元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『PRIDE-池袋ウエストゲートパークⅩ』 石田 衣良
2015-11-21 Sat 16:53
PRIDE—プライド 池袋ウエストゲートパーク10
文藝春秋 (2012-09-20)
売り上げランキング: 20,986

 立て続けに池袋ウエストゲートパークシリーズいきました。

「データBOXの蜘蛛」
 中堅企業ながら最近勢いを増しているIT企業「ライフゲート」の開発部長・松永悟が、会社の新規プロジェクトの情報が入ったスマホを落としたという。スマホの拾い主は松永を脅迫し、600万円を請求していると言う。相手が情報をコピーしていつまでも脅迫し続ける事を恐れた松永は、彼らが二度と脅迫してこないようにする事をマコトに依頼した。
 マコトが犯人とのメールをやり取りし、金の受け渡し現場でGボーイズが犯人一味を痛めつけるだけで済むと思っていたが、犯人の仲間が松永の不倫相手・オリエに一目惚れした事で事態は急変する。

 仮にもIT系の会社員ならスマホのセキュリティについてもっと知ってて!と頭を抱えたくなる設定だった。オンラインゲームを開発するような会社が、スマホアプリの企画が上がってないわけがない。スマホの事、もうちょっと知ってていいんじゃないの?IT齧ってる程度ならまだしも、開発部長でしょ!?・・・いや、この話の本質はそこじゃないんだけどね。わりと引っかかって読み進んだけど、後半のオリエ危機で、見どころは脅迫事件じゃなかったんだと納得。


「鬼子母神ランダウン」
 ロードレーサーでサイクリングに行ったマコトとタカシは、鬼子母神で弟を自転車でひき逃げした犯人を捜しているというナナと出会った。サッカーでU16の日本代表候補に選ばれるほどの選手だった弟のマサヒロは利き足を骨折し、医者からは元のパフォーマンスを取り戻すのはほぼ不可能だと言われていると言う。
 
 話聞いちゃったから成行き的に協力するのかと思いきや、タカシがぽっちゃり系のナナに一目惚れしちゃったんで半分はタカシのために協力する模様。孤高のキング、まさかのデブ専ですか。Gボーイズにまで犯人捜しを協力させちゃうとは。
 事件自体はいつも通りマコトの機転で解決するんだけど、タカシがナナにいいとこ見せようと不必要に行動的だったり饒舌になったりするとこは新鮮だった。こういう可愛いとこもあるんだなーみたいな。最終的には付き合ったと書いてあったからちょっとうれしかったんだけど、数行後には破局。もっとタカシがナナにデレデレするとこが読みたかったなと残念に思った。
 今回の件もそうだけど、今までマコトも彼女できては次の話では別れてたりして、このシリーズは良くも悪くも恋愛に淡泊。レギュラーメンバー達もいつまで経ってもそれほど年齢は変わってないっぽい分、私の中でサザエさんやコナンみたいな存在になりつつあるかもしれない。


「北口アイドル・アンダーグラウンド」
 マコトが働く果物屋に、イナミと名乗る地下アイドルが訪ねてきた。最近変なストーカーに狙われているようで、マンションのドアに血が塗り付けられていた事もあったと言う。マコトがボディーガードを務める間にも、マンションのドアに赤マジックで誹謗中傷が書かれる事件があった。

 地下アイドルとはいえ、アイドル。やっぱり内情はドロドロしてそう・・・っていうイメージ通りのドロドロ感がライトに描かれていた。事件も些細だし、解決した時も何だかちょっと滑稽さも入ってて、その中でイナミの爽やかさがいい感じだった。でもいい大人になっちゃった私は、老後どうすんだよーなんて夢もへったくれもない事考えちゃうんだけどね。


「PRIDE-プライド」
 若いホームレスを相手にした支援施設が話題になっている事を知ったマコトは、週刊誌に掲載しているコラムのネタにならないかと動く。そこへ偶然、リンという美しい女性が仕事を依頼してきた。3年前に自分をレイプした連中を探していると言う。彼らは現在、池袋周辺で何件も事件を起こしており、タカシの元カノも被害にあった事でGボーイズも動き出す。

 リンって、9巻に出てきた中国人の名前と一緒じゃーん!なんて鬼首取ったかのように言うのは下世話ですか、はい。タカシって2話前にデブ専って言ってたのに元カノは美人なのかよ!?とかもツッこんじゃ駄目ですか、そうですか。
 それはさておき、物語の常だけどホームレスの自立支援事業とリンの件はつながってる。今回の件はそんな物語の構成の単純さなんてどうでもいいくらい苦しい事件だった。輪姦事件に、一昔前に一部でよく取り上げられた警察でのセカンドレイプ。そこからさらに、ラストでマコトへの圧力のためにリンが拉致される。
 この話はフィクションだからマコトとGボーイズがいい感じで片付けてくれるけど、現実でもこういう事件はあちこちで起こっているわけで。本当に刑罰が軽すぎるよ。去勢してやってくれって思う。
 ラストのマコトとタカシのやり取りがまるで最終回みたいだったんでちょっと焦って検索してみたら、去年11巻目が発売されていた。最終回なのかと焦ったくせに、出てるなら出てるで「なーんだ」って気持ちになっちゃう不思議現象。なんていうか、こんだけヒリヒリした物語を書いて、ちょっとセンチメンタルな終わり方しておいて、次回はまたマコトもタカシも彼女いませんって感じの体で新しい事件を迎えるんだと思うと「なーんだ」ってね。阿藤快みたいに、「なんだかなぁ」でもいい。
 このシリーズを読み始めたのは、15年近く前。マコトやタカシと同世代だったんだけど、当然ながら私は年を取って彼らは相変わらず若いまま。ただ、絡む事件は世相を反映してたり、アイテムもスマホが出てきたりなんかするもんだから、彼らの変わらなさが逆にちょっと寂しい。つらかったり苦しかったり魂を削るような事件もあったのに、成長しないのか。フィクションだからと言ってしまえばそれまでだけどね。似たような感じで別のシリーズ始めるってわけにはいかないのかなぁ。まあ、いかないんだろうけど。
別窓 | [あ行の作家]あ行その他の作家 | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<『ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち』  三上 延 | よむよむ記 | 「池袋ウエストゲートパーク」シリーズ 石田 衣良>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック


| よむよむ記 |