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元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『ファーストラヴ』  島本 理生
2019-01-09 Wed 17:41
ファーストラヴ
ファーストラヴ
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島本 理生
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 アナウンサー志望の女子大生・聖山環菜が、父親を刺殺した。彼女のルポルタージュ執筆を依頼された臨床心理士「私」こと真壁由紀は、ルポ執筆の依頼をされる。偶然にも環菜の国選弁護人に選ばれたのは、由紀の夫の義弟・庵野迦葉。2人は協力しながら環菜との面会を重ね、本人もわからないと言う動機を探っていく。
 実の母親は検察側として出廷することになっており、現状不利な環菜のために協力し合っていた「私」と迦葉。2人は、次第に過去の確執とも向き合っていくことになった。

 
 大人しくて気弱そうで頼りなげな環菜ちゃんは、ずっと何か裏にある感じを秘めたまま話が進む。環菜ちゃんは自分のことを「嘘つき」と言い、母親は彼女を我が儘娘のように言い、元交際相手達は浮気性だとか虚言癖や感情の起伏の激しさを語る。何かを秘めてる様子だけど、語らないのか語れないのか、真実へは牛歩の歩み。だけど色んな人からの断片的な話を集めてようやく真実にたどり着く。
 環菜ちゃんは故意に何かを隠してるのかと思ったら、ずっと存在ない物として扱われてきた自分の不快感や恐怖感に蓋をすることに慣れ過ぎてしまってたんだね。性的な視線を向けられることから逃れさせてもらえないという、なかなか注目も理解もされにくい形の虐待にスポットが当たった話だった。弁護士も「軽い虐待」って言ってたけど、軽いために表面化しづらく、本人も不快感を説明できないまま無自覚のトラウマが残っている。こんなデリケートで壊れやすい題材、下手したら駄作で終わるところなのに、ちゃんと考えさせられる話になってるのが凄い。
 環菜ちゃんと同時進行で同じくらいゆっくりと進んで行く、「私」と迦葉の関係。「私」はルポのため、迦葉は裁判のために協力し合っていたけど、こっちはこっちで始めから過去になにかあった雰囲気を漂わせまくり。「迦葉君」「お義姉さん」と呼び合ってたのに段々呼び捨てで呼び合うようになっていって、これ絶対昔男女の仲になったってやつじゃん!と思ってたけどもっと深かった。父親の児童買春を知ると同時に自分も性的な目で見られていたことに恐怖した「私」と、母親に虐待され8歳から伯母夫婦に育てられた迦葉。心の友って言ったら安っぽくなってしまうけど、同類同士で安心を求めあったというか。
 タイトルの『ファーストラヴ』って、何を意味してるのかなぁ。環菜ちゃんの?由紀の?迦葉の?このタイトルとこの表紙は、ちょっと損してる気がするなぁ。より多くの人に知ってもらいたい虐待の形なのに、こんな不穏な作品を好む人には訴えかけが薄いし、恋愛物を好みそうな人には内容が合わないと思う。
 あと、主要人物が美形だらけなのはいただけない。環菜ちゃんがついつい橋本環奈ちゃんで脳内再生されてしまったのは置いといて、不細工だったら男性に押し切られる経験はそうなかっただろうから美形設定なのは必然。主人公の義弟が優秀で飄々としたイケメンっていうのも、ありがちかな。殺された環菜ちゃんの父親も血は繋がってないながらイケメンで、「私」も我聞さんから一目惚れされたって辺りで辟易し始め、実は我聞さんもメガネを取ると超イケメンときて、何だかなぁって思う。深い話なんだけど、安いテレビドラマみたいな締め括りで微妙。作者のコンプレックス?それとも、過剰反応してしまってる私がコンプレックス?
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