元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『別冊図書館戦争2』  有川 浩
2009-02-13 Fri 00:35
別冊 図書館戦争〈2〉別冊 図書館戦争〈2〉
有川 浩

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 『別冊図書館戦争1』の続編。

「もしもタイムマシンがあったら」
 タイムマシンがあったらいつに戻りたいか?そんな話で盛り上がる堂上班で、ふと郁が緒方副隊長に話を振った。元メディア良化委員の隊員という異例の経歴を持つ彼が、戻りたいと考える大学時代の回想。
 大学時代、同級生の佳代と付き合い始めた緒方。卒業後は親の希望通り公務員となったが、反感を買われやすいメディア良化委員会への配属される。配属先を周囲に言えないまま過ごしていた緒方は、加代子が小説家を目指していたことを知った。デビュー作が乗るという雑誌は、2日後に検閲の対象となっていた。
 なんかさー、独自の世界について書けば書くほどリアリティのなさが露呈していく作者っていうのも珍しいよなぁ。良化委員会は国家2種を受けた人から配属されるらしいけど、思想と体力が必要な課がそんなんでいいのか!?とまずツッコミ。自衛隊のように、独自に募集・採用しないとあっという間に弱体化だろう。それからこの検閲。中国ですか?みたいな。
 このシリーズへのレビューをネットでいくつか読んで、メディア良化法がいつの間にかできてたって設定を「日本ならあり得そう」とか書いてる人が結構いて驚いた。私は日本だからこそあり得ないと思ったんだが。日本人は争いを嫌う。過去の戦争からか、海外の内紛にまで心を痛めるような人種だ。このシリーズの世界では同じ人種でドンパチやって怪我人も出るし、過去には死者も出たという。これはもう、日本人なら赤の他人なのにデモやら座り込みをするレベルだと思う。
 
「昔の話を聞かせて」
 郁の長所でもあり短所でもあるウエイトの軽さをからかった堂上は彼女を傷つけたお詫びにと、乞われるがままに昔の話をする。郁に昔の自分を重ねる堂上が、過去の失敗や小牧とのことが浮かび上がる。
 郁の戦闘能力で標準体重ないってどんな魔法使った戦闘してんだよ、とこの話でもツッコミ。郁は170センチだっけ?これまでの戦闘での足腰の強さ、短距離走をやってたという過去、この本の4話目で男の部下を右フックで吹っ飛ばすシーンがあることを考えると、少なくとも平均のウエイトないと無理でしょう。筋肉って脂肪より重いうえに、郁は女。見た目より重いっていうのがリアルな話だ。
 4話目で郁が殴った相手は防衛部とやらに配属されてる男。アッパー狙って沈ませるんならともかく、フックで吹っ飛ばしたんなら技を出した方のウエイトも重要。短距離走も、ある程度の体重がないと風に煽られてスピードが出ない競技じゃないっけ?
 ひどい運動音痴だけどスポーツ観戦好きって程度の私がこの程度わかるんだから、有川さんってよっぽど・・・。もしくは、どうせわかんないだろうと思ってこんな魔法使い的強さで郁を描いたのか?
 まあツッコミは置いといて。堂上は今のキャラがいいんであって、新人の頃のキャラはイマイチかな。出来る男は出来るイメージのままでいて欲しかったのは私の勝手なんだけど。
 ところで実際図書館で働いてると、本好きな男って少ない上にほとんどが地味極まりない。でもこの世界の図書館司書は自ら選んで司書という職業に就いてる、堂々たる男子が大勢いることには軽く驚く。実際問題、図書館司書に出会いってあんまりないっすよ。マジで。

