元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
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『密室 ミステリーアンソロジー』  
2017-05-18 Thu 12:15
密室―ミステリーアンソロジー (カドカワノベルズ)
姉小路 祐
角川書店   1994.05
売り上げランキング: 2,765,278

「野生時代」の1994年1月号に掲載された、8人のミステリー作家による「密室」をテーマにしたアンソロジー。


「消えた背番号11」  姉小路 祐
 Jリーグチーム・関東ホワイティズに移籍したばかりの若きエース・三沢のユニフォームが、試合直前にロッカールームから無くなった。状況的に、チーム関係者の誰かが隠したとしか考えられない。入り口にはマネージャーが目を光らせていたため、密室状態となっていた。自分の背番号「11」にこだわり、他人に借りるのは絶対に嫌だと言う。試合時間になり、チームは三沢を欠いたまま出場することになった。

 「山」と言えば「川」、「密室」というと「殺人」・・・と思いがちなのに、妙に平和な話が一番に来たもんだ。窃盗になるのかな?三沢にとっては重大事件であり、間接的にその後の先週生命に関わったとはいえ、読んでて物足りなさを感じた。
 でも、とっても読みやすい話だった。Jリーグの事を全く知らないから構えて読み進めたけど、サッカー知識皆無の私にも人物関係や試合内容が理解できてとてもわかりやすかった。


「うば捨て伝説」  岩崎 正吾
 「ぼく」の祖母は、公民館の文学講座で知り合った男性から『楢山節考』の話を聞いて、かつてうば捨て山だった場所に行きたがった。その頃から、「ぼく」は『楢山節考』の夢を見るようになる。 
 実際にうば捨て山伝説の場所に行ってみると、そこは崖になっていて自然の密室かのように思えた。後日、国語教師の「ぼく」は社会教師にうば捨て伝説の事を詳しく聞こうとしたが、話し出したのは同じ土地に伝わる山姥伝説。この勘違いのせいか「ぼく」は、2つの伝説の繋がりを考えるようになった。

 「ぼく」の生活と、『楢山節考』が交錯して若干煩わしさを感じたけど、おりんが山姥伝説になる話は面白かった。いやむしろ、『楢山節考』に影響された「ぼく」の夢が面白かった。あくまで夢であって現実味はないけど、全てのリアリティを取り去って描かれたおりんと弥平の純愛に単純に感動。姥捨てという自然の摂理にも似た悲しい苦渋の風習に、空想だけど救いの末路を見出した儚さが妙に美しく感じさせられた。
 

「密室のユリ」  二階堂 黎人
 探偵・二階堂蘭子のもとに、警視庁捜査一課の山本勝正警部が事件の相談に訪れた。推理小説作家の生田百合美が自宅で殺害されたが、玄関も窓も鍵がかかった密室だった。生田百合美は口述筆記の作家だったが、録音中に殺人が起こったために犯行の一部始終が録音されていた。

 二階堂黎人も作家名と主人公名が同じタイプの作品を書く人だという事を全く知らずに読むと、二階堂(あ、作者と同じ名・・・?ん?)・・・蘭子(え?あれ?)となった。で、全く存在感ない語り部の「私」って誰だよ状態のまま終わった。夫にしては存在感なさ過ぎると思ったら、養父母の実子という立場の兄だと読後にネットで知る。
 トリックも大したことない事と証拠捏造のすっきりしなさの相乗効果、さらに登場人物がボヤッとしてることもあって、いまいち。
 私自身の勉強不足というか読書不足な点は置いといて、シリーズで読んでたらこういう短編もありと思えたのかもしれない。


「靴の中の死体―クリスマスの密室」  山口 雅也
 パラレルワールド英国の探偵士・ブル博士は、ピンクとキッドをお供にシューメイカー夫人の家を訪れた。昨夜、シューメイカー夫人の宝石が盗まれたが、犯人は三人の息子のうちの誰かだと言う。
 翌朝、シューメイカー夫人が内線電話に出ない事を不審に思ったメイドのステラ・パウエルと共にブル博士達がシューメイカー夫人の別館「靴の館」に行くと、全裸で首を吊っていた。外は雪が積もっていて、本館から別館へ続くシューメイカー夫人の足跡が残るのみ。隣の寝室では三男が睡眠薬を大量に飲んで死んでおり、当初は三男が母親を殺して自殺したと思われた。しかし死亡推定時刻はジョージの方が早く、雪のせいで館全体が密室となっていた。

