元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
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『楽園 上』『楽園 下』  宮部 みゆき
2009-01-25 Sun 20:27
楽園〈上〉楽園〈上〉
宮部 みゆき

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楽園 下楽園 下
宮部 みゆき

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 9年前の連続女性誘拐殺人事件のショックから立ち直りつつある前畑滋子を訪ねて、萩谷敏子という中年の女性が訪ねて来た。敏子は、12歳で死んだ息子・等にはサイコメトラーの力があったのではないか、その真偽を調べて欲しいと滋子に頼む。
 16年前に両親に殺されて埋められた少女が発見されるという事件を、等は遺体発見より前に絵に描いていたという。何かの偶然ではないかと思いつつ見せられたノートを捲っていた滋子は、描かれた“山荘”の絵を見てこの件を引き受ける決意をする。それは“山荘”事件から目を背けてきた自分自身との闘いでもあった。
 等はただ単に印象に残った風景を描いただけなのではないかと考えた滋子は、その説を裏付けるための調査をする。そのうちに16年前の事件が起こった家で唯一無関係だった次女・誠子と出会い、彼女から事件の真相を調べて欲しいと依頼された。滋子は既に時効となった殺人事件に足を踏み入れることになっていく。

 『模倣犯』を読んだのは何年前だったろうか。不良司書の私は宮部みゆき初読で(今でもあんまり読んでないけど)、何て凄い物書く人なんだ!と感動したものだ。そう書き込んでないのに説得力ある人物描写とか、関係ない事件の被害者が絡んでるのに不自然じゃない流れがあったりとか、場面も時間も飛ぶのに混乱させられることなく読めた文章とか。どう持ってくるのかと思った結末にも驚いた。
 その事件で最後に大活躍した前畑滋子が登場する小説。『模倣犯』と共通している人物はのは夫の昭二と、秋津刑事くらい。網川浩一の現状は一審の死刑判決を上告したという程度しか書かれておらず、真一君や有馬さんにはノータッチだった。彼らがどうしてるか知りたかった気もするけど、書かれて興ざめするよりはいいかと納得する。
 さて『楽園』。普通にリアルな話だと思って読み始めたら、等の能力が認めざるを得ないことになった展開に驚いた。それと、なんてたくさんの不幸が転がってるんだろうと思う。両親に殺されて埋められた少女・土井崎茜、低学年にいたずらをする小学校教師、妻子ある人と職場恋愛で苦しむ美術教師など。それらが意味もわからず見えてしまうことが不憫だ。また、祖母に縛られた人生を送った挙句に子供を孕んだと同時に放り出されて、それでも誰も恨まず懸命に生き続ける敏子の人生も重苦しい。
 途中から等の能力よりも長女殺しの方に重点が移っていったのにはちょっと肩透かしを食らった感じがした。前半であれだけ等の能力や敏子の愚直さを描いていたのに、それを「ちょっと置いといて」みたいになってしまっている。
 しかも土井崎家について調べていく滋子の閃きは的中しまくりで、大した驚きもないまま茜の元彼が犯した事件によって幕を閉じる。面白くないことはないんだけど、衝撃の『模倣犯』の世界の続きと思うと物足りない。
 それでも土井崎向子の語る真相には考えさせられた。普通に育てたつもりの子供が反抗的なだけでなく、夜遊びを繰り返して遂には人を殺したことを何とも思わない人間に育ってしまう。『模倣犯』の栗橋浩美や網川浩一には複雑な過去があったけど、この作品に出てくるモンスターな若者達にはそれがない。それは最近のニュースで見る若者にも通じるものがあって、無関係面していられない気がする。もし自分の子供が・・・とか、考えると恐ろしい。
 誰しも多かれ少なかれ重い物を抱えた人生が描かれているけど、ラストに救いがあって良かった。茜が求めた「楽園」の先には両親からの絞殺があった。呆れるほどに真っ直ぐ生きた敏子には、考えもしなかった「楽園」が待っていた。何か示唆的だと感じるのは深読みしすぎかもしれないけど。
 一人ひとりの人物描写が丁寧なんだけど不幸な人ばかりスポットが当たるから暗欝としてたけど、このエンディングで心が晴れた。
 ただ、滋子が主人公なぶん、どうしても比べてしまう。ギリギリまで引っ張って最後にパッと見事に畳み込んだ『模倣犯』と比べると、やっぱちょっと物足りないかなぁ。あの衝撃はなかなか忘れられないから、残念だ。
別窓 | [ま行の作家]宮部 みゆき | コメント:0 | トラックバック:0 |
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