元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
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『まほろ駅多田便利軒』  三浦 しをん
2006-09-15 Fri 18:58
まほろ駅前多田便利軒まほろ駅前多田便利軒
三浦 しをん

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 まほろ市の駅前で何でも屋「多田便利軒」を営む多田啓介は、高校時代の同級生・行天春彦と再会した。美形で成績はいいが孤高の変人で、高校時代に発した言葉は右手小指が断ち切られた時に「痛い」と言った一言だけ。
 しかし再会した行天はよく喋る男になっており、真冬なのに素足にサンダル姿で一晩泊めて欲しいと言う。お人好しだからか過去の後ろめたさからか一晩泊めることにした多田だったが、行天は結局居座ってしまった。2人して便利屋に転がり込むささやかな依頼を引き受けたり、関わり合いたくない事件に巻き込まれたりしていく。

 三浦しをんって前からいた気はするけど、最近見かける頻度が上がってきたな~って時に直木賞を受賞したんで読んでみた。司書として芥川賞・直木賞受賞作品くらいちゃんと読まないといけないかも・・・と去年辺りから思い始めてることだし。今更思うことも、今までちゃんと読んでないことも問題だけど、なによりこれまで新規開拓に全く興味なかったのが何より問題なのかもしれない。いや、最近は頑張ってますよ、本当。
 って私事はさておき。読み始めはハズレかと思ったけど、じわじわと面白さが盛り上がってきた。最初は、多田便利軒に依頼されることを解決しつつ人の温かみに触れるとかいうありきたりだけど盛り上がりに欠けるサクサク読める軽い話かと思った。でもちょっと読み進めると意外に深い。軽そうで重い。
 多田にしても行天にしても、少しずつじわじわと2人のことがわかっていく感じが面白かった。人物を語るに当たって結構大切な事件でも、そう簡単には教えてもらえない。行天の小指切断事件も、多田のかつての結婚生活・・・前妻の浮気や自分の子と信じたい赤ちゃんのこと、ハイシーやルルが意外としっかりしていることもなかなか教えてもらえない。多田便利軒への依頼も季節もどんどん過ぎて、ぽつぽつと断片的に語られていく。だけど全然後出しって感じがしないのは、絶妙なタイミングで明かしてくれるからだろう。そうだったのか!だからあんなだったのか!と納得いく。だからあんなだったのか!も~三浦さんったら出し惜しみしちゃってさ、とは思うけど。
 基本的に多田目線の語りは軽快だけど、時々見え隠れする暗い過去。物語が進んでその過去を知り、多田が抱き続けてる感情を知り、もう一度始めから読むと全く違って見える。単純なヒューマンドラマには絶対見えない。多田はむさいおっさんには見えない。自分と同じ苦しみを抱えているという共通点を前妻に見出して暗い喜びを感じる多田に、ひたすら哀しい視線を向けて読んでしまう。行天の存在は彼を変えれてるだろうか。
 最後に多田が幸福を感じる終わり方で良かった。今後も2人はコンビで行くのかな?ほろ苦い余韻を少しと、いい余韻をたくさん残しながら読み終わって、いい気分で本を閉じれた。
 面白かったけど、ここで冷静になってみる。直木賞作品と考えるとちょっとエンタメに傾き過ぎてる気がする。大衆小説ではあるけど、うーん・・・。感情を振り回されるような面白さではなかったかな。文藝春秋から出してなかったら私の読み浅さを反省するところだけどね。
 それから描いているアングラは石田衣良の劣化版かな。目指す物が違うから比べちゃ悪いけど、似てるからこそ浅さが気になる。ハイシーやルル、星、ヤマシタなんかは、完全にデジャブ感じる。IWGPは好きなんで、読みやすく感じつつも何かデジャブ感が集中力を妨げた。
 とはいえ、何度も書くけどやっぱ面白かった。
別窓 | [ま行の作家]三浦 しをん | コメント:0 | トラックバック:0 |
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