元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『図書館戦争』  有川 浩
2006-06-30 Fri 21:42
図書館戦争図書館戦争
有川 浩

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 公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる『メディア良化法』という法律が施行され、この日本で検閲が義務付けられることになった。
 しかし、図書館は、

 一、図書館は資料収集の自由を有する。
 二、図書館は資料提供の自由を有する。
 三、図書館は利用者の秘密を守る。
 四、図書館はすべての不当な検閲に反対する。

 図書館の自由が侵される時、我々は団結して、あくまで自由を守る。

という信念の元、国家と戦うことになる。
 国家VS図書館の対立は次第に激化し、どちらも武力行使で戦う世の中となっているというすごい世界だ。新人研修には戦闘訓練がある。本を巡った紛争があり、銃とかで戦って蔵書を守る。図書館を巻き込んだ社会問題が起こる。規制に引っかかった本をめぐって撃ち合いが起こる。こんな過激な話。
 さて、私の職業を明かす。ほとんどの人は知ってるはずだけど、司書だ。この本を読み始めて、「図書館の自由に関する宣言」を久々に思い出したよ。習ったな、そういえば。最後の一文はこの有川浩が作り出したものだけど。
 この本、人物作りがいい。主人公は単純バカな短大を卒業したばかりの司書。思考の単純さで問題を起こしたり、壁にぶち当たったりするけど、優しかったり厳しかったりする周囲の人々によって少しずつ成長する。ありがちなキャラばかりだけど、魅力的に描いてあるのがすごい。このキャラ達の作りこみのおかげでストーリーが面白くなってるんだろうな。 
 奇抜な設定、月並みだけど魅力的なキャラクター、そして図書館。不思議な寄り合わせがすごくいい感じで絡まってて、なかなか面白く読ませていただいた。
 この本のメインテーマとも言うべき表現規制は、実際に厳しくなってきてるみたい。文学界での有名どころで言うと、ハリポタでの「兎口」という表現が、その障害を持つ人の団体から講義されたらしい。身体障害者を指す言葉は、もうほとんど見ないもんな。トーク番組ではそれほど過激なトークでもないのに音がかぶせられてたりする。前後の話で「死ね」とか「気ちがい」とか、そういう言葉だと思う。またあるマンガ家が、「畜生」という言葉で引っかかったと言っていた。「犬畜生」だといいんだって。表現の自由は、よっぽど強い意志とか権力とかカリスマとかないと得られない時代になりつつあるっぽい。



 感想とは別に、ツッコミどころをどうしても書いておきたい。まず、閉架に分類番号の表示をしろ。大きい図書館ならなおさら。本の場所を覚えれなくて右往左往する主人公を描きつつ、休みの間に完璧に覚えてきた同僚と対照的に書いてあるけど・・・。司書さえわかればいいような表示をするよ、普通。研修で、○番~○番までは×門で・・・とかいちいち口頭で説明しないっつーの。時間がもったいない。どうせ休みの日に覚えさせるんなら、もっと大切なこと覚えさせた方がいいと思う。
 それから、犯罪を犯した少年が過去に借りた本を公表しろって社会問題になって大変だった件。最近は全部パソコン管理だから、返却処理したら過去に借りた分はわからなくなる。公民館図書室じゃあるまいし、名前残すかよ。もしかしたら私が知らないだけで、データを復活させる技術があるのかもしれない(図書館勤め6年目だけど、そんな話は聞いたこともない。研修でも聞いたことない)。そしたらそれに対抗して、データを完全に消去させるシステムを作ってるだろう。第三条の守秘義務について事件を書きたかったんだろうけど、「現在借りている本」しかわからないんだから、もっと別の事件にしてほしかったな。

 いや、揚げ足とりだから、書かないでいようか悩んだんだけどね。結局書いちゃった。思ったことは言わずにはいられない腐った大人ですから。
 でも、図書館に関してわりと細かいシチュエーション設定をしてあるのには驚いた。相当司書にインタビューとかしたのか、知り合いに司書がいるのか、有川浩自身が司書資格を持っているのか。いずれにしろ、有川浩自身は図書館で働いたことないのか、あってもかなり小規模な図書館っぽいけどね。
 
 さて、思ったことは書ききったから言っていいよ、お前は何様かと。
別窓 | [あ行の作家]有川 浩 | コメント:0 | トラックバック:0 |
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