元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
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『46番目の密室』  有栖川 有栖
2016-06-20 Mon 12:34
46番目の密室 (講談社ノベルス)
有栖川 有栖
講談社   1992.03.02
売り上げランキング: 615,264

 
 作家アリスシリーズ、第一作目。「私」こと作家の有栖川有栖は、親友で大学助教授の火村英生と共に北軽井沢にある大物推理小説家・真壁聖一の家に招待された。他にも招待された推理小説家仲間や編集者達と共に楽しくクリスマスイブを過ごしていたが、真壁の姪の真帆が別荘の外で顔に火傷跡のある男がうろついているのを見たという。
 明けてクリスマスの日、「私」も別荘の車庫でその男を目撃する。その夜のパーティーの後に何者かによってあちこちに白にまつわるいたずらが施されていた。階段に石灰粉がまかれ、安永彩子の部屋の窓ガラスいっぱいに白いハートが描かれ、船沢辰彦の部屋のクローゼットでは彼の靴に白ワインが注がれ、「私」と火村の部屋にはトイレットペーパーがあちこちに這いまわり、高橋風子の部屋には時限爆弾を模した白いテディベアが置かれていた。
 誰のいたずらか憶測の域を出ないまま就寝したが、深夜に目を覚まして別荘の玄関へと続く足跡を見つけた「私」は階下に降りて書斎に入った瞬間、何者かに殴られて昏倒する。石町に起こされて事情を話し書斎を見に行くと、何者かが暖炉で顔を焼かれながら死んでいた。その後火村も加えた3人は、地下室の暖炉で顔を焼かれながら死んでいる真壁と思われる男を発見した。
 共に密室で発見されたこの死体は、明らかに自殺ではない。山荘に滞在しているのも、仲間内の11人だけだった。

 有栖川有栖さんの小説、4冊目にしてようやく「作家アリス」シリーズに入った。火村さんはドラマとは若干イメージが違うんだね。この作品では、クールでめちゃ頭いい人って感じ。ドラマが大げさだったのか、今後もっと変な人になっていくのか・・・。
 「作家アリス」シリーズの幕開けは、関係者が似たような人ばっかりで誰が誰だかわからないまま始まって終わった・・・。人物的にかぶるのは数人なんだけど、その数人の中に犯人がいて誰これ?状態。アリス火村コンビと真壁ファミリーはわかるとして、その他の男性3人と女性2人は区別つかないまま読んだ。関西弁の船沢は、アリスの発言とごっちゃになるし。ちゃんと集中して読めてない証拠か?
 でもトリックは面白かった。ザ・密室な感じを楽しく読んでたんだけど、動機でドン引き。記念すべきシリーズ1話目で、性的マイノリティーはないわー。この手の驚かせ方はは、私は苦手。もう少しシリーズを重ねてからだったら、まだイロモノ動機で受け入れられた気もするけど。
 これだけ推理小説テーマになってる話なんだから、実は真鍋のトリックは犯人が考えたものばかりで、弱みを握られてて・・・というベタな展開の方がまだ収まりがいいんじゃないの?駄目?素人の浅知恵か。
 あと、警察が介入した翌日に責任者らしき鵜飼警視から、県警の栗田本部長から火村に協力するよう連絡があったと聞かされるシーン。当たり前のように名前出されるから、もしかしてこの話はシリーズの2作目以降で、「栗田本部長」は読者にとって暗黙の了解なのかと思った。アリスが火村の探偵ぶりを見るのは初めてと書いてあるのを読んで、これがちゃんと1作目である事を理解して、驚かさないでくださいよ状態。あんまり1話目だとか意識させない書き方をする人なのかな、作者さんは。そう思うと納得いくんだけど、近くにスマホあったら危うく読むの中断して調べてるとこだった。
 ちょっとワクワクした点は、アリスが次作は「学生の僕、有栖川有栖が語り手になってるシリーズ」で「大雨で孤立した山奥の村が舞台で」、「またそこに学生が閉じ込められる」だと言う。『双頭の悪魔』のことなんだろうけど、『双頭の悪魔』の方では学生アリスが書く予定だったか今書いている小説がだったかが「臨床犯罪学者」が出てくる「作家アリス」シリーズだと書いてあった。双方はパラレルワールドだとネットに書いてあったけど、これがパラレルかと思って思わずにやりとしてしまった。
 今後も双方でお互いが描かれつつ進んでいくのかな?何それ楽しい!やっぱ出版年順に読んで正解だった!というわけで、何だかんだ言っといてまだまだ読みたいです。
 ところで。学生アリスって地の文は何人称で書いてあったっけ?「俺」だったような気がするし、この『46番目の密室』で次作の話をする時にも「俺」って書いてある。という事は「俺」なんだろうけど、やたらアリスアリス書いてあるイメージもあって三人称だったっけ?いや違うな・・・と全く思い出せない。マイルールで地の文が一人称の時は前半の内容まとめで記録するようにしてるつもりだったけど、過去の感想文読んでも「アリス」としか書いてない。というか、内容にアリスがあんまり絡んでこないせいか存在感薄いイメージなんだけど。『双頭の悪魔』では、主要キャラと分断されたからいつもより多めにスポット当たってたけど。
 本気で思い出せず、かといってそれだけのためにまた図書館で借りるのも面倒だし、シリーズ4作目を読む時に確認しよう。感想を記録するようになって十数年。自分の記憶力の衰えに、頭抱えてる。ていうか、恐怖してる。
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別窓 | [あ行の作家]有栖川 有栖 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『ビブリア古書堂の事件手帖3 ―栞子さんと消えない絆―』  三上 延
2016-06-01 Wed 13:39
ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫)
三上 延
アスキー・メディアワークス (2012-06-21)
売り上げランキング: 115,092


