元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『看守眼』  横山 秀夫
2007-11-21 Wed 12:50
看守眼看守眼
横山 秀夫

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 普通なら脇役になるような人達にスポットを当てた短編集。

「看守眼」
 県警機関誌の事務職員である悦子は、退職職員の回想手記が一人分足りないことに気付いた。提出していないのは、長年留置場の看守を務めた近藤。催促のために近藤を訪ねると、彼はかつて起こった事件の真相を1人で追っていた。
 私がイメージする横山秀夫さんらしい話運びだった。つまり期待を裏切らないでいてくれる。緊張感がぐっと盛り上がった後にほどける感じ。最後の近藤の言葉とか、書いた手記の内容とか、なんか暖かい感じがして良かった。

「自伝」
 売れないライター仲間三人で作った自伝代筆の会社に報酬300万円の大仕事が舞い込んだ。自伝を代筆し、報酬を受けることができるの一人だけ。権利を得た只野が取材を始めると、依頼者の兵藤は自らが犯した殺人について語り始めた。話を聞くうちに、只野はその殺人と自分の母親の失踪との関わりと確信し始める。
 
「口癖」
 家裁の調停委員であるゆき江は、離婚調停に来た女性が娘の同級生だったことに気付く。今ではもう結婚しているが、娘は高校時代に彼女にいじめられて不登校になっていた。
 登場人物が濃すぎて、読んでて鬱になりそうだった。夫はうつ病、女性蔑視気味の調停委員仲間、娘のかつての同級生は浅はかな大人に成長してる。結末で、この人もか・・・って気分になった。短編にこれだけの人達を詰め込んであるこの話、ちょっと重い。でも最後には女性って強いなぁと思わされた。

「午前五時の侵入者」
 県警のホームページがクラッカーから侵入され、書き換えられた。ホームページ担当の立原はアクセス履歴から犯人を捜しつつ、セキュリティ不備であったことを隠蔽しようとする。
 犯人の動機に、ちょっと寂しいような気分になった。

「静かな家」
 地方新聞整理部の高梨は、割付終了後に急遽バレエ発表会記事の挿入を命じられる。そのゴタゴタで、別のイベント記事の日付に間違いがあったことに気付かずに掲載してしまった。その事がきっかけで殺人事件に巻き込まれる。
 
「秘書課の男」
 県知事秘書の倉内は、最近知事が自分に冷たいことに気付いた。その代りハーバード大学出身の若者ばかり呼びつけ、遂には倉内のことを無視するような素振りさえ見せるようになる。
 男の嫉妬を主観で書いた話なんだけど、一体何が原因なのか一生懸命考える倉内が滑稽だ。でもやっぱ、横山さんは上手い。途中までは主人公がグダグダでも、最後には読んで良かったって思わせてくれる。

 どれも主人公の役柄は地味で社会の中でも目立たないような人達。全く主役っぽくない人達にスポットを当ててあり、それでいて話も捻りが利いていて面白かった。
別窓 | [や行の作家]横山 秀夫 | コメント:0 | トラックバック:1 |
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