元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『告白』 湊かなえ
2011-09-25 Sun 07:51
告白告白
湊 かなえ

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 第6回本屋大賞を受賞。2010年に映画化。
 中学教師の森口は教師を辞める日に、自分の一人娘・愛美は事故死ではなく殺人で、犯人はこの中にいる、と担当するクラスの生徒達に語りかけ始めた。犯人をA、Bとしたまま、なおかつA、Bが誰かわかるように順を追って犯人を特定し、その生徒らに復讐をした事を告げて学校を去る彼女。その日からクラスは、新しい担任や他のクラスの者に知られないまま急速に暴走し始める。
 1章は森口のクラスへの語りかけ、2章はクラスのいち女子がその後のクラスの事を書いた森口への手紙、3章は直樹を溺愛する母親が直樹によって殺されるまでの日記、4章は直樹が修哉とつるんでから幼女殺し・登校拒否・母親殺しに至るまでの心理、5章は主犯格だった修哉による生き別れの母親への思慕の気持ち、6章は森口による修哉への復讐を遂げた電話。視点を変えながら全てを描き尽くしている。

 このラスト、私は結構好き。救いのない話なのか?私はすんごい救いある話だと思った。自分勝手な理由で殺人を犯した未成年犯罪者にはこれくらいしてもいいと思う。まあ、他の人を巻き込んだんじゃないかっていう点は気になるけど。でも関係ない人を多少巻き込んだとしても、復讐したい気持ちはあって当然なんじゃないかなぁ。
 この本の面白い所は、1章だけで独立完結した十分なミステリーなのに続く2章以降が蛇足に終わらずに次々に更なるブラックさを露呈していってるところだと思う。ひとつひとつはリアルなどす黒さなんだけど、まとまると異様。その異様さが面白い。
 表立ったブラックさはもちろんだけど、森口の復讐はクラス全員の前で娘を殺した犯人を特定した事かと思いきやあんまり効いてなかった修哉にはしっかりトドメ刺すし、いい子だと思ってた美月ちゃんは電波だったし、新しい担任の寺田は熱血バカかと思ったら森口に操られてただけとか、さらなるブラックさがどんどん出てくる。
 ただ、全体的に妙に品があってグロさは少ない。直樹と修哉の視点以外は全て敬体で書かれてたせいかとも思ったけど、作者自身の表現の傾向による物かなぁ。ドロドロした内面や、身も凍るようなブラックさも結構好きな私としては、この品の良さは何か物足りない。その物足りなさから、面白いんだけど本屋大賞にしてはいま一歩って気がしてならない。
 例えば、大人が変わっていく様子を描くのは上手い。寺田が客観的に見ても焦っていくとことか、直樹の母親の世界がどんどん狭くなっていくとことかは妙にリアル。だけど直樹が壊れていくとこは、いまいち。ドカンと来て欲しいシーンなのに、衝動が伝わって来ない気がする。修哉が美月を殺すシーンもそうだ。逆上したっぽいのに感情が全然伝わって来ない。だから高なる波がなくて、スーッと通り過ぎておしまいって印象だった。
 ラストは衝撃ではあったけど、これも淡々としてる。直樹や修哉の衝動殺人をベタでもいいからリアルに迫り来る感じに描いててくれたら、クールダウンかと思っちゃうようなあっけないラストの描き方も効果的だったかもしれない。でも、どこもかしこもあっけないから、ラストも衝撃な内容なのにスカッと空振りを見せられた感じがしてしまった。なんだかなー。
 ついでにもう1点批判させてもらえば、視点は変わっていくのに人物の人格が変わった気がしない。はっきり言えば書き分けができてない。全部三人称にして書いても全然不自然じゃないくらいに、文体が一貫してる。
 ついでのついでにもう1点言いがかりみたいな批判をさせてもらえば、頭いいけどイッちゃってる子の根底が母親からの愛に飢えてる設定はもう飽きた。でもこの設定がないと、ラストがないんだよな。個人的には結末は嫌いじゃなくて、むしろ森口グッジョブ!って思ったくらいだ。えーっと、やっぱ完全な言いがかりだな、うん。すんません。
 色々不満を書いたけど、この結末はやっぱり評価したい。好きかと言うと微妙だけど、溜飲が下がったって感じかな。幼い我が子を殺されて、復讐は何も生まないとか、犯人を殺したとしても被害者は戻って来ないとか、犯人と同じ罪を犯す事はないとか、そういうキレイ事で済ませないできっちりオトシマエつける。そこがいい。
 ただやっぱり、歴代の本屋大賞受賞作品と比べるとちょっと劣る気がするんだよなぁ。趣味の問題かなぁ。なんせ出産以来本にあまり関わってないし書評とかも読まなくなったから、客観的に見れてるのかどうかすら自信ない。
 
 気付いた時には図書館の本には予約が入りまくってて、借りられないうちに映画化&映画がそこそこヒット。テレビで何度となく紹介されて、内容はちょびっと知ってるけど全部は知らないっていう消化不良の状態が長い事続いたコレ。ようやく読めて、ようやく感想を書けて満足。
 でも2年くらい感想書いてないうちに頭がボケてしまったようで、言葉が出てこないこと甚だしかった。
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