元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
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『闇の守り人』  上橋 菜穂子
2008-09-22 Mon 11:51
闇の守り人 (偕成社ワンダーランド)闇の守り人 (偕成社ワンダーランド)
上橋 菜穂子

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 6歳の時に父が王位継承の陰謀に巻き込まれ、父の親友・ジグロに連れられて国外に逃げ出したバルザ。兄王を殺して王位についたログサムは国に残った父を殺し、逃亡したジグロとバルザにも追手を向けた。今はログサムも死に、ジグロも病気で死んでしまったために、陰謀を知っているのはバルザしかいない。
 今回バルザは心の傷と向かい合うために生れ故郷のカンバル王国に戻ることにした。国境の門からではなく25年前に逃亡した洞窟から国へ入ろうとしたバルザは、白磨石を取りに来ていた兄妹がヒョウル<闇の守り人>に襲われているところを助ける。実はバルザの甥と姪であった2人には自分に助けられたことは秘密にしておくようにと言っておいたが、兄妹はヒョウル<闇の守り人>から落ちたルイシャ<青光石>という稀少で高価な宝石を手に入れてしまったために父親に本当のことを話さざるを得なくなってしまう。
 一方叔母を訪ねたバルザは、ジグロが犯罪者として伝えられていることを知る。ログサムが王位を継承することを嫌って王位継承儀式に必要な金輪を盗んで逃亡し、追ってきたカンバル王国の武人達を次々に殺していったということになっていた。
 洞窟で助けた兄妹からバルザの話は父へ、士族長へと伝えられ、バルザはまた命を狙われることになる。ちょうどその時、<山の王>からカンバル王へ<ルイシャ贈りの儀式>が行われる合図が送られる。バルザは自分自身のため、ジグロのため、カッサのため、カンバル王国のために戦う。

 うおおおおお!深い!重い!でも面白い!すごい!ずっと気になってたシリーズだけど、1作目を超える面白さのこの2作目。何でもっと早く読まなかったんだろうか。
 読んでるだけのはずなのに、序盤で幼い頃にバルザが巻き込まれた陰謀に悔しくなり、中盤では再び動き始めたユグロによる陰謀に歯がゆくなり、終盤で<ルイシャ贈りの儀式>でのバルザやカッサの立ち振る舞いを手に汗握って応援してしまった。バルザと歳は変わらない、いい大人の私がこの始末。あ、今回のバルザより1歳年下だけどね。と、1歳差にこだわるのはおばさんの証拠だろうな。
 閑話休題。やっぱり上橋さんの作品はすごい。多少厚みがあるとはいえ、文字が大きくて余白の多い児童文学でこの内容の濃さ。これだけのことを表現し切っているなんて。バルザやジグロの人生、カンバル王国の風土や風俗、過去の陰謀と現代の陰謀など、どれも手を抜いてない。人間以外の種族の習俗や現世以外の世界が出てくるけど、それぞれが自分の役割を担って共存している様子も見事。物語に没頭し過ぎてバルザが危ない!と本気で思いこんでた時に我に返り、児童文学の主人公なんだからきっとどうにかなるはず!と汚れた大人的考えで自分を落ち着けたもんだ。
 子供騙し的なところは全くなくて、ユグロの善人ぶった悪人っぷりも見事。頭がいいし人望もあってバルザを簡単に窮地に追いやる。でも古くから受け継いできた儀式はそんなユグロの存在なんか遥かに凌駕する神秘の物で、平易な表現の活字だけでこんな神秘的な儀式を描いてあること自体が凄い。 
 特に印象的なのは<ルイシャ贈りの儀式>。ヒョウルになったジグロと<槍舞い>を舞うバルザに流れてくるジグロの感情が読んでて痛い。誰だったか忘れたけど、児童文学評論家かなにかの人が「本物は痛い」と書いていたのを読んだことがある。この『闇の守り人』はずっとちくちく痛かったけど、このシーンは痛くて痛くて息苦しい。本当に児童文学なのかと思うほどのストレートな憎しみが描かれていた。バルザがジグロやその他にも陰謀によって非業の死をとげた人達を弔えて良かった。
 最後のクールダウンがどこか寂しげだけど、タンダの所に帰るんだと思うとほっとする。上橋さんは多くの事は語らず、えらく多くの事を感じさせてくれる人だ。くどくど表現せず、数行で心に響いてい来る。次を読むのが楽しみだ。
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