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元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『AX アックス』  伊坂 幸太郎
2019-09-24 Tue 17:14
AX アックス
AX アックス
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伊坂 幸太郎
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 冷静で優秀な殺し屋である兜は、表向きは冴えない会社員かつ恐妻家である。妻の機嫌を損ねないよう細心の注意を払って日々生活し、高校生の息子・克己が呆れるほどだった。
 克己が生まれた頃から裏の仕事を辞めたいと思っていたが、しかしそう簡単に辞められる世界でもない。仕事の仲介者である通称・「医者」によると、兜を育て上げるために掛かった資金を取り戻すまでは辞められず、無理に辞めると家族に危険が及ぶという。兜は殺し屋の仕事を辞めるために殺人を続けていた。
 最終話は殺し屋の仕事を無理やり辞めることにして「医者」から命を狙われる兜と、10年後の克己の視点が入り混じる。ひょんなことから父親の自殺について調べる事にした克己は、自身も気付かないうちに危険な状況に向かっていた。


 敏腕殺し屋だけど恐妻家という設定は面白いながら、気分屋で自己中の妻にイラッ。尻に敷かれている兜にもイラッ。でも克己のクールさがいい味出していて、不快さが中和されている。殺し屋モードの兜が殺し屋モードの兜はとてもかっこいい。ただそれだけの感覚で読み進めた。
 兜ほどの人がなぜ妻の機嫌を損ねないよう細心の注意を払っているのか疑問だった。でも、ふとした拍子に兜はやはり一般人ではない事に気付かされる。ただ強いだけじゃなくて、有事に反応が早かったり、他人に妙に淡泊だったりすることから普通じゃない育ちをしている人間だということが伺える。怖ろしく不器用なだけで、家族をこの上なく大切にしようとしている人間だと思えてきて、読んでて少し切ない。
 兜が嫌々ながらも殺しの仕事をしている間の「医者」は、ちょっと味のある仲介人でしかなかった。でも10年後に克己が兜のことを調べ始めてからの「医者」は、危険な雰囲気がぷんぷんする。兜はこんな奴から仕事を紹介されてきて、こんな奴に殺されて、果ては克己に目を付けている状況が改めて恐ろしく感じてしまった。その極限状態で、大人になった克己と10年前の兜の視点が交錯して、兜の家族への不器用な愛がビシビシ伝わってきた。そうか、そうだったんだ、だから兜は・・・っていう感じに、ゾクゾクした。読み始めはこの妻不快だなって思ってたけど、やばい、読み進めると面白さがじわじわ増幅されていく。
 ラストで、兜と妻の出会いらしきシーンが描かれているけど、きゅんときた。恋しちゃったんだね。真っ当ではない生き方しかできなかった兜だけど、息子の克己は普通に育って結婚して、孫もできてるよって教えてやりたい。
別窓 | [あ行の作家]伊坂 幸太郎 | コメント:0 | トラックバック:0 |
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