元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
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『キノの旅 4』  時雨沢 恵一
2008-05-18 Sun 09:44
キノの旅―The beautiful world (4) (電撃文庫 (0440))キノの旅―The beautiful world (4) (電撃文庫 (0440))
時雨沢 恵一

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「像のある国」
 若い旅人がある国で見たのは、長い棒を持った人間の足下に何だかよくわからない生き物がいる像。昔、空から降りてきて、人々を苦しめていた22人の悪魔を棍棒一振りで退治したという。
 巻頭カラーを使った話だけど、本当にこれだけの話。意味がよくわからなかった。ただ、イラストを見るとその像は西郷隆盛像に見えないこともない。ああ、キノが日本に来た的な?と思ったけど、そういえば「キノの旅」シリーズには犬も出てくる。犬を“よくわからない生き物”って書かないだろうし。
 この本を最後まで読んで、ここで感想を書く前に結構長々と考えて、そういや時雨沢さんは時系列混濁が得意だったなと気付いてようやくわかった。9話目とリンクしてるのね。って、何年後だよ!?あ、いや、ここでの旅人はキノではないのかも。

「×××××」
 旅人がモトラドで草原の道を走っていると、道端で小さな子供が手を上げていた。モトラドが止まると、子供は連れて行って欲しいと言う。モトラドは乗る所がないと断り、旅人は誰かの命を預かることはできないと断って立ち去った。
 これも巻頭カラーを使った話であり、イラストによると「旅人」は第一話と同一人物に見える。けど、意味はよくわからないな・・・。子供の名前は「×××××」とあり、うろ覚えながらシリーズ2巻目辺りに出てきたキノの昔の名前がそういうふうに書かれていた気がする。じゃあ子供はキノなのか?でもキノは旅を始めた時からエルメスに乗ってたからなぁ。心の風景とか?よくわからない。

「二人の国」
 これと言って見所のない国で退屈していたキノだったが、喧嘩をしている男女を見ても絶対に止めに入らないように言われる。その後通りすがりの男性に家に招待されてついていくと、男性の妻はひどい虐待にあっていた。男性が寝た後、キノはサンドと呼ばれるその女性から夫を殺して欲しいと頼まれる。この国の社会通念に縛られて見合結婚をし、社会通念によって離婚もできない。旅人は犯罪を犯しても一日以内に出国したら罪に問われないから、という彼女の願いをキノはきっぱりと断る。
 DVを目の当たりにしても淡々としていられるキノは、やっぱいい。DVだけじゃなく、おかしな法律がまかり通ってる国という設定が面白かった。最後はすっきりしたような、しこりが残ったような・・・。

「伝統」
 昔からの伝統で、猫耳を付けるという国。人々は全員猫耳を付けており、キノにもしきりに猫耳を勧めてくる。
 これが国を挙げたドッキリだというオチには、ちょいクスリ。しかも、旅人の間では結構有名な話で、この国の人は知られていることを知らないというのも、ちょいクスリ。シズが半年前にこの国に来たということになってるけど、キノとシズはもう会うことはないんだろうか。

「仕事をしなくていい国」
 機械が発達しているため、旅人は何をするにも無料だった。しかし国民は<仕事>と呼ばれる意味のないことをやり、ストレスをもらうことで賃金を得て暮らしを豊かにするというシステムがあった。
 これは面白い国だな。私は昔からどうでもいい点で余計なことを考えるタチで、小学生の頃ドラえもんを見て“未来の人達は何の仕事をして生活してるんだろうか。こんなに便利な物がたくさんあったら仕事がなくなっちゃうんじゃないか”と考えてた。その回答をもらったような気分だ。もちろん、ドラえもんとキノは全くの無関係なんだけれども。

「分かれている国」
 二つに分かれた道を海へと続く道へ進むと、海沿いの街に着いた。新鮮な海の幸で宴会が開かれ、キノは歓迎を受ける。キノが翌日は北方の高地に行く予定だと言うと、人々は「奴らはとても残酷だ」と言う。
 翌日、森の手前にある街に行ったキノ。そこでは森の動物達を狩って宴会が開かれ、キノは歓迎を受ける。キノが前日に海沿いの街に泊まったと言うと、人々は「奴らはとても残酷だ。それなのに我々を残酷だと言い、自分達の真の残酷さに気付いてない」と言う。
 この本が出たのは結構前なのに、何かタイムリーだな、私。まさかシーシェパードが意味不明なことを言っている時にこれを読むとは。オーストラリア人に読ませたいよ、全く。まあ、日本人は奴らがカンガルーを食べてても何も言わないけど。さらに、捕鯨文化にイチャモン付けてくるのは政治的背景もあるからなんだけど、さすがにラノベでそこまでは書ききれないか・・・。

