元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
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『月の裏側』  恩田 陸
2008-01-14 Mon 10:14
月の裏側月の裏側
恩田 陸

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 知り合いの元大学教授・三隅協一郎に招待されて九州にある水郷の街の箭納倉(やなくら)を訪れた青年・多聞は、最近連続して起こった老女連続行方不明事件について聞かされた。彼女達はいつの間にかいなくなり、しばらくしてひょっこり帰って来る。しかし行方不明中の事については何も覚えていないらしい。かつて協一郎の弟夫婦も同じように行方不明になったことがあったそうだが、協一郎によると彼らは限りなく似ている別の「何か」になっているようだと言う。
 帰還した老女達のインタビューテープに入っていた謎の音は?飼い猫・白雨が頻繁に拾ってくる、精巧に作られた人間のパーツとは?図書館に侵入してきた、水の膜のような物体は?ジャーナリストの高安、協一郎の娘で多聞の後輩でもある藍子も交えた4人は、行方不明になった人間が「何か」になって帰ってくるという「盗まれる」現象を確信し始めた。

 私の読書はランダム過ぎて有名所をあまり抑えてないんで、もうちょい有名所読むか。適当に恩田陸でもって感じで手に取っただけというこの作品。ホラーだった。くそっ!何の心構えもなしに読んでしまったじゃないか。急にぐっと迫り上がって来た恐怖に対応できず、あわわわわ・・・。
 でも全部読むと結構拍子抜け。不発の恐怖にがっかりした。別にモヤッと謎が残る終わり方は嫌いじゃないんだけど、これは読み終えてから「で?」って思う。で?皆「盗まれ」て帰って来たけど、「盗まれる」のは別にどうってことないですよで終わり?みたいな。主人公だけ「盗まれ」てないけど、終わったんで帰るとか。
 謎の生命体の発する音が鳩笛と同じ音だったっていうのも、ただ最後に恋慕の情を盛り上げるためだけのアイテム?って感じだし。藍子がいつも写真を撮ってるって設定も特に役には立ってなくて、「盗まれ」て帰ってくる時にあれ?ないなで終わり。わりと浮き彫りに表現されてたアイテムだと思ったのは、私の深読みに過ぎなかったようだ。どう活かすのか楽しみにしていてすいません。
 この作者のホラーは『六番目の小夜子』しか読んでないけど、あれも読んだ後に「で?」って感じの肩透かしを感じた。私はこの人のホラーは苦手なのかもしれない。
 でも、面白いと思った思想があった。生命は多様化することで長く繁栄してきたけど、人間は個体として多様化し過ぎたのではないか。だからひとつになりたいという願望がどこかにあるのでは?という説を話すシーンがあったけど、だから人間はコミュニティーを作りたがるんだろうか?宗教に添いたがるんだろうか?社会に属してない人を嫌な目で見るんだろうか?何この説得力。納得してしまったではないか。

 ちなみにこの舞台、箭納倉は福岡の柳川だと思う。「水郷の都市」「鰻」「有明海」のキーワードと情景から、多分そうだ。柳川の町を描く表現力は、さすが大物作家だと思った。
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