元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『有頂天家族』  森見 登美彦
2008-05-31 Sat 23:48
有頂天家族有頂天家族
森見 登美彦

幻冬舎 2007-09-25
売り上げランキング : 15219
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


 京都の街には、人間、狸、天狗が住んでいる。由緒正しき狸の下鴨家4兄弟の三男・矢三郎を語り手に、老天狗が人間に恋をしたり、狸が人間に狸鍋にされたり、狸同士が政権争いをしたりという何かとドタバタした話。
 矢三郎は、落ちぶれて力のほとんどを失った天狗・赤玉先生のアパートに通って彼の世話をしている。赤玉先生はかつて人間の少女さらったが、彼女は赤玉先生によって立派な天狗・弁天となり赤玉先生の元を去っていた。しかし赤玉先生は弁天への恋心を捨てることができない。彼女への恋文を矢四郎へと預けることから話は始まる。
 その弁天は矢三郎の初恋の人であるが、彼女は7人の人間が集まる「金曜倶楽部」所属している。「金曜倶楽部」は毎年忘年会で狸鍋を食べることで狸達から恐れられており、下鴨家の4兄弟の父・総一郎も、この狸鍋で命を落とした。
 父が死んでから、父の弟、つまり下鴨4兄弟の叔父・夷川早雲が何かと因縁を付けてくるようになった。弁天は矢三郎のことを「食べちゃいたいほど好き」と言いつつ鍋の具材にと追いかけたり、気まぐれに助けたりする。下鴨家と夷川家の勢力争いは、最後には赤玉先生や弁天をも巻き込んでいく。

 桓武天皇の時代に狸がどーの天狗がこーのというもったいぶった始まりに、何の比喩的表現による前振りかと身構えながら読んだ。しかも、固い話系かと警戒しながら。しかしこれが比喩でも何でもないことにまず度肝を抜かれる。本当に狸とか天狗の話。狸は何にでも変身するし、天狗は神通力を持っている。時々擬音語・擬態語が利いた文章が爽快で、矢三郎の面白主義な性格と抜群の相乗効果を発揮している。狸や天狗のもったいぶった口調も妙にマッチしている。ものすごくワクワクしながら読み進んだ。狸かわいいし。
 個性豊かなキャラクターというのも、森見さんにかかると捻り方が半端ない。下鴨4兄弟は偉大な父・総一郎の気質を中途半端に受け継いで、長男・矢一郎は責任感を受け継いだものの器が小さく、二男・矢二郎は暢気な性格を受け継いで父の死で蛙に変身して以来元に戻る方法を忘れて文字通り「井の中の蛙」生活。主人公の三男・矢三郎は阿呆ぶりを受け継いで面白くあることが全て。四男・矢四郎は純真さだけを受け継ぐが、怯えると文字通り尻尾を出して変身が解けてしまう未熟者。そんな4匹を束ねる母狸は宝塚が大好きで、雷が大の苦手だ。引きこもりの二男を除く3兄弟は、雷が鳴ると何を差し置いても母の元に駆け付ける。
 犬猿の仲である夷川家は、しょっちゅう喧嘩をふっかけてくる長男・二男の金閣、銀閣は四字熟語大好き。しかし使い方を間違ってたり、「樋口一葉」を四字熟語だと思い込んでたりする。その2匹の妹・海星は矢三郎の元許嫁だが、姿の見えないところからしょっちゅう罵詈雑言を浴びせてくる。しかしいざという時には矢三郎を助けてくれる。これが噂の、かわいいツンデレか。
 読み始めは「は?狸?『平成狸合戦ぽんぽこ』?天狗も?えっと・・・小説と見せかけて童話なの?」って感じでかなり混乱した。けど、面白い。目をむくほど面白い。
 どんなに大変なシーンでも矢三郎のせいでいまいち緊迫感に欠けつつも、最後には否が応でもハラハラさせられる。しかしそんなシーンで狸は偽叡山電車に化けて大暴走。もう下鴨家の家族愛には、たはは(泣笑)って感じ。
 『夜は短し歩けよ乙女』が話題になったけど、近隣の図書館は利用者が多くて予約してもなかなか回ってこない。だいぶ後に予約したこの本が先に来て渋々こっちから読んだんだけど、読む前の私の渋々っぷりを謝らなければならない。森見さんすみません、幻冬舎さんすみません。
 アマゾン書評見てると、『夜は短し~』の方が面白いって人が結構いる。それは楽しみすぎる。しかも『夜は短し~』で出てきたキャラが『有頂天~』にも出てきてたらしい。やっぱ『夜は短し~』から読みたかった!そういうの大好きなのに!
 巻末には第2弾の予告が。調べてみると、狸三部作になるとか。まーじでー。この本の語り部的に言うと「だが待て、しばし」というところか。「待つ待つ~♪」って気分。
 何か狸大好きになりそうだ。とりあえず、影の立役者「赤玉ポートワイン」でも買って飲むか。
別窓 | [ま行の作家]ま行その他の作家 | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<2008年5月に読んだ本 | よむよむ記 | 『さくら日和』  さくら ももこ>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック


| よむよむ記 |