「ぶどう」
 オープンカフェでお茶を飲んでいたキノは、突然三十歳くらいの男に話しかけられる。男は、旅は人生の無駄遣いだの、モトラドのような危険な乗り物ではなくて車を買うべきだの、一方的に説教をしてきた。彼はかつてモトラドで旅をしていたが、今は結婚して少しでも多く稼ぐこと、休みの日は家族サービスをすることを強要されていた。そんな彼の横を、キノはエルメスに乗って颯爽と通り過ぎる。
 何が「ぶどう」なのか一瞬迷ったけど、イソップの「すっぱいぶどう」ってやつですかね。何か、男にも男の妻にも妻の母親にもムカッとくる話だった。

「認めている国」
 入国して泊まろうとしたホテルで、オーナーに話しかけられたキノ。オーナーによると、明日は“いらない人”を選ぶ投票日だそうだ。国民が“自分にとって必要な人”を投票し、“誰からも選ばれなかった人”は国から殺される。しかし毎年、誰からも名前を書かれない人はいないため、選挙後は全ての人がお互いを必要とし合って生きているのだと言う。そのオーナーは、周囲から煙たがられている存在のようだった。
 オチが面白かった。しかし、冷静に考えると成り立たない選挙だよね。1人1票投票で、被記名者が1人被ると1人死ぬシステム。2人1組にならないと、書かれなかった人は数人じゃ済まないはず。

「たかられた話」
 陸の視点を通したシズの話。訪れた国は盗賊団にたかられており、月に1度やってくる盗賊団のために大量の食糧を差し出さなければならないことになっていた。次に盗賊達が来るのは明日だと聞いて、シズは翌日の朝から彼らを待ち、22人全員を殺した。しかしその国の住人達は、やり過ぎだ、人殺しだとシズを責めた。
 国民は優しいなぁと思う。水戸黄門も悪代官とかを殺したりはしないもんなぁ。助さん格さんがお代官様や越後屋を殺して「一件落着」とか言ったら話は変わっちゃうし。でも、旅人に過ぎないシズにできる精一杯のことは皆殺しだったんだろうな。

「橋の国」
 海の中にそびえる巨大な橋。これを渡れば、渡し賃を払わずに隣の大陸に行ける。旅人とモトラドはその橋を渡りながら、欄干に書かれた橋のできるいきさつを読んでいった。 
 橋を作った国の人達がなぜそこまで橋に固執したのかがわからない。何もかもを犠牲にし、最後には国民の骨を使ってまで完成させるなんて、人の所業じゃなくて昆虫の本能とか、そういう不気味さを感じる。

「塔の国」
 230年かけて塔を作り続けている国では、ちょうどキノ達が訪れた時に塔が崩壊した。人々は自分達が生きている時代に塔が壊れたことを喜んで、次は300年崩れないものを目指して建てると言う。
 塔を作り続ける国に嫌気がさした一人の男が、自分を国から連れ出せとキノを脅そうとした。キノが塔を建てるのが嫌ならレンガに彫刻を彫る人になればいいと提案すると、彼は嬉しそうにそれに賛同した。
 やっぱり自分が生まれ育った環境には、良くも悪くも気付かないうちにがんじがらめにされてるってことかな。

エピローグ「紅い海の真ん中で」
 訪れた国が廃墟と化しており、キノとエルメスはその国を立ち去った。大きな丘の頂上で紅い花が咲き乱れる中、キノはエルメスを倒して自分も仰向けに倒れ込み、歌い始める。そのままプロローグに続いて、歌い終わったキノにエルメスが起こしてくれるように頼む。

 この巻は結構好きな話が多かった。特に好きなのは「仕事をしなくていい国」「分かれている国」かな。段々このシリーズが本当に面白く感じてきた。手塚治虫っぽさを感じてきた、と言うと言い過ぎかな?そういう多文化と淡々と流れる時間のようなものを感じたんだけど。
 今回からあとがきが変だった。全く違うストーリーで制作秘話を語るという・・・。全く違うストーリーというか、ジャンルもテンションも別物過ぎて、一体何のために?みたいな。まあ、お遊びみたいなもんなんだろうけど。何これ?みたいな、嫌じゃないけど微妙な気分がした。
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