FC2ブログ
元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『僕とぼく 妹の命が奪われた「あの日」から』  川名 壮志
2019-10-10 Thu 18:12
僕とぼく 妹の命が奪われた「あの日」から
川名壮志
新潮社
売り上げランキング: 3,921



 20年前に起こった、佐世保市小6同級生殺害事件。被害者の兄2人の人生にスポットを当てたルポルタージュ。明るく社交的で要領のいい長兄と、大人しくて自己主張の薄い次兄の、それまでの人生や事件後の苦しみなどを交互に描く。

 末っ子さっちゃんの誕生、大好きだった母親が乳がんになり乳房の切除、転移、死亡。祖母に手伝ってもらいながらも上手く回っていた御手洗家に、突然起こった事件。被害者の遺族とはこうも辛いのかと、胸が痛くなる。
 周囲の大人に守られながら徐々に立ち直っていく長兄「僕」と、さっちゃんと歳が近かった分だけ多少の事情も知っていて自分を責めてしまう次兄「ぼく」の視点は随分違っていた。こうやってお互いの過去の答え合わせみたいなルポが、どうかより遺族の心の繋がりを強固にしますように。特に長兄の子供が鎹となりますように。
 被害者の父親、新聞社の支局の人だったとかで事件後わりとすぐに会見をしたし、その後も節目に求められれば意見を述べ、手記を出したりした。憔悴しつつも取り乱さない様子はとても立派だったけど、そうか、息子達を守るためにマスコミの前に立ったんだな。改めて、立派な人だと思う。
 事件のきっかけは、交換日記やHP書き込みのトラブルだったらしい。現在、さらに時代は進んでSNSトラブルもよく聞くようになった。我が子に、どうやって身を守り方を教えたらいいだろうか。ほとんどの人間は恙なく社会人になっていくけど、ごく稀にこうやって不幸極まりない事件もある。もちろん事故もあるけど、事件との大きな違いは大きな悪意が存在するということだと思う。家族がこれほどの悪意を向けられること自体が、とてもつらくて悲しくて、想像を絶する苦しみなんだろうと思うことしかできない。
 でも、長兄が結婚して子供が生まれたと知って少しホッとした。人の死の不幸は、新しい命の誕生で少しは癒えるんじゃないかと思う。願わくば、次兄も結婚して子供を作って、大きな苦しみが少しでも埋められて、幸せだと感じれる瞬間が数多くあるといいなと思う。
 兄達2人の心境をじっくりインタビューしたんだろうと思われる丁寧な文章で、読んでて計り知れない苦しみが伝わってくる。でも、2人の違いを漢字とひらがなの「僕」「ぼく」にしたのは、ちょっとイマイチかな。「僕」に比べて「ぼく」は幼い印象がするけど、実際のところ2人は性格の違いは如実だけど精神年齢にそう大きな差はないように感じる。変に幼い印象がする「ぼく」表記の次兄に、ちょっと失礼ではないか?でも、遺族の了解を得て出版してるから、次兄も了承済みなのかな?だったら私がインネン付けるのも変だし、何百倍も失礼なんだけど。とりあえず、脳内で朗読するタイプの私にはそれほど区別が感じられなくてわかりづらかった。「俺」と「僕」だったら、もうちょい違ったか?いや、いまいち感増したな・・・。何か他のタイトルなかったんかなーと思った。
別窓 | か行その他の作家 | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<『西一番街ブラックバイト』  石田 衣良 | よむよむ記 | 『AX アックス』  伊坂 幸太郎>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック


| よむよむ記 |