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元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『西一番街ブラックバイト』  石田 衣良
2019-10-19 Sat 17:49
西一番街ブラックバイト 池袋ウエストゲートパークXII
石田 衣良
文藝春秋 2016.08
売り上げランキング: 241,073



「西池第二スクールギャラリー」
 マコトがかつて通っていた小学校がリノベーションされ、アートサポートセンターになった。そこでギャラリーを持つマコトの幼馴染・サエコによる依頼で、小門屋という男の作品が2度に渡って壊される事件の犯人を捜して欲しいと言う。
 30歳で仕事を辞めてアーティスト活動をし、迷いながらも9年も作品を作り続ける男を描く。

 脱サラして芸術家になるとか歌手になるとか小説家になるとか起業するとか、よく聞くけど成功例が少ない話。大抵の人は早めに折り合いをつけてありきたりな人生を送るはずなんだけど、苦しみながら続ける人がいて、その中のごく僅かに晩年世に認められる人もいる。むしろ、人に認められるための活動じゃなくて衝動なのかもしれない。そんな中年男と、苦しい中小企業の傷つけ合いが悲しい。
 マコトが「おれも三十歳の誕生日に、そんなふうに考え込む日が来るんだろうか。」という下りがあって、IWGPシリーズの面々が歳取らないことを考えないようにしているのに先方から突き付けられた感じ。これだけ世の情勢をネタにしてるのに、マコトもタカシもまだ20代半ば設定?マコトは八百屋のトラブルシューターで年取ってもいける気はするけど、タカシは厳しいかな。本物の反社会勢力の人になるか、キングを代替わりしてそのカリスマを活かした別のことやるか。
 うーん、それはそれで読みたい。


「ユーチューバー@芸術劇場」
 人気ユーチューバーの140★流星(ワンフォーティーりゅうせい)が、ライバルユーチューバーから脅迫されているそうだ。自身のチャンネル3周年記念動画を邪魔されないようGボーイズに依頼があったが、受けるかどうかを判断して欲しいとタカシからマコトに依頼される。

 全く新しいジャンルのビジネスと、マコトとタカシのクールなテンションが奇妙な空気を醸しててちょっと面白い。そこにさらに、暴力的発言と共に破壊活動の動画をアップする戸田橋デストロイヤーZ。変な取り合わせので世界観を破壊してくるのってシリーズ通して時々あるけど、結構好きだ。
 でもなんか・・・前にも書いたけど携帯電話が爆発的に普及してきた1990年代後半に始まって、未だに若者としてユーチューバーと絡む姿は、サザエさんに薄型テレビとかスマホが出てくる奇妙な違和感がある。どっかのタイミングでIWGPは終わって、別キャラで似たようなシリーズした方が私は好きだなぁと思いつつ、大人の事情が優先されたのは仕方ないよね。
 あとちょっと気になったんだけど、一話目でサエコのギャラリー警備では警備料は破格と書いてあったのに、今回はボディーガード料金は街の興信所より安くないと書いてある。ここんとこ、どうなの?警備とボディーガードの違いってだけなの?Gボーイズ、時々よくわからない。
 

「立教通り整形シンジケート」
 物凄く美人で、とても美しい声をしているけど決してマスクを外さない女・スズカからの依頼。前の職場にいた男から付きまとわれて困っていると言う。彼女はほんの少し大きめの顎を気にして整形手術を受ける予定だった。
 一方タカシも、池袋の悪質美容外科について調べていた。無理な整形を繰り返して高額な施術代を払った挙句、顔面崩壊する女性達が集団訴訟をすると言う。スズカが控えた整形手術もその病院で行われる予定で、ストーカー男・園田は彼女を止めようとしていた。

 整形手術って、もうどれだけ当たり前になってきてるんだろう。少なくとも芸能界は整形美人だらけで、公言する人も出てきたくらいだ。
 スズカは時折、心を閉ざす様子を見せる。きっと元が美人であるが故に粗探し人間に傷つけられてきたんだろうな。ただ、彼女は顎さえ治せばかなりの美人になると予想される。このシリーズによくある弱者が少し幸せになる話ではなく、上手くやればとても勝ち組になるかもしれない超ハッピーなシンデレラストーリーな気がする。


「西一番街ブラックバイト」
 勢いがあり、次々に事業展開するOKグループ。マコトは家の近くにあるOKグループ従業員のマサルと顔見知りになり、社長の書籍購入ノルマや書籍からのテストの話などの話を聞いてはいた。GボーイズのメンバーもOKグループで働いている者が数多くいて、マコトはタカシに誘われて一緒に視察に行く。
 そのOKカレー店の屋上から飛び降りようとする青年がいた。彼はマサルの後輩・ミツキで、マサルの誘いでOKグループに入ったが心身共に病んで飛び降りようとしている様子だった。消防隊のマットが間に合って一命を取り留め、マサルは会社とやり合う決意をする。
 同じ時期、池袋で引ったくり事件が起こる。犯人2人組はGボーイズのメンバーでOKグループにバイトとして入ったものの、辞めようとする際に莫大な違約金を請求されていた。また、OKグループが雇う武闘派5人組から狙われていたため、彼らに見付かる前にGボーイズが見つけたいとタカシが話した。