「プロローグ 『王さまのみみはロバのみみ』(ポプラ社)・Ⅰ」
 最近のビブリア古書堂の事を、篠川文香が何かに綴っているという形のプロローグ。その行為を『王さまのみみはロバのみみ』のようだと例えている。姉の事を心配したり、大輔が自分の姉に想いを寄せていることなどを客観的に見ている。


「第一話 ロバート・F・ヤング『たんぽぽ娘』(集英社文庫)」
 客に絶版文庫の棚が代わり映えしないことを指摘されて、組合の古書交換会に仕入に行った栞子と大輔。目当ての本の束は僅差で、栞子の母親を敵視している「ヒトリ書房」の店主・井上が落札した。
 仕方なく栞子のコレクションの中から店頭に並べる事にしたところに、井上が落札した本の束の中から『たんぽぽ娘』が盗まれたうえに井上が栞子を疑っているという電話がかかってきた。偶然にも栞子が持ってきたばかりの本の中にあったために、直後に怒鳴り込んで来た井上から『たんぽぽ娘』を取り上げられる。もし本当に栞子が盗んだのではないなら真犯人を捕まえて来いと言う。
 幼馴染の男・蓮杖の登場に恋のライバル?と思ったものの、一瞬で普通にいい人だった事が判明。恋愛にウェイトを置かないつもりなのかな?恋愛主題じゃないのに恋愛を絡めると冗長に思える・・・というか実際無駄にページ数費やされるから好きじゃない。だもんで、この人間関係がサッパリしてるとこは好きだ。
 栞子さんは大輔への信頼をさらに深めていき、今回は飲みに行く。こういうシーン見ると、ラノベながら中高生対象じゃないんだなぁと思う。主人公2人は大卒だからなんだけど、こういう既存の本を題材にした小説って面白いから中高生にこそ読んで欲しいんだけどなぁ。ラノベとなると、思い付かないなぁ。辛うじて「図書館戦争」シリーズだけど、あれは恋愛要素が強すぎて私は苦手だった。文学少女は好きかもしれないけど、あまり本を読まない男子は好きじゃないだろうなぁ。取り上げてある実在の本も、ビブリア古書堂ほど面白そうには扱ってくれてない。ラノベじゃなくてもそう多くはない・・・と思う・・・けど、ラノベとなると難しいのか。そう思うと、著者さん凄い。女の子像はベタどころかベッタベタ過ぎていまいちだけど。
 さて今回は、栞子さんの母親・智恵子を大層嫌っている男が出てきた。何だか母親像がちょっと立体的になってきたかな。井上には失踪したはずの智恵子から時々便りが届いていて、しかも大輔の体質にまで触れてあるというラストには、ちょっとぞっとした。とうか、続きが楽しみ。おかげで事件の犯人の影が薄い・・・というか、登場自体が少なすぎ。
 ところで、前日に犯人が大輔に成りすまして潜入していた事を栞子さんが暴いた件について。ネームプレートが壊れていた事を井上が知っていたという偶然性がちょっと無理やり感ある上に、当日ネームプレートが付けれないでいる大輔に居合わせたとはいえ声掛けるか?という疑問。ビブリア古書堂のネームプレートを付けてる人物が初日と2日目で違ってる事に誰も気付かなかったから今回の事件で栞子さんが疑われたはず。嫌いな人に早く視界から消えて欲しいから、昨日から壊れてただろうがいちいち戸惑ってんじゃないぞオラって意味で声を掛けたのか。いやー、私なら嫌いな人の連れに「壊れてるだろう。それは」なんて声掛けない。「昨日からわかってた事なんだから立ち止まってないでとっとと行けよ」ってくらいかな。そこが不自然に思えて、無駄に何度か読み直してしまった。


