元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『四畳半神話大系』  森見 登美彦
2016-11-09 Wed 12:19
四畳半神話大系
四畳半神話大系
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森見 登美彦
太田出版   2004.12
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 実益のあることは何一つしていない堕落しきった大学三回生の「私」が送った、4種類の大学生活を描くパラレルワールド。
 一回生の時に、配られたサークルのビラの中から映画サークル「みそぎ」、「弟子求ム」という奇想天外なビラ、ソフトボールサークル「ほんわか」、秘密機関〈福猫飯店〉の四つに興味を惹かれていた。
 各章でそれぞれのサークル所属するも、堕落していき同じ人物達と関わり合っていく。


 眠くなるくらい退屈だった。尊大で持って回った語り文は嫌いじゃないけど、長々と続くと疲れる。どことなく不潔な雰囲気で駄目すぎる人格の「私」や小津や樋口師匠、なぜか悪くない見た目の女性達とはまあまあ仲良しな間柄、盛り返す事なく終わっていく展開。何も共感できず、尊敬もできず、主要人物達に侮蔑感を抱いたまま、でもなぜかちょっとハッピーなラストでそれぞれの話が終わっていく。各話で全く同じシーンが全く同じ文書で出てくるのも、展開が退屈なだけに辟易する。
 何なのかこれは。これが有名な『四畳半神話大系』なのか。いや、どっかできっと面白くなるんだろうから期待しよう。最後だ、きっと最後は凄いんだ!と自分を奮い立たせて何度も中断しながら読み続けて、とうとう最終話。果てしなく続く四畳半で遭難が始まった時に、「来た!」って思った。
 行けども行けども四畳半が続く中とうとう香織さんがいる部屋に来て、ようやく私は著者さんの意図を理解できた。4種類の大学生活は、「もしも」じゃなくて全部並行世界としてこの世界に存在するわけだ。一回生の時に気になった4つのサークルだけじゃなく、人生の色んな分岐点でそれぞれ並行世界が発生するとなると、その数だけ自分じゃない自分がいるわけで。そして、どの人生を選んでも同じ人達と関わり合い、場合によっては明石さんとの恋が成就する。四畳半は今後もどんどん増え続けるけど、「私」が死んだら消滅するのか存在し続けるのか・・・。
 80日間遭難して外に出てみるとそれほど時間は経ってなかったという事は、四畳半の一瞬を80日間彷徨っていたという事になるわけで。偶然元の部屋に戻ったのか端と端がつながっているのかとか、それぞれの四畳半の外にも外界があるはずだとか、世界の膨大さとか、何この急に没頭させられる展開は。
 結局のところどの選択をしたところで人生はそう変わらないと感じさせられつつ迎えた4話。1~3話はずっと同じ会話で終わってたのに最後の最後だけほんのちょっと違って、また考えさせられる。もしかして選択によって変わるのか?でもたったこれだけの日常会話では判断できない。でも「私」は四畳半を彷徨った挙句、唯一違う会話をしたわけで・・・。と、このラストが意味するところを無駄に考え込んでしまう、この余韻は結構心地よい。
 全体で見ると面白いし、他の話でわからなかった細部も見えてくる。でも部分が冗長でつまらなかった。
 男だったら、もうちょっと「私」に親近感覚えられたのかもなぁ。あくまでイメージだけど、大学で堕落しちゃう男、小汚い男は必ず少数いそう。女子大出身の私の周囲は堕落した同窓生でもまあまあ小奇麗だったし、小汚い女って本当身近にはいなかったと思う。だからこういう男が身近にいた例が全くなくて、ただの嫌悪の対象でしかない。そんな奴が主人公だったから、幸せなラストを迎えても感動ゼロだったわけで。
 『有頂天家族』の主人公のごとく、他者には真似できない事を面白おかしくやってのける奴だったらこの話も大好きだったのかもなぁ。「私」も変な事は過去にいっぱいやったっぽいけど、どれもあんまり洒落にならない。キャラクター小説ではないとはいえ、魅力ある主人公って私にとってはこんなにも重要だったんだなぁ。
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