元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『チーム・バチスタの栄光』  海堂 尊
2008-12-20 Sat 21:33
チーム・バチスタの栄光チーム・バチスタの栄光
海堂 尊

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 東城大学医学部病院の誇る心臓手術左心室縮小形成術「バスチタ手術」は、アメリカから招聘した桐生臓器制御外科助教授を中心に構築された「チーム・バスチタ」によって非常に高い成功率を誇っていた。ところが立て続けに3件の術死が起こる。
 不定愁訴外来の「俺」こと田口公平は、この件についての内部調査を院長から依頼された。全くの専門外であり院内の出世争いから早々に身を引いていた「俺」は戸惑ったが、リスクマネージャー委員会の検討事案に該当するかの予備調査をしてほしいとの頼みを引き受ける。
 次の手術は三日後。アフリカの少年ゲリラ兵へのバチスタ手術はメディアから注目を浴びているだけでなく、失敗は国際問題に発展するかもしれないというプレッシャーも帯びていた。
 たまたま3件の失敗が起こったのか、医療事故なのか、それとも何者かの故意によるのか。この件を引き受けた田口は、「チーム・バチスタ」のスタッフ全員の聞き取り調査から始める。

 2005年に『チーム・バチスタの崩壊』で「このミステリーがすごい!」大賞を受賞。賞自体に歴史が浅いこと、賞のネーミングセンスが胡散臭いこと、医療問題を扱うと聞いて何だか敬遠していたこと、何やかんやで全く読む気はなかった。でも、映画化、ドラマ化とあまりにも話題だったことと、私が好きな討論番組で海堂尊さんがゲストとして来てたことがあって、ようやく図書館で予約を入れた。人気すぎて、何か月待ったかわからない・・・。
 読み始めても、用語が難しいからゆっくりとしか読めなくて難儀した。漢字で書かれる医学用語は、日本人ならその字面を見れば何を意味してるかわかる。でも日常用語とはかけ離れてるんで、ひとつひとつを理解しつつ読もうとしたら進まないことこの上ない。飛ばし読みが苦手なんで、じりじりしながら読んでった。
 3件の手術失敗は、たまたま3件続いただけなのか、医療事故なのか、事件なのか。素人が読んでも見当がつかない。だからこの本がどういう方向に向かっていくのか全くわからないまま、4件目の謎の術死が起こっても“これ、ちゃんと面白く終わるのかな?”と雑念に囚われまくりながら読む。
 でもその後登場した外部からの調査者、厚生労働省の役人「ロジカルモンスター」の白鳥が来てからようやく事件として進んでいく方向が決まって安心して読めるようになった。ロジカルモンスターのロジカルがあんまりロジカルじゃないのは置いといて、人を追い込みながら尋問していくやり方が結構面白い。パッシヴ・フェーズだのアクティブ・フェーズだの、その他大量のカタカナ用語は正直その場限りの理解だったけれども。
 主人公・田口の一人称で語られているのに、彼の影は薄い。濃い他の登場人物達の中では平凡な人物なのかと勘違いしそうになるけど、時折挟まれる回想シーンでは味わいある人物のように描かれたりする。そんな彼による冷静な思考が結構面白い。
 でも最後は、犯人はしっかりと不幸になって欲しかったな。あまり重い罪には問われないような終わり方がモヤッとする。殺人を題材に扱うんなら、ちゃんと罰せられて欲しい。現実の医療事件が罪に問いにくい物が多いとしても、フィクション内くらいすっきりしたいじゃないか。でも事件後の病院側の対応はいい。高階院長の頭の良さに感心しつつ読み終えた。
 日本の医療問題は、恥ずかしながらこの本を読んで初めて気付いた。日本では子供の臓器移植は認められていない。そのために寄付金を募って渡米して手術を受ける話が美談としてメディアに取り上げられたりする。日本で子供の臓器移植ができないという問題を本気で取り上げるメディアがないこと。言われてみれば確かに変な国だな。焦点を絞ってあるだけで、医療って他にも多くの問題があるんだろうな。
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