転のまどろっこしい展開は抑えて事件の本質にガッと迫る感じなのに、濃厚な内容だと思う。


沈黙のアリバイ
第三の時効
囚人のジレンマ
密室の抜け穴
パルソナの微笑
モノクロームの反転


の6作品で、私は「囚人のジレンマ」が一番良かったかな。定年を迎える刑事に事件を解決させるため、それぞれがそっとパスを渡すのが良かった。お互いの面子を保ちつつ、上の者が手柄をかっさらう形にならないように情報を送る。主人公の目に殺伐と映っていた世界観が一転するところが、この作者は相変わらず見事。
 やっぱ警察小説のリアルさでこの作者に敵う人はいないと思うし、締めの美しさは本当に素晴らしい作家さんだ。
別窓 | [や行の作家]横山 秀夫 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『ルパンの消息』  横山 秀夫
2005-10-30 Sun 09:59
ルパンの消息 (カッパノベルス)ルパンの消息 (カッパノベルス)
横山 秀夫

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 アルセーヌ・ルパンかルパン三世かと思いつつ読んだら、どっちも全然関係なかった・・・・。横山秀夫がルパンをノベライズか何かにしてるんだったら、面白くないはずがない!と勝手に楽しみにしてたんだけど。
 15年前にあった女教師自殺事件が殺人だという告発があって、時効まであと1日という慌しさと15年前の事件当時との両方に視点を向けて進めた小説。第一容疑者に上がっている、当時の不良3人組が「ルパン作戦」と称してテストを盗んだ話から事件をたぐる。
 さすが横山秀夫。かなり面白かった!デビュー作に最小限の加筆をしたものらしいけど、デビューした時からすごかったんだね、この人は。ちょっと強引なとこもあるけど、終わった後の清々しい雰囲気は相変わらずだ。
 まあちょっと、個人的な趣味の問題で受け付けない部分もあったけどね・・・・。その部分が純粋なままだった人をさらに引き立ててたんだろうけど、やっぱああいうネタは嫌いだ。
 でも、それがあってもやっぱり面白かった。

別窓 | [や行の作家]横山 秀夫 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『半落ち』  横山 秀夫
2003-07-02 Wed 23:00
半落ち半落ち
横山 秀夫

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 現役の警察官・梶警部が妻を殺したと自首してきた。アルツハイマー症に蝕まれつつあった妻自身から懇願されての嘱託殺人だった。自首は犯行の2日後だったが、その2日間にどこで何をしていたかについては一切口を閉ざしたまま。自宅には「人生五十年」という、書かれて間もない書があった。犯行を全面的に認めた梶が隠していることとは?その謎を、この事件に関わる機関の担当者それぞれの視点で追及していくストーリー。
 「半落ち」とは警察用語。自供することを意味する「落ちる」は昔から刑事ドラマとかでも使われてたけど、「半落ち」とは一部しか自供しないことだそうだ。
 取調官、検事、新聞記者、弁護士、裁判官、刑務官と、梶の身柄が移動されるごとに語り手もその組織内の担当者へと変わっていくが、梶は犯行は全面的に認めつつも事件後2日間の行動については絶対に口を割らない。
 担当者達は梶の空白の2日間に興味を持つけど、所属する組織のしがらみを捨てきれないままタイムオーバーになり事件は次の組織の手に委ねられる。それを繰り返しつつ担当者達の人生ドラマを垣間見ていくんだけど、空白の2日間についてはほとんど進展しない。あまりの進展のなさにちょっとダルくなってきたなと思った頃、謎がぱっと晴れた。
 もうね、この展開が見事。担当者達の人生はそれなりに濃厚だし、事件にはモヤモヤ感がずっと漂ってるんだけど、それが一瞬で霧散した。あとはもう滂沱だ。特に「お父さん」には、やられた。
 私はこの本、泣きながら何度も読んでしまった。2回目は1回目より泣いたし、3回目は2回目より泣いてしまう。そんな話だ。
 担当者達の話も良かった。短い中に、彼らそのものが詰まってる。私が特に印象的だったのは、検事が検察内の軋轢にぶつかって部下に責められたシーンで声には出さなかった言葉。正義感の強い息子のことを、「息子が正義の味方でな。俺の血を引いてるからだ。そう思っていたいんだ――。」という思い。何というか・・・ボキャブラリーが貧困で申し訳ないんだけど、かっこいいなって思った。平たく言うと男のプライドというか、そういうやつ。私には一生縁がない思いだろうから、何かいいなって思った。
 こういう「男のドラマ」って感じの話は、結構好きだ。
別窓 | [や行の作家]横山 秀夫 | コメント:0 | トラックバック:0 |
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