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元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
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『影踏み』  横山 秀夫
2018-05-23 Wed 10:12
影踏み (祥伝社文庫)
影踏み (祥伝社文庫)
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横山 秀夫
祥伝社
売り上げランキング: 11,677



 深夜、寝静まった民家に侵入して窃盗を働く「ノビ」。A級のノビ、刑事から 「ノビカベ」と呼ばれる泥棒・真壁修一が出所した。出迎える者はいなかったが、彼の内耳には双子の弟・啓二の声が響いている。
 15年前、空き巣で警察に追われるようになった啓二を嘆いて母親が家に火を放って無理心中を起こし、助けようとした父親も命を落とした。以来、真壁はノビとして生きるようになり、啓二は真壁の耳の中で真壁を助ける存在となっていた。
 2年前に捕まった事件で、真壁は忍び込んだ家で違和感を覚えていた。その違和感の正体を探るため、真壁は自分の起こした事件の周辺について調べ始める。その他、計7作の連作短編シリーズ。


 悲痛な人生を歩みながら、頭脳明晰で寡黙な真壁がストイックでかっこよく思えて、リアルな犯罪シーンに手に汗握り見付からないで欲しいと願ってしまった。
 横山秀夫さんと言えば刑事ものだけど、これは犯罪者側を描いている。さらに、主人公の中に死んだ双子の弟が生き続けているという、私が知ってる横山さんの中では斬新な設定だった。
 母親が弟を殺したという過度のストレスから真壁の精神が作りだした人格なのか、本当に啓二の霊がそこにいるのか。意思の疎通はできるけど、思考は共有しないから完全に別人格なのは確かだ。真壁をよりも賢かった啓二の抜群の記憶力は発揮されてるけど、真壁自身も大学法学部を現役で合格する実力の持ち主だったんだから元々真壁の中に眠っていた能力が無意識に発揮されてる可能性もあるし・・・。
 かつての恋人と思しき安西久子も、辛い立場だ。幼馴染の双子の兄弟から言い寄られて片方を選んだらもう、もう片方がグレた挙句に親が無理心中。自分が選んだ方も犯罪者になり、刑務所へ。刑期を終えて突然訪ねて来て、やっぱり好きだと自覚していると彼は自分を突き放す。こんなに健気な久子が愛したかつての修一は、どんな男だったんだろうなぁ。
 唯一の光だと思われる久子の存在も遠ざけて、社会の暗い部分を歩く真壁はどこに向かうんだろうか。私はオカルト抜きで、啓二は真壁が作り出した幻なんだろうと思って読んだ。そうすると、久子と結ばれて欲しいと願っている啓二の気持ちは真壁の本心なんだと思えて、それでもノビを続けずにいられない真壁の心の傷が計り知れなくも辛い。
 そんな私に、ラストの啓二の告白はちょっとした混乱をもたらした。母親は啓二を逃がそうとしたけど、啓二は逃げずに母親と共に死ぬことを選んだ。つまり母親が啓二を殺したんじゃなくて、啓二が母親を追い詰めて死という形で独占したということ。これは啓二にしか知り得ない事柄なわけで、耳の中の啓二は本当に霊魂だったってこと?いや、真壁の想像がこのやり取りを生んだだけ?
 返事をしなくなった啓二は、消えたんだろうか?どこまでもついてきた影って、啓二なんだろうか、それとも心の奥底では啓二を憎んでいた真壁の本心なんだろうか。別人格か霊魂かは結局明らかにされなかったけど、読み終えたら霊魂であって欲しいと思うようになった。
 横山さんの丁寧だけど無駄のない研ぎ澄まされた表現力、久々に読んだけど相変わらず凄い。
別窓 | [や行の作家]横山 秀夫 | コメント:0 | トラックバック:0 |
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