元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
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『ビブリア古書堂の事件手帖5 栞子さんと繋がりの時』  三上 延
2016-08-18 Thu 15:36
ビブリア古書堂の事件手帖 (5) ~栞子さんと繋がりの時~ (メディアワークス文庫)
三上 延
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス (2014-01-24)
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「プロローグ リチャード・ブローティガン『愛のゆくえ』(新潮文庫)
 「彼女」に告白した「俺」が二ヶ月近く返事を待った末、5月31日に返事を迫る。「彼女」が答えている途中で、プロローグ終了。


「第一話 『彷書月刊』(弘隆社・彷書舎)」
 栞子に告白した「俺」だったが、後日、済ませていないことがあるから5月の終わりまで返事を待ってほしいと言われた。了承したが、お互い意識してしまって口数が減っていて気まずい。
 そんな状況の中「俺」は滝野蓮杖から近隣の古書店に『彷書月刊』のバックナンバーをまとめて売り、しばらくするとまとめて買い戻すという女性がいるという話を聞く。その女性が意図するところがわからず、噂になっていると言う。
 店に戻って栞子さんに話すと、「俺」が外出している間に『彷書月刊』のまとめ売りについて問い合わせの電話が来ていたらしく、話し終わった直後に中年の女性・宮内が訪ねてきた。持ってきた『彷書月刊』には、全て特徴的な書き込みがしてあった。

 いつも通りさらっと解決した何てことない事件だと思ったら、目次にはない「断章Ⅰ小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)が志田さん目線で続いていて一瞬戸惑った。けど、読んでびっくり。解決したと思った件は大輔向けの解決で、実際に宮内さんが探している失踪した旦那さんというのは志田さんだった。謎めいた存在だった志田さんの過去を急に知る事になって、ちょっと嬉しかった。と同時に、一連の事件が篠川智恵子が仕組んだ事のようで、彼女の能力とその応用ぶりが不気味さを増している。
 大輔は返事を待たされつつも意外とぐいぐい行くようになってて、私も志田さんにマルっと同意見。若いっていいよね。
 

「第二話 『ブラック・ジャック』(秋田書店)」
 ビブリア古書堂に、栞子の親友の滝野リュウが訪ねてきた。本の事で相談があるが、大輔が一緒でないと栞子さんが受けないから店舗の方に来たと言う。
 栞子とリュウの後輩・真壁菜名子の両親は手塚治虫の『ブラック・ジャック』マニアだ。母親は他界しており、父親と弟の折り合いが悪いそうだが、その弟が家に5冊ある『ブラック・ジャック』4巻をどこかに持ち出したらしい。出張中の父親が戻る前に、取り戻してほしいと言う。

 第一話から1週間後くらいと思われる辺り。以前に増してイチャついてるというか、栞子さんが大輔に対する気持ちを少し素直に口に出すようになってきていてちょっとニヤついてしまう。とめどない本の話を大輔が喜んで聞いてくれるから嬉しくなるとか、大輔が一緒じゃなかったら本がまつわる厄介事の相談は受けないとか。巻を重ねるごとにちょっとずつ心を開いていく感じが、本当に上手いよなぁ。
 事件の方は、知識量とそれを物語に自然に反映させている点には相変わらず驚かされるものの、父親の気が知れない・・・。妻の死に目に駆け付ける際に貸本屋に寄った理由、話しても良かったんじゃないのか。どうして家族なのに話さないのか。そこんとこがイマイチ納得いかない。
 ところで、この章にも続きが。「断章Ⅱ 小沼丹『黒いハンカチ』(創元推理文庫)」で、今度はリュウ視点。志田さんの次に栞子さん達の情報を篠川智恵子に流してたのは、リュウだった。リュウによると、智恵子さんは栞子さんに本にまつわる謎解きをさせたがっており、大輔が一緒でないとその手の依頼は受けないと知りつつも大輔を疎ましく思っているっぽい。
 ここにきて改めて思うけど、智恵子さんってほんっと何でもわかるんだなぁ。もう、読心術レベル。


