元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
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『重力ピエロ』  伊坂 幸太郎
2008-04-23 Wed 00:46
重力ピエロ重力ピエロ
伊坂 幸太郎

新潮社 2003-04
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 弟の春から「兄貴の会社が放火に遭うかもしれない」という電話を受けた翌日、実際に会社が放火された。春は、放火現場の共通点に気付いたと言う。
 主人公の「私」と弟の春は2歳違いだけど、血は半分しか繋がっていない。春は、母親は連続婦女暴行犯に襲われた時に出来た子供だった。父親は産み育てることを即決し、我が子として育てている。現在、母親は他界し、父親は癌のために入院。「私」は遺伝子情報を扱う会社に勤めていて、春はグラフィティアートを消すことを仕事にしている。
 春が父の病室で、放火現場の近くには必ず同一人物によって描かれたと思われる英単語のグラフィティアートがあると話した。初めは面白半分に聞いていた父と、何となく聞いていた「私」だったが、2人とも段々と興味を持ち、それぞれ自分なりに調べていく。

 春はとても魅力的な外見をしていたけど、その出生から性的な物をとても嫌悪している。「私」は春を大切な家族だと思う気持ちと、母親を暴行した男を憎む気持ちの間を彷徨っている。その男を憎むと春の存在を否定することになるという矛盾が時々「私」の中に生まれていた。
 序盤で読み始めたことを後悔したくなるようなすごく重い設定と、どうにも微笑ましく仲のいい家族とその思い出。このアンバランスと言うかナイスバランスと言うか、どっちにも偏ってない按配がとてもいい。放火事件の話であり、遺伝子の話であり、家族の話であり、最強の話だった。
 わかりやすい伏線が多かったから、かなり最初の方で物語の全体が何となく想像ついた。伊坂さんも伏線隠してなかったし。犯人も最終目標も思った通りの結末だったんだけど、でも全然がっかり感がない。結末に至るまでの「私」、春、父親、母親の関係が微笑ましいし羨ましい。両親が春を産むという決意は誰にでもできることではない。兄と分け隔てなく育てるなんてなおさらだ。だから「私」と春の関係はとても良好で、読んでいて幸せな気分になれる。だけど春は暴行犯の子供で、この幸せな気分は暴行事件の結果で・・・と私までこの矛盾の中に放り込まれた。
 だけど最後は、多少すっきりした。矛盾は解決しないけど、私は春の行動を讃えたい。ていうか、面倒な手順なんか踏まずにジョーダンバットでも良かったんだけど。でも、春の性格だったらそれはなかったんだろうな。だから伊坂さんは春の性格をこういうふうに作ったんだろうし、春の性格がこうだったら、やっぱりこの結末で良かった。春も「私」も、少しでも気持が楽になっただろうか。
 伊坂さんは相変わらず会話シーンがいまいちで、会話文も地の文も微妙になるんだな。でも今回は話がすごく面白かったから、あんまり気にならなかった。『オーデュボンの祈り』の伊藤さんがちらりと出てきて、「私」とほんのちょっと関わっていったのも良かった。こういう風に他の作品のキャラが出るのって、わりと好き。
別窓 | [あ行の作家]伊坂 幸太郎 | コメント:0 | トラックバック:0 |
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