元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『QED 鬼の城伝説』  高田 崇史
2008-05-10 Sat 18:06
QED 鬼の城伝説 (講談社ノベルス)QED 鬼の城伝説 (講談社ノベルス)
高田 崇史

講談社 2005-01-14
売り上げランキング : 209070
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 シリーズ9冊目。岡山県吉備津神社の占卜「鳴釜神事」は、その昔に大和朝廷によって退治された温羅(ウラ)の首が釜を唸らせて人の吉凶を告げる。一方、鬼野辺家に先祖代々伝わる大きな釜は、鳴ると当主が死ぬという噂があった。その噂を信じてなかった鬼野辺健爾だが、婚約者の妙見明日香に「後で蔵に来てごらん」と誘った直後、蔵の中で生首死体となって発見される。
 ジャーナリストをしている熊崎宛てに、この事件の投稿が来た。その事件を取材に行くという小松崎に、前から岡山で趣味の寺巡りをしたかったタタルが同行すると言い出し、ついでに棚旗奈々・沙織姉妹も誘って4人で岡山旅行をすることになった。タタルが急用で遅れるため、先に岡山入りした3人。少し観光した後に妙見明日香に会いに行った小松崎だったが、彼女の兄の妙見巧実も殺された。その後、鬼野辺家の二男の圭佑が自分が犯人だという遺書を残して自殺した。

 今回タタルが登場したのは物語の中盤過ぎ。そのために解説代役として、岡山行きの新幹線では沙織が岡山の鬼・温羅について調べてきたことを披露する。岡山に着いてからは小松崎に手紙を送った若い女性2人が詳しく勉強して開設するという設定。こういう女性たちって結構引くんですけどー。でも、それをやっちゃうのがこのシリーズ。人物像や会話や地の文の不自然さなんか気にしちゃいけない。
 タタルが合流してからは事件が急展開。圭佑の遺書は本物であること、手段、動機まで解明させる。同時に温羅伝説と桃太郎伝説の関係も考察する。殺人事件はいつも通りオマケみたいなもんだったんだけど、温羅伝説の方がかなり面白かった。
 このシリーズを読んでいていつも思うのは、この歴史に詳しかったらもっと楽しめるだろうなぁということ。私は場合によっては奈々より知識がないこともあり、よくわからないまま読み進むことが結構ある。しかし今回の話は桃太郎伝説。日本で一番有名な話と言っても過言ではない。だから今回の歴史考察は、かなり面白かった。
 このシリーズでここまで面白いと思ったのは、「ベイカー街の問題」以来だ。やっぱ取り上げられてるテーマの前知識がどれだけあるかって大きいもんなんだな。この本のタタルの説明だけで素人が理解できるほど上手くストーリーに溶け込んでないから、結局何となくってだけで読み流してるからすぐ忘れる。過去のシリーズ思い返してみても、どんな事件だったかとか歴史考察とかもう覚えてないし。2~3回読めば理解できるし記憶に残るのかもしれないけど、そこまで魅力を感じてるシリーズでもないしなぁ。まあ、機会があれば読み返そう。
 桃太郎伝説は、丑寅の方向が鬼門だから反対の方角である動物「戌」「酉」「申」を連れて鬼退治に、という説が一番一般的だと思う。私も、昔の人って方角で験を担ぐとか能天気だなぁという程度にしか思ってなかった。でもタタルは、思いっきり根底から覆してくれた。この説の信憑性を高いと思うのは、私が単純だから?
 このシリーズの「式の密室」辺りから毎回賤民の歴史に触れ、次の「竹取伝説」からは必ずタタラに触れる。日本の歴史ってそんなにタタラ場から土着民を追いだしてきて利益を奪い、彼らを「鬼」として忌み嫌う風習を作ってきたんだろうか?それともこのシリーズがやたらとそんな話を取り上げてるだけ?私にはよくわからないけど、根深さには驚かされる。
 これだけ取り上げてると、ふと『もののけ姫』を思い出した。あれって朝廷がタタラ場を奪おうとしてどんちゃかやる話だけど、シシ神が首飛んで大騒ぎになってアシタカとサンが首を返して終了という、うやむやな結末だ。でも歴史的に見て、エボシ達はは結局朝廷にタタラ場を奪われるんだろう。QEDシリーズを読み続けて、ふとそう考えた。舞台モデルは出雲だそうだから、エボシ達も土蜘蛛とか呼ばれるようになるんだろうなぁ・・・と関係ない所にまで思考が飛ぶ。
 最近、奈々はしっかりとタタルを意識してるし、沙織も小松崎も気付いてる。それとは別に、沙織と小松崎がえらく仲いいのが気になる。ダブルカップルになるのか?50歳の男性が書いてるミステリーで?いやまあ、著者の年齢性別は関係ないと言えばないんだけどね・・・。
別窓 | [た行の作家]高田 崇史 | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<『馬と少年―ナルニア国ものがたり5』  C.S.ルイス | よむよむ記 | 『ホームレス中学生』  田村 裕>>
この記事のコメント
コメントの投稿
 

管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック


| よむよむ記 |