元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『町長選挙』  奥田 英朗
2007-06-15 Fri 11:50
町長選挙町長選挙
奥田 英朗

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 アホ精神科医・伊良部教授シリーズ3冊目。シリーズ物も3冊も出ると内容がワンパターンになってきてるんじゃないかと思いつつ読んだけど、新しい趣向がしてあって面白かった。
 短編4話中3話が、実在の有名人をモデルにしている。モデルって言うかパロディかな。名前や会社名なんかを実にわざとらしく変えて、行動・言動はそのまんま。ただ、その人物が精神を患って伊良部のいる病院に行くという点がこの小説の中の“フィクション”だ。

 1話目は「オーナ」。「大日本新聞」の会長にして球団「東京グレート・パワーズ」のオーナ田辺満雄の話。あだ名は「ナベマン」だ。歯に絹着せぬ言い方でマスコミの餌食にされつつ強気発言の姿勢は崩さないが、実は特定の要因でパニックになるという症状を抱えて伊良部の心療内科を訪れる。
 固有名詞とパニック障害以前があまりにもそのまますぎて、渡辺恒雄(読売オーナー「ナベツネ」ね)って結構苦労してたんだなぁと本気で思ってしまった。
 この話、最後の生前葬が面白かった。泉田首相(小泉首相がモデル)のスピーチもだけど、最後の若手記者とのやり取りも良かった。実物もこれくらい面白味ある人達だったら良かったのに。

 2話目は「アンポンマン」。IT会社の社長で、次々と派手な買収に手を出して注目を浴びる安保貴明が主人公。「アンポンマン」のニックネームで親しまれるという設定だけど、よく作ってあると笑える。言わずもがなだけど、堀江貴文だ。もちろん、捕まる前の小説。
 ひらがなや簡単な挨拶文を忘れてしまうという症状に見舞われ、有能な秘書に勧められて伊良部心療内科へ行く。主人公をちょっと馬鹿っぽく書いてあって、ちょっと伊良部とかぶっててそれが面白くもあった。

 3話目は「カリスマ稼業」。40歳過ぎて一児の母となっても美貌を維持する白木カオルが主人公。自然体を売りにしているために、隠れて行う「老い」との闘いには半狂乱だった。自分でも度が過ぎると自覚し、伊良部がいる病院に精神安定剤をもらいに行くという話。
 1話と2話の人物が話題の人達だったのに急に芸能人の話になったから最初はピンと来なかったけど、黒木瞳のことね。ライバルとして川嶋なお美が「川村こと美」として出てくるのがまたブラック。
 これはまあ笑えないかな。多分リアルにすごい努力をしてる人だと思うし。病気も解決してないし。ていうか、なぜ渡辺恒雄・堀江貴文のようなむさ苦しい2人と黒木瞳を並べたんだろうか。よっぽど嫌いな理由でもあるんだろうか。パロディも3つも続くと何だかおなかいっぱいだし。

 4話目は、表題作の「町長選挙」。ある孤島で行われる町長選挙で、町は真っ二つ。主人公の若手町役場職員は両方の派閥から引っ張られて、両方に返事ができずに困っている。公職選挙法なんてまるっきり無視した町長選だけど、そこに伊良部が訪れることになってさらにゴタゴタするという話。
 この話だけ普通にまるっきりフィクションだけど、やっぱりこれが一番面白かったな。一番盛り上がった所で話が終わってて、やられたって感じだけど読後感が爽快だった。
 このシリーズ、まだ続き出るのかなぁ。出るとしたら、普通のフィクションがいいな。4話目読んで、特にそう思った。
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