元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『そのときは彼によろしく』  市川 拓司
2008-01-17 Thu 20:28
そのときは彼によろしくそのときは彼によろしく
市川 拓司

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 「ぼく」こと智史は13歳の時に佑司と花梨に出会い、3人は親友になった。3人と犬のトラッシュは当たり前のように一緒にいたのに、「ぼく」の転校で突然離ればなれになってしまう。それから16年経ってアクアリウムショップを営む29歳の「ぼく」は、最近知り合った美咲さんといい関係を築きつつあった。
 ある夜、森川鈴音という美しい女性がアルバイトに応募してきた。「ぼく」は気付かなかったが、彼女は有名なモデル兼女優だそうだ。ここから物語がゆっくりと始まる。

 友情、親子愛、恋愛が重苦しくなく盛り込まれて・・・と書くと簡単すぎて陳腐だけど、それぞれが抱いてる感情がこの作者の表現力によってじんじん響いてくる。特に「ぼく」のお父さん。このお父さんに憧れずにはいられない。ちょっと茶目っ気があるけど息子に深い愛情を抱き、大きな大きな包容力があって、その愛情はさらっとしてるけどとても奥深い。
 この作家を読むのは『いま、会いにゆきます』に次いで2作目。やばい。私、この作家好きかもしれない。好きな作家が少ない私だけど、久々にそう思った。会話文にも地の文にも彼の表現力が過剰過ぎない程度にポロポロ落ちていて、それが心地いい。このラブシーン、なんて品のある表現なんだろうかと感嘆した。
 登場人物に造形っぽさが付きまとうし、ちょっと冗長な所もあるし、途中でファンタジー要素を持ち出したのには正直がっかりしたけど、それでもここに書かれている人を想う気持ちの表現力にマイナス作用はなかった。ストーリー展開を重視し過ぎるとつまらない作品になってしまいそうな本なんで、感情移入して読めて良かった。「そのときは彼によろしく」の意味を知った時の感動が一番大きい。大きすぎて硬直してしまった。
 そうそう。犬のトラッシュって、ムク犬で「ヒューウィック?」って鳴く。これってもしかして『いま、会いにゆきます』で行方不明になった、主人公一家のご近所さんの飼い犬?あれ読んだ時はどこに行ったのか気になったけど、こんな所にいたのか。
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