元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『ビブリア古書堂の事件手帖4-栞子さんと二つの顔―』  三上 延
2016-07-14 Thu 12:24
ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~ (メディアワークス文庫)
三上 延
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 東日本大震災から間もないある日、大輔がビブリア古書堂で一人店番をしている時に篠原姉妹の母親・篠原智恵子から電話が掛かってきた。店のすぐ外から掛けてきた篠川智恵子からの電話は、また来ると言って切れた。
 その翌日、かつてビブリア古書堂を利用していた来城慶子という女性から、江戸川乱歩の古書に関することで相談があるという依頼を受けた。喉頭癌で声帯を取って上手く話せないために妹の田辺邦代を介して聞いたところによると、来城慶子は資産家・鹿山明の愛人をしており、彼の死後江戸川乱歩に関する古書や物品のコレクションを置いた別荘を譲り受けたそうだ。
 依頼は江戸川乱歩に縁のある珍しい物が入っているという三重鍵の金庫のパスワードを解いて欲しいという物。鍵、ダイヤル、暗証文字によるこの金庫を開けることができたら鹿山明の江戸川乱歩コレクションをビブリア古書堂に売るという報酬に、栞子さんは張り切って依頼を受けた。
 さらに田辺邦代は、鹿山家にあるという鍵を取り返して欲しいという依頼も追加した。鹿山家にあると聞かされていたが、鹿山明の息子・義彦はない言っているそうだ。鹿山義彦に嫌われている自分達ではまともに話も聞いてもらえないので、この件もお願いしたいという。
 鹿山義彦を訪ねると、あからさまに苦々しい態度ながら応じてくれた。離婚して出戻っている妹の鹿山直美は、現在は「ヒトリ書房」でパートをしていると言う。厳しく育てられた子供時代ながら『少年探偵団』だけは買い与えられていた義彦は、直美、近所に住んでいた「ヒトリ書房」の井上太一郎と少年探偵団ごっこをする間柄だった。
 「ヒトリ書房」に行くと、直美が留守番していた。話を聞くことはできたが、父親を嫌っているという彼女から最終的に追い返されてしまう。
 翌日、途中から立ち聞きしていた井上が訪ねてきた。彼は、鹿山明は自分の恩人だった事、鹿山明が自分の趣味や愛人の存在を知っていながら鹿山兄妹に黙って接していた事、鹿山明の秘密や井上と直美との関係を鹿山家にばらされたくなければ彼を紹介しろと脅迫してきた篠川智恵子の事を話した。井上は、恩人である鹿山明が本当は家族を大切に思っている気持ちも持っていたことを、直美に証明してほしいと依頼する。

 人間関係が複雑ながらあまりにも滑らかに話が進んでいくから、シリーズ初の長編だった事に全然気づかなかった。「エピローグ」という文字を見て初めて気付いたくらい、とめどなく読んでいったように思う。せいぜい時々、ドラマを思い出すくらい。ドラマではこの話は最終話だったと思う。安田成美が剛力彩芽に「もし『押絵』の第一稿だったら、どんなことをしても読んでみたいと思わない?」というシーンがとても印象的でよく覚えてる。狂気さえ感じられる笑顔がド迫力でそりゃもう美しくて、原作で「篠川智恵子」という名前が出てくるたびにそのシーンを思い出してたんだけど、この巻でようやくそのシーンが出て「キターーーーッ」状態に。
 いきなり超どうでもいい感想から始まってしまったけど、面白かった。登場人物達の江戸川乱歩への情熱と共に、「ヒトリ書房」の店主・井上との和解、篠川智恵子の影がちらほらあると思ったら後半でバーンと登場したり、この人必要だった?とずっと思ってた田代邦代こそが中心人物だったり、栞子がずっと大輔に対していい感じ!いい感じ過ぎる!と思ってたら大輔がとうとう!とうとう告白しちゃったり!あと、篠川智恵子が出て行った理由を志田さんが教えてくれたんだけど「正気じゃ手に入らねえような、とんでもねえ古書」の存在がめっちゃ気になる!・・・という感じで色々と良かった。
 今回、大輔はやけに賢く感じた。力仕事とアッシー以外はうどの大木って思ってたんだけど、結構記憶力いいじゃないか。活字が読めない体質だというハンデを持ちながらも大卒という学歴を持っているだけの事はある。普通の人間だけど単なる怠け者な私とは大違いなわけか。
 今まで少しずつ距離を縮めて行ってた大輔と栞さんの関係の展開は次回に期待するとして、井上さんと直美さんのプラトニックな恋模様も結構良かった。中年の恋って結構いいね。このシリーズの今までの流れからして、こちらの関係も次回以降にまた出てくれるんじゃないかなって思う。智恵子が娘達には全く連絡をせず、志田さんとは連絡を取り合っていた謎も解けるのかな。
 余談だけど、「ヒトリ書房」の店主を栞子さんは登場以来この巻まで「ヒトリさん」って呼んでたけど、脳内に劇団ひとりが出てきてたのは私だけ?
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