元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『月光ゲーム―Yの悲劇’88』  有栖川 有栖
2016-04-07 Thu 12:25
月光ゲーム―Yの悲劇’88 (鮎川哲也と十三の謎)
有栖川 有栖
東京創元社   1989.01
売り上げランキング: 696,400

 有栖川有栖のデビュー作かつ、学生アリスシリーズの第一巻。主人公の有栖川有栖は英都大学法学部に入学して推理小説研究会に入り、夏休みに会員4人で山登り合宿を行うことになった。
 偶然同じ場所でキャンプを予定していた他大学の学生達と、共に行動することにしたアリス達を含む14人。最初の2日は探検したりゲームをしたりキャンプファイヤーをしたりして楽しくキャンプをしていたが、3日目の明け方に突然サリーこと山崎小百合ことサリーが「下山します」という旨の書き置きと共に突然姿を消した。
 直後に山が噴火し、下山路が土砂に埋もれて遭難する13人。自分達の身もさることながらサリーの安否が心配な中、弁護士こと戸田文雄の刺殺死体が発見される。彼は「Y」という文字のダイイングメッセージを残していた。
 閉ざされた大地で起こるミステリー「クローズドサークル」状態で容疑者14人でお互いが疑心暗鬼に陥りつつ夜を迎え深夜、第二の噴火が起こった直後に一色尚三が行方不明になった。さらに次の日の夜に、ベンこと北野勉の刺殺死体が発見される。彼の傍らには、スケッチブックに「y」の筆記体が書かれたダイイングメッセージがあった。
 お互いを疑わざるを得ない状況で救出も来ず食料も尽きそうになり限界を迎えそうになるメンバーだったが、微震を繰り返すうちに下山路を塞いでいた土砂の形が変わり下山の希望が見えてきた。危険な道ではあるけど、12人は下山の決意をする。遺体は残して行かざるを得ないからせめて、と遺品を持って行こうとした彼らは、北野のポケットから行方不明の一式尚三のものと思われる指を発見した。


 これ、前半のキャッキャウフフ状態が長すぎませんか・・・。しかも14人の大所帯で個性も少なく、誰が誰だか。主人公と江神さんと理代とルナ以外はあんまりわからないままだった。あだ名で呼ばれると、もうお手上げ。ピースて誰だよ弁護士って誰だよ博士って誰だよ。巻頭に人物紹介があったけど、大学と学科と学年だけというザックリしたもの。謎が込み入ってるミステリー小説は、ダメ読者の私には厳しい。あと、ルナの月に惑わされてる設定が深すぎて、意味あるのかと思って理解できるまっでじっくり読んだ私の時間返して。
 ドラマで窪田正孝が演じてて、少なくともアリスのシーンは彼の姿と声で脳内映像が固定されてしまった。それが逆に良かったんだと思う。でなきゃあんな、ダラダラ続くリア充乙みたいな状態は読めたもんじゃない。マーダー・ゲームのとこはちょっと面白いと思いきや、途中から流して描かれてる感じ。
 それでも、殺人が起こってからの正統派クローズドサークルな状況はわくわくした。色んな人が語る穴だらけの推理合戦も面白い。けど、最終的に推理小説研究会部長の江神が探り当てた犯人の動機がひどく軽かった。むしろ、それまでの流れであまり存在感なかった人が犯人だったから、「とりあえずこれ誰だっけ?」となってしまった。
 一連の事件の発端となったサリーの下山理由さえ、「え?そんなもの?」と思う程度の物。いや、その後の事件が大き過ぎただけで、そもそも山自体はハイキング程度の物だったからいいのか?ルナちゃんが月に魅了されてる設定、そんなに長々引っ張るほど必要だった?ダイイングメッセージの謎も、途中で力尽きたって児童小説かってレベル。
 そしてさらに、エピローグ的なラストでさらに軽い衝撃が。若干存在感薄いながらも語り部だったアリスは、理代に一目惚れしていた。理代もアリスを悪からず思ってる感じだった。噴火の際に林に避難した時は抱きしめるアリスに、理代も吊り橋効果?って感じのいい具合。だけど無事救出されて京都に帰る際に告白したアリスへ、彼氏がいる的発言。この尻軽女がーっ!て思ってしまったんだけど、あの雰囲気は非常事態だから仕方ないの?
 これを今更感溢れる感じで読んだ私はシリーズで続いていくって知ってるから、今後に期待したいって思える。でもこれを当時読んだ読書家の方は、なにこれって思った人も多いと思う。ミステリー部分は面白かったけど、背景と人物のわかりづらさが大きすぎる。マンガである金田一少年レベルでも混乱するオツム弱めの私には、ちょっと難しかったかな。人名と人間関係を良く理解し、犯人を知りつつもう一度読んだら、初回よりは楽しめた。でも、江戸川乱歩賞を落としたのは納得かな。
 タイトルに「Yの悲劇」とあるけど、終始エラリー・クイーンの名前が出てきた。残念ながらダメ司書だった私はエラリー・クイーンを読んだことがないんだけど、読んでたら展開とかもっと楽しめたのかな?いや、この内容なら読んでても大差なかったかもなぁ。
 どっかで見たことあるって状況がいっぱい出てきたけど、これは昔からのお約束なのか、15年くらい前のミステリーブームに影響を与える側だったのかな?私はミステリーは好きだけどファンではないってレベルだから、不明。

↓読んだ本の表紙画像がなくて寂しかったから、文庫版のリンクも貼ってみた。
月光ゲーム―Yの悲劇’88 (創元推理文庫)
有栖川 有栖
東京創元社
売り上げランキング: 16,587


 単行本の、昭和然とした表紙絵柄はちょっとノスタルジーを感じていい感じだったんだけど、amazonに画像がなかったのが残念。
別窓 | [あ行の作家]有栖川 有栖 | コメント:0 | トラックバック:0 |
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