「第二話 『タヌキとワニと犬が出てくる、絵本みたいなの』」
 年明け早々、大輔は偶然坂口しのぶと会った。タイトルも著者名も登場人物名もわからない昔読んだ本を探して欲しいと言う。その説明が、タイトル。
 しのぶは両親と上手くいっていなくて、子供の頃に読んだ本ながら実家の両親には聞きづらい。だから栞子と大輔にも一緒に来て欲しいと頼んで来た。元々両親と仲が悪かったが、年の離れた坂口昌志との結婚に大反対されて縁を切っていたそうだ。最近になってようやく和解しようとしたが、食事会の席で昌志が前科持ちである事を話してしまったために再び溝ができてしまっていた。
 坂口夫妻と栞子と大輔がしのぶの実家を訪ねると、母親は嫌味や憎まれ口ばかり言う。再びしのぶが激怒して、今回も和解はできなかった。

 この話のラストで、栞子さんはしのぶさんの妊娠を見抜く。呼んであった父親が、自分達とは性格も価値観も違い過ぎるしのぶとの付き合い方がわからなかったと話して、母親呼んで毒舌ながらも今後を見据える形で終わるんだけど・・・。平和だな、オイ。
 私は私の両親が・・・というか母親が苦手でこういう設定は共感する。私の母親は、しのぶの母親をもっとマイルドにして悪気なくした感じだし。で、子供ができて和解したいと思うか?思わないよなぁ。子供がいとこと遊びたがるから行くけど、いとこがいなかったら冠婚葬祭以外では会わないと思う。自分の子にも毒を向けたら、それこそ絶対許せないし。だからこそ、センチメンタルなラストに軽くイラッと。
 しのぶは『チェブラーシカ』に出てくる「なかよしの家」にずっと行きたかった言う。そんな思いをさせた自分の親には、子供ができたからこそ会いたくないと思わないか?。うーん、私が大人になりきれてないのかな?娘を馬鹿だ馬鹿だとこき下ろす母親なら、孫にも言うかもしれない。可能性は少なくはない。ありえーん、子供ができたからって和解するとかありえーん。私は母親が上記の通りで、父親が馬鹿馬鹿言う人だったんだけど、私の子に私に言ったように馬鹿馬鹿言ったら二度と実家には行かないと思ってる。今のところ年取って丸くなったからか、私の心情を察してからか、言わないけど。
 今回はきれい事なラストに不満だ。
 気付いたら自分語りになってるな・・・。


「第三話 宮沢賢治『春と修羅』(関根書店)」
 篠川智恵子の同級生の玉岡聡子という女性から、宮沢賢治の『春と修羅』の初版本が盗まれたから取り返して欲しいと頼まれた。玉岡聡子の兄は事業が上手くいっておらず、資金繰りのために夫婦で訪れた際に盗んだようだと言う。彼女は、篠川智恵子が自分の父親とよく文学の話で盛り上がっていたと話した。
 栞子は、兄の玉岡一郎と兄嫁の小百合、さらに昴の話も聞いて犯人を割り出した上に、玉岡聡子の父親が孫の昴に遺した課題も解き明かした。

