元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『出口のない海』  横山 秀夫
2008-03-17 Mon 16:28
出口のない海出口のない海
横山 秀夫

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 甲子園の優勝投手である並木はA大学に入学後、右ヒジの故障からかつてのような威力ある球を投げることができなくなっていた。リハビリも思うように成果を挙げない中、並木はキャッチャーの剛原に「魔球をつくる」と宣言する。1941年12月8日。日本が真珠湾を攻撃して太平洋戦争が始まった日だった。
 しかし軍国色が高まり野球どころではない時代に突入し、徴兵猶予が停止され学徒出陣が始まる。並木は野球への情熱と美奈子への恋心を抱いたまま、海兵団に入団した。乙種で徴兵された並木が過酷な訓練に絶えた果てにあったのは、人間魚雷の「回天」だった。

 私はこの作家さんが大好きだ。この本ではどんな事件が展開されるのかと楽しみにしていたら、読んでみると戦争物だったんでちょっと驚いた。しかしまあそれはそれで、と展開を楽しみにして読み進む。
 未来ある若者が戦争に行き、厳しい訓練を乗り越え、回天の存在を知ってから死への覚悟と生への執着とで葛藤するんだけど、何かいまいち。シーンごとの描き方はいつも通り上手いんだけどドラマチックすぎたりして、戦争物として薄いというかありきたりというか。上官からの理不尽な暴力は書いてあるけど中途半端だし、訓練の厳しさもあまり伝わってこないし、戦争の悲惨さが伝わってこない。主人公の並木は学生から訓練兵になってそのまま特攻隊員としての特殊訓練という道を辿り、実際に戦地を見たわけじゃないからだろうか。でも考えてみれば、横山さんは戦後生まれだからこの程度に収めるのが無難なのかもしれない。とはいえ人物設定に横山さんの持ち味が出てないのはやっぱり残念だ。
 物語自体はいまいちだと思うけど、このラストは好き。重苦しさの中だけど最後に光があって、いい気分で本を閉じることができるという横山さんテイストは健在だ。首を捻りつつクライマックスまで読んだけど、最後のクールダウンでやっぱ横山さんは上手いよなぁと思った。
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