元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『夢の守り人』  上橋 菜穂子
2009-05-04 Mon 00:19
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 バルザはガルシンバ<奴隷狩人>から助けた歌い手の青年・ユグノがリー・トゥ・ルエン<木霊の想い人>だと知って、タンダに合わせるために一緒に連れていくことにした。
 一方、娘のカヤが眠りから覚めないと長兄から相談されたタンダ。病気や呪いではなく<魂抜け>だと診断し、師匠のトロガイに相談した。トロガイは星読博士のシュガから、新ヨゴ皇国の一ノ妃も眠り続けているという話を聞いており、<ナユグ>に<花の夜>が訪れているらしいと判断した。
 トロガイは昔、<花>の宿主の魂の母になったことがあった。<花番>との間に生まれた息子は<花>の成長を助け、<花>が満開になったら受粉してくれる<夢>を誘う。たくさんの<夢>たちに花房に宿って夢を見てもらい<花>は種を実らせ、その種が発芽した時にまた新しい世界が生まれるのだそうだ。
 カヤを診たトロガイは何もせずに帰ったが、タンダは1人で<魂呼ばい>をすることにした。しかし術に失敗し、<花番>に体を乗っ取られてしまう。
 また<ヨゴノ宮>では、チャグムは教育係のシュガからトロガイと会っていることを聞かされた。1年半前に自分を助けてくれたバルザ、タンダ、トロガイをひどく懐かしく思い、帝になりたくないと思ったチャグムもまた、眠ったまま目覚めなくなってしまった。

 トロガイの若い頃の話があったこと、チャグムが再登場したことは、このシリーズに感銘を受けた者として非常に嬉しい。でもちょっと今回の話は狭い範囲に詰め込み過ぎかなぁ。ユグノの歌に誘われて<夢>を見続ける人の中にカヤに一ノ妃にチャグムがいるなんて、なかなかの密度。将来への空しさと旅の歌読みへの恋心を抱くカヤ程度の人が<夢>から覚めないんだったら、同じような状態になる人がもっと多くても―つまり流行病みたいになっててもいいんじゃないかと思うし。そのユグノの魂の母親がトロガイで、追われているユグノをたまたま助けたのがバルザで・・・って偶然すぎかと思う。
 <花番>を乗っ取ったのが息子を亡くした一ノ妃だとか、それだけで乗っ取られるような脆弱な存在なのかと疑問。元々心に何かを抱えた人が<夢>に誘われやすいようにできているんなら、<花番>がそんなに簡単に取り込まれちゃだめじゃないか。もちろんただの息子ではなく、ゆくゆくは帝になる身分だった第一皇子。子供を亡くすと同時に与えられるはずだった地位まで無くなってしまうというのは、普通の民草には経験し得ない感情ではある。それを考えても、ちょっと弱いかな~と。最終的にはトロガイにあっさり説得されて<夢>から覚めるし。もっとドロドロとした私利私欲にまみれた人だったらもうちょっと納得できたかもしれない。トロガイやタンダみたいに、呪術師の素質がある人だったとかでもいい。何かもうちょっと・・・という気がする。
 そもそも1巻、2巻が素晴らしすぎたからこう思っちゃうんだろうな。普通の児童ファンタジーなら“児童向けだし、こんなもんか”と思ってたに違いない。そういう点で言うと、十分面白いけど1、2巻に比べるとちょっと劣るかな。
 とはいえ、バルザは相変わらずかっこいいし、運命を受け入れざるを得ないチャグムの弱さも強さも描ききっているところはさすが。また、バルザがタンダをいかに大切に想っているかが伝わってきて、タンダが操られていることが切なかった。タンダはバルザに恋愛感情を抱いてるようだけど、バルザの方の感情は明確にはされない。けど、タンダがバルザの心の拠り所になっていることだけは痛いほどわかった。

 ところで。このシリーズはすごく面白いんだけど、内容を上手くまとめるのに苦労するんだよなぁ。色んな想いが交錯してて、それも備忘録に収めておきたいと思うと結構大変。もっとまとめ上手になりたいと思う。
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