 フィクションながら、いつもマコトの行動力と度胸にはドキドキする。その行動力と、自殺未遂後の藤本に掛ける言葉の優しさと説得力が熱い。もちろんキング・タカシの強さと気高さとカリスマもかっこいいし、二人の阿吽の仲も素敵なんだけど、マコトの頭の良さが私はとても好きだと思う。
 過去のシリーズで扱った、外国人労働者問題とかホームレス支援の問題とか低賃金者搾取の問題とか社会問題化してる大きな問題を取り上げて、マコトが世の中を変えれるわけじゃないけど目の前の一つの悪事をぶった切る姿は好きだと思う。


 過去のIWGPシリーズのレビュー読んだら、サザエさん化現象について書いてた。前に書いたこと忘れすぎでしょ、私。
 このシリーズ、短編だしレギュラー人物がマコト、タカシ、おふくろぐらいしかいないし(サルを最近見てない・・・というか読んでない)、私自身本は読み流しがちだから過去の話思い返してみたら結構忘れていることに気付いた。amazonの内容紹介読んでもピンとこない話も多数。また1巻から読んでみようかな。以前はライトに読める本はこのブログに記録を残してなかったから、書いてないのも多いし。15年前の若者の話を追ってみるか。
 今回は9巻で義妹になった子の名前がチラッと出てきて安心した。10巻で全く出てこなかったからちょっと失望してたとこだけど、良かった。
 最近ちょっとタカシのかっこよさと、そのタカシが唯一心を許すマコトっていう構造が鼻に付くことがある。ちょっと狙いすぎじゃないか。でもこの狙いすぎが癖にならなくもないんだけど。
 来年アニメ化だって。ドラマ化では長瀬君がかっこ良すぎて、実際のとこキングよりイケメンだったのはどうなんだと思ったけど、アニメはどうだろうか。アニメはジブリくらいしか見ないような私だけど、多分どんなもんかちょっと見ると思う。ただ、アニメ独特のノリって苦手なんだよね・・・。
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『僕とぼく 妹の命が奪われた「あの日」から』  川名 壮志
2019-10-10 Thu 18:12
僕とぼく 妹の命が奪われた「あの日」から
川名壮志
新潮社
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 20年前に起こった、佐世保市小6同級生殺害事件。被害者の兄2人の人生にスポットを当てたルポルタージュ。明るく社交的で要領のいい長兄と、大人しくて自己主張の薄い次兄の、それまでの人生や事件後の苦しみなどを交互に描く。

 末っ子さっちゃんの誕生、大好きだった母親が乳がんになり乳房の切除、転移、死亡。祖母に手伝ってもらいながらも上手く回っていた御手洗家に、突然起こった事件。被害者の遺族とはこうも辛いのかと、胸が痛くなる。
 周囲の大人に守られながら徐々に立ち直っていく長兄「僕」と、さっちゃんと歳が近かった分だけ多少の事情も知っていて自分を責めてしまう次兄「ぼく」の視点は随分違っていた。こうやってお互いの過去の答え合わせみたいなルポが、どうかより遺族の心の繋がりを強固にしますように。特に長兄の子供が鎹となりますように。
 被害者の父親、新聞社の支局の人だったとかで事件後わりとすぐに会見をしたし、その後も節目に求められれば意見を述べ、手記を出したりした。憔悴しつつも取り乱さない様子はとても立派だったけど、そうか、息子達を守るためにマスコミの前に立ったんだな。改めて、立派な人だと思う。
 事件のきっかけは、交換日記やHP書き込みのトラブルだったらしい。現在、さらに時代は進んでSNSトラブルもよく聞くようになった。我が子に、どうやって身を守り方を教えたらいいだろうか。ほとんどの人間は恙なく社会人になっていくけど、ごく稀にこうやって不幸極まりない事件もある。もちろん事故もあるけど、事件との大きな違いは大きな悪意が存在するということだと思う。家族がこれほどの悪意を向けられること自体が、とてもつらくて悲しくて、想像を絶する苦しみなんだろうと思うことしかできない。
 でも、長兄が結婚して子供が生まれたと知って少しホッとした。人の死の不幸は、新しい命の誕生で少しは癒えるんじゃないかと思う。願わくば、次兄も結婚して子供を作って、大きな苦しみが少しでも埋められて、幸せだと感じれる瞬間が数多くあるといいなと思う。
 兄達2人の心境をじっくりインタビューしたんだろうと思われる丁寧な文章で、読んでて計り知れない苦しみが伝わってくる。でも、2人の違いを漢字とひらがなの「僕」「ぼく」にしたのは、ちょっとイマイチかな。「僕」に比べて「ぼく」は幼い印象がするけど、実際のところ2人は性格の違いは如実だけど精神年齢にそう大きな差はないように感じる。変に幼い印象がする「ぼく」表記の次兄に、ちょっと失礼ではないか?でも、遺族の了解を得て出版してるから、次兄も了承済みなのかな?だったら私がインネン付けるのも変だし、何百倍も失礼なんだけど。とりあえず、脳内で朗読するタイプの私にはそれほど区別が感じられなくてわかりづらかった。「俺」と「僕」だったら、もうちょい違ったか?いや、いまいち感増したな・・・。何か他のタイトルなかったんかなーと思った。
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