「第三話 寺山修司『われに五月を』(作品社)」
 篠川智恵子に会うために、彼女が用意した本にまつわる問題を解くことになった。その栞子を訪ねて、以前盗本を持ち込んで出入り禁止になった門野澄夫という三十代後半の男がやって来た。彼の実家と篠川智恵子の実家が近所で、昔なじみだそうだ。
 先々月亡くなった門野三兄弟の長男が寺山修司のコレクターだったが、死ぬ間際に『われに五月を』を譲ると言ったそうだ。しかし実家で絶縁に近い状態だった澄夫の言葉を誰も信じず、『われに五月を』を持ち出すことが出来ないからどうにかして欲しいと言う。
 彼の実家に行くと、次兄の幸作と、長兄・勝己の妻・久枝が迎えた。書斎にあった『われに五月を』の間に澄夫の小さい頃の写真と、彼が描いたと思われる絵が挟まっていた。澄夫が描いた絵は、寺山修司の直筆下書き原稿の鉛筆書きを消しゴムで消した上に描かれていた。幸作の記憶によると、この辺りから勝己は書斎に鍵をかけ、澄夫に厳しくなったようだ。

 これちょっと、わかりやすいかなー。消しゴムで上手に消せるようになるのって、結構年齢上がらないとできない。増してや澄夫みたいにガサツな子なら、なおさらだと思う。作中ではそれなりに消えているような表現だから、大人が消しているはず。この時澄夫と一緒にいたのは・・・って、わかれよ勝己さん。
 というわけで推理部分には一瞬で興味がなくなったんで、智恵子さん再登場だけを楽しみにしてたら第三話が終わって「断章Ⅲ 木津豊太郎『詩集 普通の鶏』(書肆季節社)へ。栞子さんが智恵子さんに、両親の関係は本当はどういったものだったのかを尋ねる話。
 導かれるように母親について行きそうになった栞子さんだったけど、寸前に大輔の事を思い出して断った。
 

「エピローグ リチャード・ブローティガン『愛のゆくえ』(新潮文庫)」
 断章Ⅲの途中から、「大輔くん」と呼ぶようになった栞子が、大輔に告白の返事をする。自分が母親のように、大輔を置いてどこかへ行ってしまう事が怖かったと言う栞子に、大輔は自分も一緒に行けばいいと答えた。
 2人がキスしようとした瞬間、店のガラス戸に石がぶつけられる。第三話の冒頭で保釈申請をした田中敏雄の置き手紙があった。

 栞子さんが大輔に自分の気持ちを伝えるシーン、とても良かった。大輔が栞子さんに、当たり前のように「俺も一緒に行けばいいじゃないですか」って言うシーンも。
 たまーに田中敏雄の事件にちょっとだけ触れた時なんかに思ってたけど、このシリーズで扱う事件の流れからして田中敏雄の件はどうも決着しているとは言い難いと思ってはいた。とうとう来ましたか、復讐。田中敏雄には、できれば大輔との関係を知って欲しいなぁ。


 全部読んでからプロローグとエピローグに矛盾を感じて、読み直して気付いた。プロローグは栞子さんの両親の話だったんだね。てっきりプロローグに向かって各話が進んでるのかと思ってたら、エピローグが全然違った。騙されたなぁ。
 全般的に智恵子さんの影が濃厚な巻だった。智恵子さんはどうして出て行ったのか、どうして腰を落ち着けないのかは未だに謎なんだけど、解明するだろうか。父親はどうして夫婦の約束を娘達に語らなかったのか。特に、傷ついている栞子さんに語らなかったのかがわからない。自分だけの思い出に浸りたかったとか、そういう事を話すのが気恥ずかしかったとか、そんな自分本位な理由でもいいから、そこのとこも智恵子さんが出て行った理由と併せて知りたいと思う。次で最終巻らしいけど、どこまで判明するかなぁ。第二話もそうだけど、このシリーズに出てくる親子って今一歩踏み込みが足りない気がする。というか、親が子に本音を話さない家庭が多い。前巻もそうだったし、坂口しのぶさんとこの親子もそうだった。仲のいい親子って、2巻の須崎父子くらい?まああそこも父親が訳ありすぎたんだけど。子供への愛情が変化球過ぎてデッドボールになってる家庭が、このシリーズには多過ぎると思う。
 あと、志田さんは次回もちゃんと出てきてくれるだろうか。奥さんに連絡したのかな?家に帰ってせどり屋を続けてくれるのが一番いいかな。
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