「背中合わせの二人」(1)
 柴崎は水島という同期と同室になった。三正である柴崎との上下関係を頑なに貫こうとする彼女の態度にげんなりさせられつつも上手く付き合おうとする。
 その柴崎は、奥村という利用者からストーキングをされている。利用者としての立場を利用した巧妙なストーカーっぷりに、一線を引きながらも相手をしていた。その奥村が調子に乗って迫ったところを手塚に助けられ、それ以来彼氏のふりをしてもらうことにする。ところが奥村は作戦を変え、柴崎が家に行かざるを得ない状況を作り出してきた。
 この話も何だかなぁ。ご都合主義だなぁ。そもそも柴崎って、頭いいって設定でしょ?その割には著者が描ききれてないっていうのは置いといて、類いまれなき頭脳持ってんじゃなかったっけ?こんな奴に隙見せる所がまずご都合。それから、柴崎が家を一人で訪問せざるを得ない状況っていうのもおかしい。個々の状況に応じたサービスとして家に行かせるのはまあ、図書館によるからいいだろう。だけど一人で行かないといけない理由が皆無。「一人」にこだわって図書を返却してくれないんだったら、窃盗として訴えていいんですけど?そこのとこを避けて書くのは卑怯だよ。

「背中合わせの二人」(2)
 柴崎のヌードコラージュに、柴崎自身の正確なスリーサイズとブラのカップ数まで記された写真が男子下士官の間で出回っていた。郁たちは柴崎を守りつつ警察にも相談するが、犯人はなかなか捕まらない。さらに今度はアダルト系出会いサイトに柴崎の名前と携帯番号が登録され、事態は深刻化する。
 誰からかわからない悪意をあからさまに突きつけられた柴崎。男子下士官達が柴崎のコラ写真を見せ合っていたことに激怒する郁。柴崎を心配しつつ支えようとする手塚。堂上も小牧も当然協力する。やっと面白い話になってきたけど、楽しむには苦々しいネタだなぁ。
 その後何者かに攫われた柴崎を車で追おうとした手塚に、柴崎と同室の水島が一緒に行きたいと言ってきた所で、この話は(3)に続く。

「背中合わせの二人」(3)
 手塚は柴崎に、GPS発信機を仕込んだお守りを渡していた。それを頼りに柴崎の居所へ向かう手塚は、柴崎の悪口ばかり言う水島に辟易させられながらも運転を続ける。水島は柴崎の気遣いを悪意ある受け止め方しかできなかったような女だった。
 柴崎はアパートの一室で手足を縛られ、少しずつ肌が露出していくように写真を撮り続けられていく。手塚が水島に苛立って車から降りさせたため、一連の事件の共犯である坂上に連絡が行ってしまった。その頃には郁達は水島と坂上が犯人だと突き止めており、寮に帰った水島はそのまま逮捕された。手塚は堂上から知らされた坂上の住所ではなく、発信機が表示させた場所に向かった。
 図書館とか表現の自由とか、そういうの関係ない話だとこうも楽しめるのか、有川さんは。犯人の男や女が本当に気持ち悪かった。手塚を間に合わせるために坂上を“自分をじらして楽しむMタイプ”で描いてるのにはわかってるのに、ギャーッ手塚早くっ!とか思っちゃったよ。
 そして、無事2人がくっついて良かった。あとがきによると、柴崎と手塚の結婚が決定した辺りで物語を終了する予定だったらしい。しかしあまりにも後味が悪いと旦那さんから言われて結婚式のシーンを追加したとか。確かに。大きな不幸の後には大きな幸せがあると、爽やかな気分で本を閉じれるよね。