 「誘拐」でもこのシリーズが載ってたけど、予備知識皆無で単品で読んでも面白い。キッドとピンクはブル博士に師事してる感じだけど、今回も解決したのはキッド。きっとシリーズ通してこんな感じで、探偵はブル博士と見せかけといて解決するのはキッドなんだろう。で、ピンクはかき回してると見せかけて居合わせた完全犯罪に重要な証拠を残す。ブル博士は威張ってるけど嫌な奴じゃないとこ、結構好きだな。
 トリック的には単純なんだけど、短編なんだからこの単純なわかりやすさがいいと思う。


「開かずの間の怪」  有栖川 有栖
 推理小説研究会のメンバーの織田が、元病院の開かずの間にから幽霊が出るという噂の真偽を確かめようという話を持ってきた。いつもの4人でその廃病院に泊まってみる事にして3階の住居部分に過ごしていたが、織田が腹痛を訴えて帰宅。そのしばらく後、一階から物音が聞こえてきた。残る3人で探索するも、あちこちで不自然な物音がする。二手に分かれて音を追うと、アリスと望月は開かずの間の隣の部屋のドアから首だけ出して笑っている男の子を目撃した。

 有栖川先生、ホラーもいけるんだね・・・。開かずの間の謎は扉の作りが特異なだけだけど、ホラー要素が予想以上にラストまでホラーだった。織田のいたずら?それにしても全然出てこないし・・・あ、やっぱ織田のいたずらだった!でも人形が違う!?というオチがちょっと怖かったけど、こういう時も冷静な江神さんは素敵。
 ただ、こういう部屋の位置関係が重要な小説って、サラッと読めないのが苦手。ただでさえ地図が読めない私が文章のみで簡単に頭に見取り図を描けるはずもなく・・・何となくで読む。で、何となくでしか理解しない。何かわかんないけど解決しちゃったって終わる。短編だから容易に再読する気になれるのは、私にとって良かった。
 ところで、「二十世紀的誘拐」もこれもマリアちゃんは出てこないのね。掲載年的にはもう登場してるはずなんだけど、もしかしてマリアちゃん休学中の出来事って事なんだろうか。と思ってたら、「僕」ことアリスは一回生と書いてあるからマリアちゃんが入部する前の話なわけだ。


「傾いた密室」  折原 一
 ファックスによる書簡小説の形をとった、『密室―ミステリーアンソロジー』の「二重誘拐」と同じ覆面作家・西木香シリーズ。
 西木に、編集部の堀口大輔が読者からの相談を伝える。星野みさきという女性が、父親が密室で殺害された謎について考えて欲しいそうだ。報酬は星野みさきの処女と知らされて、依頼を了承する。締め切りが近い西木の代わりに堀口が星野みさきを訪ねて詳細を聞き、ファックスで西木に知らせる。
 地盤の悪い崖に建った屋敷で使用人と2人暮らしの星野一郎だったが、父親の死後、弟の二郎が遺産相続の件で訪ねてきた。電話で一郎の様子がおかしかったために実家に戻ったみさきだったが、夜中に書斎から一郎の叫び声が聞こえてきた。鍵が掛かっていたために斧で扉を壊して入ると、倒れた脚立の傍で一郎が死んでいた。二郎が怪しいと考えたみさきだったが、脚立から落ちて頭を打った事故として処理された。

