元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『天帝妖狐』  乙一
2004-09-02 Thu 11:09
天帝妖狐 (集英社文庫)天帝妖狐 (集英社文庫)
乙一

集英社 2001-07
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 「A MASKED BALL」と「天帝妖狐」の2本立て。

「A MASKED BALL-及びトイレのタバコさんの出現と消失-」
 高校生の上村は、学内で最も見つかりにくそうな剣道場の裏のトイレで喫煙するようになった。誰もこないと思っていたトイレだったけど、壁の落書きをきっかけに上村を含めた5人で落書き意見交換を始めるようになる。しかしその落書きが、いつの間にか犯行予告の伝言板使われるようになっていった。
 上村がクールに無防備すぎて、今にも背後から襲われるんじゃないかとハラハラした。しっかし犯人は意外というか、予想だにしなかったというか、びっくり。これは読みだしたら止まらないし、面白い。

「天帝妖狐」
 夜木と杏子の出会いから別れまでが、夜木の独白の手紙を交互に挿みながら展開する。
 杏子は生き倒れの青年・夜木を助けた。彼は体中に包帯を巻いている異常な風体でありながら、杏子とだけは心を通わせるようになっていく。しかし凶暴な事件によって、夜木は杏子の元を離れていった。
 手紙によると、夜木は子供の頃「こっくりさん」で「早苗」と名乗る何かを呼び出していた。早苗に誘惑されて、夜木は不老不死の契約をしたという。その日から彼は怪我をするたびにその部分が人間ではない硬質な物に変わっていき、幼いながらとうとう家を出る決意をしたそうだ。
 ジャンルで言うとホラーなんだろうけど、これは「早苗」が怖いんじゃない。自分の体が変質していくことと、それによって人目を避けないといけないという望まない孤独が怖い。この作家は孤独を描くのが上手いと思う。「Calling you」のような不器用で諦めのような孤独も上手いけど、こんな強制的な孤独も読んでて痛々しい。
 夜木は最後、お面の下でどんな顔して杏子と話してたんだろうな。


 学校のトイレの落書きと、こっくりさん。どっちも見聞きしたことあるネタなだけに、面白かった。特にこっくりさんはもう使い古されたネタだと思ってたけど、取り憑かれるとか殺されるとかじゃなくて体を変質させられてあとは何もしない。孤独という恐怖が押し寄せる。でも「天帝妖狐」、あんまり好きじゃないかな。主人公が最後に救われないという終わり方に、苦しい読後感が残る。「失はれる物語」と同様、描かれ方が上手いから引き込まれるんだけどね。
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