元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『ラッシュライフ』  伊坂 幸太郎
2009-02-28 Sat 16:24
ラッシュライフ (新潮ミステリー倶楽部)ラッシュライフ (新潮ミステリー倶楽部)
伊坂 幸太郎

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 「金で買えないものはない」がモットーで、ビルのオーナーであり画商でもある戸田と、彼と共に仙台に向かう画家の志奈子。ポリシーに従って仕事をする、ちょっと変わった一匹狼の泥棒・黒澤。高橋を神だと崇める河原崎は、幹部の塚本に高橋を殺して解体しようと持ちかけられた。不倫関係にあるカウンセラーの京子とサッカー選手の青山はお互いの配偶者を殺そうと画策していたが、突然京子の夫の方から離婚を切り出される。豊田はリストラに遭い、家族にも去られ、再就職先を探すも40社連続で不採用となっていた。
 
 場面展開が多すぎて、最初はついていけなくてやや混乱する。とはいえフィクションである以上バラバラだった話がひとつにまとまるのはよくある手法で、いつかどこかで繋がるだろうと気にせずに読み進めていった。
 けど、よくある手法とか思ったのはとんだ大間違い。風景なんかが少しずつリンクしていたから何の疑問も抱かずに読んでたけど、時間軸まで操られていたことに気付かされるのはわりと後になってからだった。え?あれはここに繋がってたの?これはそうなってたの?というシーンがゴロゴロころがってている。リンクアイテムのひとつに「エッシャー展」があったけど、物語自体がエッシャーのだまし絵のようだった。進んでると思ったのに違う時間軸に乗せられてて、少し前に読んだシーンに引き戻される。
 それぞれがぶつかる出来事も、何とも奇妙だ。黒沢は盗みに入ったマンションの一室で大学時代の友人とばったり再会し、語り合う。河原崎は塚本に言われるがまま、解体されていく神・高橋の死体をスケッチしていく。車で人を撥ねて死なせてしまった京子と青山はその死体をトランクに積み込むが、死体は2度も勝手に落ちたうえに気が付くとバラバラになっている。豊田は女から鋏を向けられた犬を助けて共に行動しているうちに、拳銃を手に入れて郵便局に強盗に入った。
 彼らそれぞれに起こる降ってわいたような奇妙な出来事も、時間軸トリックの種が明かされると全てが必然だったと思わされる。この物語作りのセンスの良さは何なんだ。伊坂さんがデビューしてから2作目の作品みたいだけど、この頃から大物になる兆しがキラッキラに輝きまくってるじゃないか。
 『オーデュボンの祈り』の伊藤さんのことが話題に上がったりして、島を出てからそんな所でそんなことしてたのか~とちょっと嬉しくなる。しかしその経験ゆえに、やっぱ何だか変人扱いなんだな。
別窓 | [あ行の作家]伊坂 幸太郎 | コメント:0 | トラックバック:0 |
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