元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
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『失はれる物語』  乙一
2004-04-28 Wed 11:51
失はれる物語失はれる物語
乙一

角川書店 2003-12
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おすすめ平均

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 最近乙一にハマりつつあるんで、出版されてすぐにでも読みたかったんだけど遅くなってしまった。図書館・・・ていうか職場なんだけど、リクエスト担当が変わってすぐ買ってくれなくなったんだよね。職権乱用?違います。この作家は今は「知る人ぞ知る」って感じだけど、絶対ビッグになるんだから!!!田舎に住んでるのに車を持ってない私は、本屋になかなか行けなくて図書館に頼ってる。まあこの本はハードカバーで高いから、作家買いするのをちょっとためらってるというのもある。貧乏だから慎重なんです。でも、これ読んで決めた。乙一に関しては作家買いすると。とまあ、駄話は置いといて。
 この本は6編の短編集。

「Calling You」
 人付き合いが苦手な女子高生リョウは、誰もが持っている携帯電話を持っていない。自分には必要ない携帯電話に憧れを抱き、自分が持つとしたらこんな携帯電話がいい・・・と想像していた。ある日、想像であるはずの頭の中の携帯電話が鳴り出す。恐る恐る出てみると、シンヤと名乗る1歳年上の男性からだった。検証の結果、2人はお互いが実存すると知る。

「失はれる物語」
 事故で右腕以外のすべての感覚を失った「私」に、腕に字を書くことで様々なことを伝えようとする妻。彼女は音楽教師であったため、よく「私」の腕を鍵盤に見立ててピアノを弾いた。

「傷」
 問題児として特殊学級に入れられた「オレ」はアサトと出会った。ある日2人は、アサトに他人の傷を自分の身体に移動させる力があることに気付いた。アサトは自分自身は傷だらけになっていくのにも構わず、他人の傷をどんどん引き受けていく。

「手を握る泥棒の物語」
 お金に困った主人公は、旅館に泊まる叔母のバックから貴金属を盗もうと目論んだ。旅館の外から穴を開けて押し入れにあるバックを取るという計画を立て、深夜に実行する。作った穴から手を入れた主人公が掴んだのは、バッグではなく少女の腕だった。

「しあわせは子猫のかたち」
 伯父の所有する家で一人暮らしを始めた「ぼく」。その家には白い仔猫が住み着いていたために仔猫と暮らし始める。しかしその家にはその子猫以外にも住人がいるようだった。調べるとその家の前の住人は雪村と言う女性で、強盗に殺されていた。
 幽霊が幽霊らしくないため、全く怖くない。むしろほのぼの。けど最後は、やはり乙一だった。

「マリアの指」
 線路で自殺した、「ぼく」の姉の友人鳴海マリア。「ぼく」は事故現場の近くでマリアの物と思われる人間の指を拾った。「ぼく」はそのマリアの指を保管し続ける。一方マリアの恋人だった芳和は、千切れたマリアの死体から消えた一本の指を探しているた。マリアに贈った指輪を探しているという。

 またこれが、どの話も素晴らしく良い。ただ、表題作の「失はれる物語」と書き下ろしの「マリアの指」は苦手かな。ラストがどうにも悲しい話で、作話が上手いだけに苦々しい読後感が残る。でもやっぱ話作るのは上手いから、乙一への尊敬は増した。ていうか、一番最初の「Calling You」読んで、心から思った。やっぱこの作家好きだわ。私、乙一についていく。いや、迷惑であろうけれども!
 乙一は基本的に言葉のチョイスが上手い。文章もいい。飾り立てたゴテゴテの文章ではなく、短い文章で巧みに表現している。美しい表現を重ねに重ねて内容そのものが薄くなってる本はたくさんあるし、それはそれで名作も多い。だけど乙一のシンプルさゆえに多くの情報があり、短いながら重厚な物語になっている。私個人としては、乙一タイプの作家がかなり好きだ。短編でありながら、こんなにも濃厚で読み応えがある。
 それから私が好きな部分として、恋愛をきちんと描かない。例えば「Calling You」のように若い男女を描き、お互いが唯一無二の存在になりながら恋愛関係のように濃くない。友情のように熱いこともないけど、家族を超えるような深さがある。もしかしたら今後は恋愛関係になるかもしれないけど、今はまだ違う。そういう感じがいい。『暗いところで待ち合わせ』もそうだった。『GOTH』は・・・そういう世界とは別次元にあるか。多分乙一は、そういう恋愛の部分を避けて書いてるんだと思う。それが文学として良いのか悪いのか、素人の私にはわからない。でも私はそういうとこ、すっごい好き。
 そんなわけで、もう一度言う。私、乙一についていく!
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