元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『葉桜の季節に君を想うということ』  歌野 晶午
2008-01-20 Sun 18:48
葉桜の季節に君を想うということ (本格ミステリ・マスターズ)葉桜の季節に君を想うということ (本格ミステリ・マスターズ)
歌野 晶午

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 2004年第57回日本推理作家協会賞と、第4回本格ミステリ大賞を受賞作。あと、2004年の「このミステリーがすごい!」の第1位も獲得している本。
 成瀬将虎は探偵会社に勤めていた過去を持つことから、フィットネスクラブ仲間の久高愛子と彼女に惚れている芹澤清に探偵業を依頼された。「表向きは事故ということになっていますが、実はおじいさんは轢き逃げされたのです」と話す愛子。彼女の話によると、久高隆一郎は悪徳商法を営む蓬莱倶楽部に五千万もつぎ込んだ挙句に保険をかけられて殺された疑いがあるそうだ。ただし由緒正しい家系である久高家としては、証拠もないのに騒ぎ立てて家名が傷つくようなことはしたくないと言う。
 将虎は蓬莱倶楽部についての調査に奔走する一方、偶然出会った麻宮さくらという女性とデートを重ねていた。借金を苦に自殺を図ろうとした彼女を助けた縁だったが、将虎は少しずつさくらに惹かれていった。
 蓬莱倶楽部の調査、麻宮さくらとの恋愛、将虎が探偵をしていた20歳の頃に関わった殺人事件の3つが並行して、ハードボイルドテイストな主人公の一人称で語られていく。

 経緯がすごく面白いというわけではないけど、スピード感ある文章でぐんぐん読んでしまった。過去が断片的に描かれる構成に何度か混乱したけど、それはそれで面白い。過去も現在もどっちも気になってしまっていた。
 そして最後に、将虎がさくらに真実を話すシーン。え?まじで!?ってやっぱなるよなぁ、この種明かしには。将虎はさくらを騙し、さくらは将虎を騙してたんだけど、その両方の意味で作者は読者を騙してる。しかも、先入観を逆手に取った騙し方がこれまた面白い。
 実は、この本の評価はある程度知ってて読んだ。叙述トリックを使ってあり、最後には「やられた!」と思わされる本だとか、そういう評価。そういうの知ってて読むと面白さが半減するという人もいるけど、私は叙述トリックは大好きなんで“どう騙してくれるのか”とワクワクしながら読んだ。で、見事に騙された。一体どこに騙しテクが入る余地があるのかと思ってたけど、私も見事に先入観やられてしまった。まさかそんな手でくるとは。
 でもね、言い訳するわけじゃないんだけど、いや言い訳になってしまうんだけど、1点だけ、あれ?って思った記述はあったんだよね。将虎がケータイを2台持ってて、「F6なんとかとかN50なんとかなんとかといった機種名を憶えるのが面倒」と書いてあった。私は一時期ケータイについて妙に詳しかった時期があったんでちょっと引っかかった。ん?「F6なんとか」って・・・それ、らくらくホンじゃん!って。でもその後は全くその事に触れてないから、作者のケータイ機種例が適当すぎるのかという程度にしか思わないで流したんだよなぁ。悔しい。他にも伏線があったことに気付いたのは、2回読んでからなんだけど。
 まあでも明らかに作者はミスリードしてる点は卑怯だよな。久高愛子が家族の事を話す時のあの呼び方。良家のお嬢様にしては品のない話し方だなと思ったんだけど、今思い返すとあれは騙そうとしている作者の意図が感じられる。
 最後の「葉桜」についての所は良かったなぁ。いいなあ、こういう考え。とはいえ葉桜について話す2人の図を想像するとちょっと萎えるのは、私が葉桜の良さをまだ理解できてないからなんだろう。でも、理解できる日は嫌でも来るんだろうな。
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この記事のコメント
コメントありがとうございます。
いえいえi-229
気付いたものの、「オイオイ歌野さん、それらくらくホンだよ。それじゃ適当すぎ」って作者へ心の中でツッこんだだけなんで全然ダメっす・・・。
2008-01-27 Sun 22:01 | URL | 管理人 #-[ 内容変更] | top↑
すごい!
>?「F6なんとか」って・・・それ、らくらくホンじゃん!
 す、すごい! そんなところに気付いた人(の感想)は今まで読んだことないですよ~。
2008-01-27 Sun 19:23 | URL | higeru #-[ 内容変更] | top↑
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