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元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『蜜蜂と遠雷』  恩田 陸
2019-03-01 Fri 15:27
蜜蜂と遠雷
蜜蜂と遠雷
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恩田 陸
幻冬舎 (2016-09-23)
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 3年ごとに開かれる芳ヶ江国際ピアノコンクールでの、4人のピアニストを描く。
 まずは今は亡き音楽界の大物ユウジ・フォン=ホフマンに師事していたという15歳の少年・風間塵。養蜂家の息子としてヨーロッパ各地を旅する彼は、ほとんど弟子を取らなかったホフマンの推薦状を持ってエントリーした。衝撃的な演奏で審査員達に賛否を巻き起こしていく。
 13歳の時に母が急逝して以来、ピアノが弾けなくなった栄伝亜夜。ジュニアのコンクールを制覇し、CDデビューも果たし、コンサートも開催し、1年半先までスケジュールが埋まっていたが、母親の死後行われたコンサートで本番直前に逃げ出してしまっていた。その後高校卒業までピアノを弾くことはなかったが、母と音大で同期であり、名門私立音大の学長・浜崎の勧めで再びピアノを弾き始めた。浜崎に言われて芳ヶ江国際ピアノコンクールに出場したものの、本人は特に乗り気でもなくのんびりしていた。「あの」栄伝亜夜が出場すると皮肉を込めた注目もあったが、彼女は誰もが認めざるを得ない演奏をする。また、幼馴染のマー君とも再会し、彼と音楽の感性が非常に似ていることを実感した。
 出場者の中では最高年齢28歳で、音大を卒業後は大手楽器店で働く妻子持ちの高島明石。サラリーマンとして仕事をこなしながら、睡眠時間を削って練習し、自身を追い込み、コンクールに臨む。栄伝亜夜のファンだった。
 世界的なピアニスト、ナサニエル・シルヴァ―バーグに師事している19歳イケメンピアニストのマサル・カルロス・レヴィ・アナトール。幼い頃に日本に住んでおり、近所に住む少女のピアノ教室にくっついて通っていた。彼がフランスに戻る時に少女がくれたレッスンバッグを今でも大切にしている。その少女・栄伝亜夜と、このコンクールで再会を果たした。ルックスが良いだけでなく、スポーツマンでもあり、何より天才的ピアニストで圧倒的な技術と表現力を持っている。
 選考が進むにつれて、絞られていく才能ある若者達が優勝を目指して予選を勝ち進んでいく物語。

 タイトルから、ビバルディ「四季」の「夏」を連想し、目次チラ見で音楽小説と知って、やっぱりねと思っていた私。全然関係なかったことに衝撃の結末を迎えた。感想として真っ先にそれが浮かぶくらい、楽しめなかった。いわゆる左脳タイプの文系で、音楽経験ゼロ、生活の中で音楽を流すことは少なく無音が好きなため知識も教養もゼロ、さらに純然たる音痴の私に、この本を楽しめるわけがなかった。だって演奏家によって音楽が変わるってことさえピンとこないんだもん。
 それでも恩田陸先生の表現力は素晴らしく、歌詞のない音楽に言葉を尽くして文章で表現してある。どうにか理解できたような気になって読み進めたけど、コンクール始まって次々に演奏されていって知りもしない曲を文章で表現されてもチンプンカンプンな挙句眠くなる始末。
 人物の視点が目まぐるしく変化していくのも、音楽という抽象的な物をさらにあやふやにしている気がする。メインの人物達5人だけじゃなく、審査員、亜夜に付きそう浜崎の娘・奏、ドキュメンタリー番組制作のために明石を撮影する同級生の雅子、明石の妻・満智子、マサルの師匠・ナサニエル、調律師、コンサートマネージャー、他にも様々、同じシーンも複数の視点で細かく行き来して展開するために、あやふや感が加速してしまった。
 それでも人間模様の機微なんかは妙に伝わってきて、塵の音楽に対す愛情や渇望、ホフマンの推薦を受けたことへの嫉妬や、亜夜の音楽に対する真っすぐな心、明石の意気込みやためらい、何でも悠々とやってのけるマサルの抱く恋心、どこか通じ合う天才達、その他の人々諸々の感情がありありと息づいていている。
 表現力に感心することに終始しつつどう終わるのか楽しみにしていたんだけど、何かフワッとしたラスト。クライマックスがないまま、終わったように感じる。結果発表、ないし。ラストにワードで横書きしたような順位表が書かれているだけだし。もっとガッと盛り上がったんならともかく、各々の到達した音楽観だったからページ飛ばしたかと思った。
 教養のなさゆえか私には理解が及ばなかったけど、2017年本屋大賞受賞作品、2016年下半期直木賞受賞。うーん、凄すぎでしょ。
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