元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『ものいふ髑髏』  夢枕 獏
2008-03-13 Thu 00:37
ものいふ髑髏ものいふ髑髏
夢枕 獏

集英社 2001-08
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 夢枕さんワールド全開の、10編の奇妙な話による短編集。

「夜の訪問者」
 「ぼく」は登山中の事故で目に怪我をし、手術のために一時的に目が見えなくなった。聴覚が鋭くなった「ぼく」は、夜中に同室の老人・河森さんを訪ねてくる女性がいることを知った。彼女は毎晩やって来て、河森さんと親しげに話していた。

「二本肢の猫」
 「ぼく」は“アンビシアン”というバーで一人の女性と知り合った。彼女は飼い猫が自分がいない間によその家に行ってくつろいでいると、静かに泣きながら言う。

「抱きあい心中」
 鮎釣りにはまっている「ぼく」は、鮎で有名な川に向かう電車の中で見知らぬ男から絶好の鮎釣り場と特製の掛け鉤をもらう。それ使おうとしたところ、深みにはまってしまい身動きを取れなくなった。どうしようもなく往生していると、水中で全裸の女性が「ぼく」を引きずりこもうとした。

「闇の中の小指」
 どうしても童貞を捨てたいと思った「ぼく」に、飲み屋で知り合った男が無料で女を抱かせてやると言った。若くて美人の女性だけど、灯りを点けないこと、一言も話してはいけないことを約束させられた。
 それから二十年後、取材で来た小さな街で、偶然その男と女らしき二人が営む飲み屋に入った。

「びくいしとい」
 愛していた女性を殺し、その死体に愛おしそうに話しかける男の話。

「もののけ街」
 親父狩りにあった「私」は、連中に殴られて仰向けになったままいじめられていた中学時代を思い出す。何とか立ち上がって歩きだしたところで、”縁綺堂”という店を見付けた。そこには、かつて大事にしていたがいつの間にか失くした物ばかりが売ってある店だった。そこで「私」は、自分をいじめる連中を刺すつもりだったナイフを手に入れる。

「真言士(ンガクバ)」
 チベットに、悪神が起こす霰と戦う真言士という呪法師がいる。知りあいのNが、TV番組でその真言士を呼ぶので会ってみないかと言う。興味をそそられて行ってみると、収録の日に台風が来た。本来は霰と戦う真言士だけど、嵐も止めることができると言う。

「ミサちゃんの生霊の話」
 「ぼく」のミサちゃんという4歳年上の友人が死んだ。乱暴な口調ながら人が集まる女性で、「ぼく」らは彼女の店を溜まり場に昼間から酒盛りをしていた。

「ものいふ髑髏」
 摂津国の金貸し・喜久五郎が“頼母子講(たのもしこう)”に出掛ける途中、裾に髑髏が噛み付いてきた。髑髏は彼に恩があったために引きとめるために慌てて着物の裾を咥えただけだと言い、自分を使った賭け事を持ちかける。

「安義橋(あきのはし)の鬼、人を噉らふ語」
 近江国の藤原信頼の屋敷での宴会で、安義橋に出没する鬼の話になった。源貞盛がこの話を創り話と言い出したことで、彼はその橋に一人で行ってみることになった。彼が出掛けた後、もし何事もなく戻ってきたら鼻高だかでうるさくなると、菅原道忠が先回りして脅かす役を買って出た。
 安義橋に着いた貞盛は噂どおり鬼に会い命からがら逃げたが、その後鬼は道忠だったことを知る。


 「夜の訪問者」「抱きあい心中」「ミサちゃんの生霊の話」では、著者自身の体験?と思わせる設定が面白い。夢枕さんの趣味である登山や釣りに語り手がのめり込んでたり、「ミサちゃんの~」では「キマイラ」シリーズのことが出てくる。
 「びくいしとい」のトリックは、恥ずかしながらあとがきを読んで初めて知った。凄いな夢枕獏。何の感慨もなく読んだけど、とんでもなかった。こういう文章を作れることがすごい。
 最後2編はいかにも夢枕獏って感じの平安譚。清明がこの話を博雅から聞いて「ゆこう」「ゆこう」と続かないのが不思議なくらいだ。そのために、何か物足りない。ラストに物足りない話が来てたから、読み終えてちょっと残念な気分になった。
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