元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
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『赤朽葉家の伝説』  桜庭 一樹  
2009-05-16 Sat 00:01
赤朽葉家の伝説赤朽葉家の伝説
桜庭 一樹

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 子供の頃に“辺境の人”から紅緑村に置いていかれ、多田夫妻に育てられた祖母の万葉。彼女には時々、人の未来が視えた。村一番の名家であり、製鉄所を営む赤朽葉家の夫人・タツに請われて赤朽葉家の息子・曜司のもとに嫁いだ万葉は、「赤朽葉家の千里眼奥様」と言われて大切にされる。その万葉は4人の子供を生みそれぞれ、泪、毛毬、鞄、孤独と名付けられた。
 万葉と曜司の長女で、美しくも気性の荒い毛毬はレディースの頭を張っていた。親友の死に取り憑かれたまま中国地方を制覇してから引退したが、高校卒業後は引退してマンガ家になる。人気絶頂のマンガ家として自分の半生を題材にしたマンガを描く中、兄の泪が不慮の死を遂げたために彼女が婿養子を取ることになった。週刊連載に追われながら生きた毛毬は最終話を描きあげた直後、「わたし」が9歳の時に死んだ。
 毛毬の一人娘「わたし」こと瞳子は家族の他に、祖母の友人・みどりや、毛毬の替え玉・アイラ、母のかつての担当編集者・蘇峰と共に暮らし、母や祖母の昔の話を聞きながら成長し、ユタカと付き合っている。祖母・万葉が死ぬ直前に残した「わしはむかし、人を一人、殺したんよ。だれも、知らないけど」という言葉が気になり、一体誰を殺したのかを調べることにした。

 第一部から第三部まで製鉄所を通して語られる無骨な時代の流れと、どことなく浮世離れした赤朽葉家の人々のコントラストが不思議ときれいな物語だった。万葉の時代は昭和の中期だけど、鳥取を舞台にしているためかもっと昔に感じる。都心は近代化しつつも、田舎はこんな風に神話が息づく時代だったんだろうか。サンカに置いていかれた万葉の不思議な雰囲気がとても神秘的だ。
 毛毬の時代は昭和後期。「懐かしの~」系のTVで見るような世界に、猛女である毛毬に視点を置きながらも変わらず存在している万葉の姿が美しい。時代背景的にも小気味良い語り口調で毛毬の青春時代が語られている。しかし瞳子は、毛毬が初めて描いたマンガには、毛毬には可視できなかった異母妹・百夜そっくりな女を登場させていたことを知っている。本当は見えていたという瞳子の推察は、正統派不良のイメージだった毛毬の固くて暗い意志が見えてちょっとぞっとさせられる。
 瞳子の時代は「ニート」という言葉も出てきていることから完全に現代を感じさせられる。ここにきて突然ミステリー要素が入ってきて、万葉が殺したのは誰か?それを調べる瞳子という具合になるけど、そこはちょっと流れにそぐわない感じがしたかな。ミステリーの解答は実に万葉らしかったんだけど、もうちょっと自然に織り込んで欲しかった。
 面白い小説というより美しい文学。色調表現が終始、物語の幻想的なイメージに拍車を掛けていた。
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