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元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『かがみの孤城』  辻村 深月
2019-08-30 Fri 13:48
かがみの孤城
かがみの孤城
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辻村 深月
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 5月のある日、中学生になってから学校に行けなくなっていた少女・こころの部屋の鏡が突然光り出した。鏡の向こうにあった城には同じくらいの歳頃の少年少女が6人と、狼の面を付けた小さい少女が1人。「オオカミ様」と名乗った少女によると、3月30日まで毎日9時から17時までが城への入り口になる。城のどこかにある“願いの部屋”に入る鍵を見付けると、願いを叶える権利が手に入る。もし17時過ぎても城にいた場合、その日城に来ていた者は全員巨大な狼に食べられる。定期的に選ばれる「赤ずきん」は7人で、今回選ばれたのは中1のこころの他に中3のアキ、スバル、こころと同じ中1のリオン、ウレシノ、中2のフウカ、マサムネ。察するに、全員学校には行っていないようだ。
 最初は戸惑っていた内気なこころだったが、通い始めると楽しくなった。城の存在がこころの支えになった頃、「オオカミ様」がルールの付け加えにやって来た。誰かが鍵を見付けて願いを叶えた時点で、全員城での記憶を失って適当な記憶で埋められる。もし最後の日まで願いを叶えられなかったら、城は閉じるけど記憶は残るという。


 読み終えて、声を大にして言いたかった。覚えてて!お願いだから覚えてて!不思議な力が働いて覚えてない系ラストは、モヤモヤモヤ~ッてして悶えたくなる。でも、悶えたくなるくらい面白い内容の物語でしか起こらない現象なんだよね。本当に面白かった。何でリオン姉は不思議な力が使えたの?何で大いなる力が働いて暴走に対して抵抗できないの?最後はなんで全員の記憶を見る必要があったの?とか、気にならなくなるくらい物語が充実していた。
 「たとえば、夢見る時がある。」から始まる冒頭で、胸がぎゅーっとなった。決してリア充ではない私は、すぐにこの物語の世界観にドはまり。自分がされたことを誰にも言えずにいるこころ、気丈に振る舞って理解を示しつつも母親、あえて説明ないけど痛いほど伝わってくる描写に読んでて感情持っていかれてつらい。
 そんな状況から始まって、城で居場所を見付けたこころ穏やかな時間が妙にうれしい。多少のトラブルはあったし、現実世界では不登校の問題を突きつけられたりもしたけど、一人ぼっちで家にいた序盤とは大違いだ。
 リオン以外が全員同じ中学だとわかった時から、ふと乙一の『きみにしか聞こえない』を思い出した。登場人物達より一足先に時間軸が違う事に気付いて、ハワイ住みのリオン以外学校に集合しようってなった時の胸の痛さよ。本気で心臓痛いと思った。でも、結果的には会えなかったけどスバルがマサムネの教室まで行ってたことを知ったマサムネの「ありがとう」とか、ああもう!何でこの子達は現実世界で助け合えないの!?と歯がゆい。
 全員何らかの事情で学校に行ってない様子だけど、深く追求できない遠慮がちなこころの目線がずっと続いた。ラストでようやく全員の事情が見えてきて、子供ってなんて弱い立場にいるんだろう、彼らの周囲大人も子供も含めて何て弱い存在なんだろうとしみじみ思う。
 やっぱり記憶は失って欲しくなかった。城での時間が終わった後、アキに「待ってたよ」って言って欲しかった。リオンとの再会をめっちゃ喜んで欲しかった。スバルとも出会って欲しかった。アキが喜多嶋先生だったことが嬉しくて、もしかして喜多嶋ってスバルの姓とか?先にどっかで出会って心が覚えてた!?なんて邪推して流し読みしたフルネームのとこまで戻ったけど違う。ゲームクリエイターになったスバルとも再会して欲しかったなぁ。マサムネとフウカを探したり・・・って、こうなるとストーカーだな。やっぱり覚えてないのは必然だったのか。リオンだけ記憶が残っただけでも、良かったと思わないといけないのか。
 ずっとお互いの詳細は隠して名乗った苗字または名前で呼び合っていた7人。クライマックス後にフルネームを教え合ったシーンが妙に好き。全員の実体を知ったような感じがして、やっぱり名前が持つ力って偉大なんだな。その感動の後に続く、リオンとオオカミ様のやり取りもまた心打つ。
 ああ、こころとリオンは一体どうなるの!?リア充女・真田が絶対ちょっかいかけて来そうだけど、頼むよリオン!喜多嶋先生!と、余韻の残るラストに期待を抱いてしまう。
 面白かった。めっちゃ面白かった。
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