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元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『カッコウの卵は誰のもの』
2018-12-18 Tue 11:23
カッコウの卵は誰のもの
東野 圭吾
光文社
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 元スキーヤーの緋村のもとに、娘が所属する新世開発社のスポーツ科学研究所副所長・柚月が訪ねてきた。スポーツ選手の才能を発掘するために科学的に研究している柚月は、ある種のスポーツに適した遺伝子パターンを発見した。スキー界期待のホープである緋村の娘・緋村風美がその遺伝子パターンを持っていることが判明したため、研究のために緋村自身の遺伝子パターンを調べさせて欲しいと言う。
 努力こそが才能に勝ることを理由に断った緋村。実は風美は緋村の子供ではなかった。風美が2歳の時に自殺した緋村の妻の遺品から、風美は緋村夫妻の子ではないことを調べ上げていた。19年前に起こった新生児誘拐事件と関りがあると思われるが、警察に相談することが出来ないまま月日が過ぎていた。
 一方、才能にも容姿にも恵まれた風美にスポーツライター達が注目し始めていたが、彼女を試合の出場メンバーから外すよう書かれた脅迫状が届いていた。ワールドカップを控えた彼女を動揺させないよう、柚月が広報担当と称して風美の身辺を監視することとなる。2通目の脅迫状が届いた直後、風美が乗る予定だったシャトルバスが何者かによってブレーキに細工されて事故を起こし、風美のファンを名乗る初老の男が重体を追う。
 その初老の男は風美を訪ねる前に父親の緋村を訪ねており、風美が天涯孤独の知人女性によく似ているためにDNA鑑定をさせて欲しいと言っていた。


 緋村の葛藤、風美の出生の謎、意識不明の初老男性の目的、脅迫状と事故の犯人の目的、服従させられている男子高生・伸吾、柚月の有能さなどなど。成り行きが気になる設定盛りだくさんで、東野ワールドをいつも通りワクワク読ませてもらった。でも、ラストがいつもに比べて弱いかなぁ。普通に面白い作品だと思うけど、「東野圭吾ブランド」とでも言ったらいいのか、普通の面白さを遥かに超える読後感を期待してしまう。読者を振り回しておいてラストでズシンとくる感じ来るはず、きっと来る・・・、あれ?そこまでない、みたいな。いつもより感動が弱かった。
 例えば風美の遺伝子Fパターンの秘密。父娘で血は繋がってないのに同じスポーツが得意な理由には必然があるはず、だって東野さんだもん・・・だと思って読み続けたけど、緋村の妻・智代に新体操の才能を持つ友人がいたのは偶然に過ぎないみたいでちょっとがっかり。期待し過ぎたのは自覚してるけど。
 バスに細工した動機もちょっとありがちというか、手垢が付いた感じがあるかな。そして、上条文也にはどうにかしてドナー提供を受けて生きて欲しかった。絶対、真実を受け入れる風美の傷心とそれを上回る生命の感動が待ってると思ったのに。
 さすがだと思ったのは、「カッコウの卵」の意味。風美を育ててきた緋村と、カッコウの托卵の話を掛けてあると思ったら大間違いだった。音楽に興味があったのに、遺伝子パターンによって才能を見出されてスキーの訓練を受けさせられる高校生の鳥越伸吾。受け継がれた才能を「カッコウの卵」とし、その才能は伸吾自身の物だから伸吾の好きにさせるべきという想い。私も人の親だから、子の才能を見出すことには興味ある。調べてわかるものならぜひ知りたいけど、それが子にとって幸せとは限らない。伸吾に音楽の才能がなくて鳴かず飛ばずのインディーズのまま壮年期半ばまで行ってしまう手痛い人生の可能性だって大きい。でも大人が先回りせず、子はきちんと自分の意志で考え、行動すべきなのかな。うーん、理想論だけどね。
別窓 | [は行の作家]東野 圭吾 | コメント:0 | トラックバック:0 |
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