 この本では郁はずっと脇役だった。その代り、緒方、堂上、柴崎が主役を張る。こうなると、郁がいかに主人公向きの性格だったかが良くわかるな。郁が張り切ってた頃ほどの面白さはない。郁が主人公だった時では、穴ぽこが多くて不満に思う話と面白い話が同等あった。しかしこの本はひどい。前半2話の面白くなさが、シリーズ全体を通してピカ一だと思う。今回ばっかりは読むのやめようかと何度も思った。やっぱ1巻目が一番面白かったなぁ。
 私は人生で、読みかけて途中で止めた本は一冊もない。どんな本でも、どんなに時間かけてでも読み始めた以上は完読する。これはしょうもないこだわりだ。たまにこうやって自分を縛って自分で「あーつまらなかった」とか言う。我ながらアホだな。しかしこのシリーズは自分が就いてる職業。都合で多少遅れつつも後回しせずに読んだのは、まあ半ば義務かな。
 これをもって、このシリーズは終わりらしい。書けば書くほどつまらなく思えていったシリーズだけど、そう思うのは私だけみたいだ。ていうか、つまらないと思った人達はそれ以上読まなかったんだろうな。実際それが普通のリアクションだと思うし。 
 まあ、やっとシリーズ終わってくれて勝手に自分で背負ってた肩の荷を下ろせたって感じ。しかも最後は円満に終わって、良かった良かった。柴崎も最後には意地張るのやめて良かった。こうやって幸せに読み終えることができるっていうのは、アンチ読者でも嬉しく思う。
別窓 | [あ行の作家]有川 浩 | コメント:4 | トラックバック:0 |
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この記事のコメント
Re: タイトルなし
コメントの管理が全然できていなくて、申し訳ありません。
あまりにも期間が空いたのでご覧いただけないかもしれませんが・・・。

どの辺が無責任とお感じになられたのか、いまいちピンときません。〇〇図書館と名乗ってるならともかく、元の職業を書いているだけなら全くもって一個人の意見だと思うのですが。
例えば情報番組ではコメンテーターとして、元政治家、元教育者、元刑事、元自衛隊など様々な「元」専門家が意見を述べています。それの物凄ーーーくショボいバージョンだと思っていただければ幸いです。
2017-03-17 Fri 14:40 | URL | どっぐすきっぷす #-[ 内容変更] | top↑
この記事を読み、図書館戦争シリーズの中に出てくる砂川が作った一刀両断レビューを思い出しました。
元司書さんと名乗るならば、責任を持って記事を書いたほうがいいかと。
2016-12-13 Tue 17:42 | URL | #-[ 内容変更] | top↑
コメントありがとうございます。長い間放置していてすみません。

大学を卒業して以来ずっと司書をしていたので、本作の司書の仕事に関するシーンがどうも・・・。
はあ?こんな軽く考えられてるのって思う所もあり、コメ主さんのお言葉を借りると「独善と偏見と妄想」にムカムカして読んだんですよ。
なのでアンチです。
私もアニメは少し見ました。原作以上にひどかった・・・。
数話で止めました。

とはいえこの作家さんは一定の人気はあるようです。
なんだかなー。
2010-12-11 Sat 00:19 | URL | 管理人 #-[ 内容変更] | top↑
惹かれてレビューを覗きに参りました。
初めはアニメのキャスト決定がきっかけでこの原作を読み始めました。
最近のラノベの氾濫の割にまともなものが見つからず、その中に久々に面白そうだ!と読み応えのある本作を見つけたものの…
ラノベに作者の独善と偏見と妄想ぶりに段々辟易させられるのは付き物ですが、流石にこれは酷かった。
ミリタリーや(SFならぬ思想フィクション)TFぶってる中に、恋愛がきらりと光る。それが読者の感情移入を揺さぶりを惹きつけてたのに…

作者が読者に期待や妄想や想像の余地を残してこそ、余韻が残り、作者自体に期待する様になる、といった話をちらほら聞きますが…
だからこそ作者が妄想を炸裂しきったものはなかなか二次創作の様な派生作品が生まれにくい、とも聞きます。

ミリタリーや異色な思想空想の中に程良く恋愛。が。
かろうじて戦闘、程良く薄い独自な極論思想、趣旨がずれて全開な恋愛…
作家の下調べって重要ですよね。
2010-07-24 Sat 09:48 | URL | 同上 #-[ 内容変更] | top↑
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