元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『スウェーデン館の謎』  有栖川 有栖
2017-07-06 Thu 01:03
スウェーデン館の謎 (講談社ノベルス)
有栖川 有栖
講談社 1995.05.08
売り上げランキング: 924,561

 作家アリスシリーズの中の国名シリーズ2作目。
 「私」こと有栖川有栖は、取材のために裏磐梯(福島県北部)にあるペンション・サニーデイを訪れた。積雪の中、見物に行った五色で、7歳の息子・流音(ルネ)を亡くしたというスウェーデン人女性のヴェロニカに出会う。彼女はサニーデイの隣にある通称スウェーデン館の主・乙川リュウの妻・ヴェロニカだった。
 お茶の時間にサニーデイの主人・迫水晴彦と共にスウェーデン館にお邪魔した「私」は、童話作家のリュウ、妻のヴェロニカ、夫婦の友人であり建築会社社長の等々力、挿絵画家の綱木淑美と懇意になる。その翌日、淑美が泊まっていた離れで死んでいた。離れの煙突が折れており、扉が少し開いていたために様子を見に行ったリュウが発見したが、積もった雪には離れに向かう淑美の足跡とリュウが往復した足跡しかなかったにも関わらず、明らかに他殺と思われた。
 前日のメンバーにリュウの母親・育子、ヴェロニカの父親・ハンス、淑美の妹・輝美、リュウの従弟で居候・葉山悠介を加えて共に警察の事情聴取を受けた「私」は、友人・火村英生のフィールドワークに再び立ち会いたいと言う希望から彼に電話を掛けた。

 雪が積もる中、夜中に離れで起きた殺人というクローズドサークルもの。プロローグで美しい夏の日に起こったルネ少年の死が意味ありげに描かれているために犯人は自然と見当がついたから、スウェーデン館の住人との仲が深まるほど悲哀が濃く感じられていく話だった。もしこの物語にルネの死がなかったら、私には火村の推理を読むまで犯人はわからなかっただろう。意図的に犯人の見当がつくよう書かれているんだろうけど、そこが凄い。
 有栖川有栖先生の作品を出版順に読んでるけど、どんどん面白くなっていく気がする。関係者の人間性が生き生きしてるし、アリスと火村の掛け合いが一層面白くなってきた。その気安さの中でも重く漂う殺人事件と、殺人事件に対して内に秘めた物がある様子の火村と、いつか火村がバランスを崩すことがあれば救いたいと思っているアリスという暗い部分がいい感じで混ざり合ってるのがいい。でもアリスがヴェロニカに横恋慕するのは、ちょっといただけないな。ていうか過去の作品鑑みても、アリスってあんまりモテないくせに女は顔で選ぶ人なんだね。そして火村はインテリイケメンなのに女嫌い。どうなんだ、その設定。
 前作は作家仲間の話だったけど、今回もジャンルは違えど作家が出てくる。アリスの・・・というか有栖川先生自身の児童文学の解説がわかりやすくて面白く、さらに創作活動について語り合うシーンも興味深かった。乙川リュウの作品『ルンネの不思議な旅』、実在したらたぶん私はめっちゃ好きだわ。読んでて共感する「女の子らしい」読み物が苦手で、自分とは無縁に近い「男の子らしい」読み物が好きだから、きっと乙川リュウの大ファンになっただろうなぁ。 
 トリックがわかりやすかったのも面白く感じられた一端だと思う。推理小説はロジカルシンキングを放り出して、何だかよくわかんないけどコイツが犯人って程度しかわからない事もあるダメ読者の私。短編ならともかく本格長編ミステリーであっさり納得いくなんてむしろ珍しいくらいなんだけど、この作品のトリックはわかりやすかった。というか、この『スウェーデン館の謎』が今まで読んだ有栖川先生の作品の中で一番面白いと思う。
 リュウとヴェロニカの罪はどれくらいなんだろうか。リュウは犯人隠避罪と証拠改ざん?ヴェロニカは突発的な傷害致死と証拠隠滅の罪かな?情状酌量の余地はありそうだし、いい弁護士さんに出会えたら軽い罪で済みそうかな。またスウェーデン館で穏やかに暮らして欲しいと思えるような、読んでて楽しい登場人物達だった。
別窓 | [あ行の作家]有栖川 有栖 | コメント:0 | トラックバック:0 |
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