 少し胡散臭い部分がある女性だと思ってたけど、まさかこの人が悪い人(?)だったなんて。いや、悪人じゃないんだけどね。本が大好きで大切で、兄一家を良く思ってないだけなんだろう。でも自分の父親から「テナルデイ軍曹」呼ばわりされた事には同情する。兄一家も本当に悪い人ではないみたい。兄はちょっとお調子者なだけで、妹とは違って借金も相続して苦労しているだけに過ぎないと思う。両親とは違って本好きの甥っ子と、今後は仲良くできるといいんだけど。
 今回はまたさらに、栞子さんの母親の事が掘り起こされる。栞子さんの幼馴染・蓮杖さんがわざわざ大輔を呼び出して話した事によると、篠川智恵子は本が関わる事件の相談を受けていたと言う。栞子さんは以前はその手の依頼は受けていなかったらしいけど、大輔が本の話を喜んで聞いてくれるから依頼を受けるようになったんじゃないかと推察していた。でもって、玉岡聡子も母親の聡明さを語っている。その黒さも、少し。そろそろ本人が登場するかなぁ。
 盗まれた本は『春と修羅』の初版本であるうえ、宮沢賢治が所蔵し、自ら訂正を書き込んでいた本だったというオチ。宮沢賢治の幸少ない人生を思うと、貧しくても自らの道を極めようと推敲を重ねていたその姿勢が切ない。


「エピローグ 『王さまのみみはロバのみみ』(ポプラ社)・Ⅱ」
 プロローグと同様に篠川文子の文章が書かれているけど、父親の死後から母親に宛てに送り続けてるメールだった。栞子が探し続けている母親から渡された『クラクラ日記』も、文香が父親から託されて隠し持っていた。

 前話で玉岡聡子の話によると、栞子さんが『クラクラ日記』を売ろうとしていた事を父親は気付いていたらしい。という事は売ってはないはず。
 プロローグで文香ちゃんは自分の口の軽さを反省しているとブログか何かに書いてると思ったら、母親にメールしてたのか。返事はないらしいけど。母親が失踪したのは文香ちゃんが幼稚園の時だそうだ。何考えてるんだろうか。寂しかっただけだろうか。父親はこのメールに何か送っていたんだろうか。父親には返信はあってたんだろうか。謎が増えた。
 文香ちゃんのメールに、大輔は気付いたようだと書いてあった。大輔、自分で思うよりは頭悪くないっぽいからなー。このシリーズは展開も早いから、次回が楽しみ。
 ところで半ば日記みたいになってる手紙のようなメールという感じだけど、プロローグでやけに詳細に『王さまのみみはロバのみみ』の内容に触れていた。最初はブログだと思ってたから気にしてなかったけど、物凄く記憶力が良くて頭の切れる母親宛てだと思うと、詳細過ぎて蛇足めいた感じになってる。そこがどうにも不自然で、そういう粗探しをやっちゃいがちの私は、あれだけ有名な童話なんだからあらすじ書く必要ないんじゃないかと思ってしまう。

 このシリーズを3巻まで読んだけど、短編ながらちゃんと前後の話に繋がりがある上に前後の巻にも繋がりがあるなぁ。事件は短編だけど、主題は長編というか。時々栞子さんへの疑念が沸いても、すぐに解決するところとか結構好きだ。
 でもって、読めば読むほど本の知識のなさが重くのしかかる。いや、昔からわかってたんだけどね。謙遜じゃなくて、真面目に本の知識皆無。それはわかってたんだけど、近代とかゼロに近いなぁって普段はあんまり浮き彫りにならない辺りもがっつり自覚させられた。
 今回は文香ちゃんの文章が出てきた。。『時計仕掛けのオレンジ』の時にチラッと思ったけど、三上さんはグレードを下げた文章が下手なのね。栞子さんが本の説明をするシーンで、短くまとめるのが本当に上手いと思ってた。大輔目線の地の文も、あれこれ余計な事が書かれ過ぎなくて好き。だけど、グレードを下げると、いかにも大人が「こんな感じかな?」って思いながら書いてるのが透けて見える文章になる。普段はあんなに明るいJK文香ちゃんが、急に伸び伸びできなくなっちゃったというイメージ。不思議です。
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