 順番通りこちらを先に読んでいたら、「二重誘拐」ラストの西木のしたたかさが受け入れられたかもしれない。女の要求を頑なに拒んだ小説家魂がストイックに思えてたとこに身代金窃盗だったから驚いたけど、この作品では冒頭の下心とラストのエロオヤジっぷりで、西木の人間臭さがはっきりと描かれている。年齢不詳だから、オヤジかどうかは不明だけど。
 堀口からのファックスによる事件の情景描写が不自然に細かすぎてモヤッとするけど、話は面白かった。事件の謎は解け、西木が書き終わった小説は「傾いた密室」。つまりこの出来事を作品にした、というオチも良かった。
 ところで星野みさきからの手紙の最初の作家像、処女作『天駆ける木馬』というタイトル、ウィキで読んだ経歴的に、西木香って北村薫か?いや、わかんないけど。


「ロス・マクドナルドは黄色い部屋の夢を見るか?」  法月 綸太郎
 私立探偵のリュウ・アーチャーは、ジェラルド・キンケイドから孫娘アリスの行方捜索を依頼される。アリスの部屋で見付けた手掛かりを辿って薬物中毒のSF作家フィリップ・デッカードの「隠者の家(ハーミット・ハウス)」を訪ねた。アリスがボーイフレンドのピート・ケイルが復讐から「隠者の家」に連れて行かれて薬物中毒にされ、デッカードに犯されているところを連れ出したアーチャーだったが、翌日デッカードが鍵の掛かった書斎で死んでいるのが見付かった。

 私立探偵が手掛かりを辿っていくところは面白かったんだけど、アリスが見付かってからは終始胸くそ悪い。で、ラストで血縁関係が入り乱れ過ぎてわけわからなくなる。警部が主人公に重大な事実を突きつけるも、誰だっけそれ?状態。で、胸くそ続き、人間関係で混乱、挙句に語り部である主人公が犯人というラストにモヤッ。
 で、密室トリックが意味不明のまま。アーチャーが体を横にするだけでドア下の隙間を通れたってどういう意味?ていうか、ロス・マクドナルドって誰だ。黄色い部屋って何だ。教えてGoogle先生。あ、ロス・マクドナルドってアメリカのハードボイルド作家で、リュウ・アーチャーって彼の作品の主人公なのね。それ以外の事は意味不明のまま。ロス・マクドナルド作品を読んでたら、何かわかるのかな?肝心なところがわからないこの感じ、何か嫌だ。


「声たち」  若竹 七海
 記者である春田俊朗が、妹夫婦の小柳みちる・丞太郎に事件の相談に来た。容疑者の6人は殺意が明確だったが、離れた場所で一緒に小型タクシーから6人一緒に降りるところを目撃されており、その後行われた会議を録音していたためにアリバイがあった。
 丞太郎が考える様々な密室トリックを次々にそれを打ち破るみちるだったが、テープを起こしたシナリオを読んですぐにみちるが事件の真相を解く。

 丞太郎が考える短い密室トリック、面白かった。それを間髪置かず小馬鹿にしながら解いて見せるみちるの歯に衣着せぬ言い方も好き。会議テープ自体は退屈ながら終わった瞬間にみちるがスパッと解き、ラストの一言「小型タクシーに、大人五人は乗れない」に、ああ~と感心してしまうくのも小気味良かった。
 テンポも良くて、いい夫婦だなー。面白かったです。


 読む順番を間違えたっぽいけど、先月読んだ「誘拐」とは、「色んなミステリー作家がテーマに沿って短編を書く」シリーズシリーズ的な感じ?でも全体的にはこちらの方が面白かった。短さが活きてる作品も多くて、最後の話が特に秀逸。
 それにしても、Jリーグ発足やらファックスやテープの存在やら、個人的にはノスタルジーを感じて感慨深かった。よく考えたら、出版年が四半世紀近く前か。ちょうど第何次かは知らないけどミステリーブームだった頃か?あれはマンガだけだったんだろうか?あの頃は恥ずかしながらラノベにハマってたから、よくわかんないけど。
 ミステリーに限らず古い作品の背景を見て、変わったところと変わらないところに目を向けるのもちょっと楽しく思える年齢になったなと思う。さらに、今読んでも遜色皆無の作品に巡り合えた時の感動はひとしおだと思う。
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