元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
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『暗いところで待ち合わせ』  乙一
2004-02-17 Tue 22:18
暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)
乙一

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 父子家庭で育ち、事故で視力を失ったうえに父親も他界した一人暮らしのミチル。彼女はふと、家の中に何者かの気配を感じるようになる。最初は気のせいかと思っていたが、次第にその存在を確信するようになった。気付いた素振りを見せたら危害を加えられるかもしれないと、ミチルは身を守るために気付かないふりを続ける。
 一方、職場で執拗ないじめにあっていたアキヒロは、駅のホームで衝動的に先輩のトシオに殺意を抱いた。そのまま殺人容疑で追われる身となり、視力に障害を持つ女性の家に逃げ込んで居間の隅で息をひそめる。
 ミチルがアキヒロの存在に気付いてることをアピールし始める辺りから、どんどん切なさが増していった。ミチルは友人のカズミが時々来てくれること以外の人との接触がない。偶然知り合ったハルミも、ミチルが紹介したはずなのにカズミとの方が仲がいい。視力を失った自分には仕方ないことだと諦めきっていたミチルが、アキヒロに本当に細くて小さいながら繋がりを見つけてそれを大切にしようとする。
 読みながら、アキヒロは殺人犯だから小説としてこのまま平穏で終わるはずがないことが切なかった。何度もこのまま終わってくれないかと思い、ページを急いで繰りたいような、逆に繰りたくないような気持ちに苦しんだ。
 白杖があっても怖くて一人で外出することができず、自分の意気地のなさから怒らせてしまったカズミに会いに行きたいのに足が竦んでしまうミチル。アキヒロがそのミチルの手を取って歩き出したシーンからは、この2人をもっと見ていたいと思う反面結末が恐ろしくて仕方なかった。
 私の中では、警察に捕まるアキヒロをミチルが待つってことで終わるのが考えうるベスト。しかしその結末でもつらすぎる。だけど乙一は、こんなベッタベタなエンディングしか考えられない私の遥か上空を行っていた。ああ、私また乙一に騙されてたんだ!良かった!良かったよ!本当に良かった!私のショボい予想を、簡単に裏切ってくれて本当に良かった!
 乙一は孤独感を書くのが本当に上手い。多くの人が感じたことがあるだろう孤独感を「孤独」という言葉を使わず、余計な解説なく少ない言葉でさらっと書き上げる。あえて言葉を重ねない書き方は感情を押し殺したような印象になってるけど、かえってミチルやアキヒロの繊細さや人に対してのぎこちなさが引き立っていた。何て表現力を持った人なんだろうか、乙一。やばい。私この作家に惚れたかもしれない。
 春が早く来るといいなぁと思える読後感も、いい感じ。
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