元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『怪盗探偵山猫』  神永学
2016-05-18 Wed 12:26
怪盗探偵山猫 (角川文庫)
神永 学
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 「山猫」は、大企業から大金を盗む際に、その企業の悪事を暴いた張り紙を残す窃盗犯。ライターの勝村英男は、雑誌の副編集長から頼まれて、その「山猫」の記事を書くことになった。依頼の矢先に起こった「山猫」絡みの事件現場には、かつての上司・今井の死体があった。
 事件の翌日、今井が発行していた雑誌が勝村宛に送られ、また今井の友人・サキと名乗る女性から桜の花びらの形のペンダントを受け取る。直後、2人組の男に誘拐されそうになったところを「山猫」に助けられた勝村は、彼と共に今井殺害の事件を調べる事にする。
 一方、勝村の先輩・さくらは、大学時代の後輩で今はライターをしている勝村と事件現場で再会した。今井殺害事件の捜査に関しては本庁から派遣された関本警部補と組む事になり、女性蔑視で自分勝手な関本に苛つきながらも、捜査を進めていく。


 ドラマを見てたら、原作者に神永さんの名前が。「心霊探偵八雲」を読んでいた私としては、是非これもと思って読み始めた。ドラマは土曜9時だけあってかなり不自然な点が多かったけど、彼が原作ならそこまで不自然じゃないだろっていう確認もしかったし。
 案の定、1巻で既にドラマとは色々違う。ドラマ化ってそんなもんだよねぇ。でも、キャストは合ってたな。亀梨君はかっこ良過ぎとしても、菜々緒も関本もイメージぴったり。勝村はまあまあ。それにしても最近の私の読書、ドラマ発ばっか・・・。
 さて、小説の方。勝村は「山猫」に、さくらは関本に振り回されながら捜査を進めていく感じは探偵物というよりキャラクター小説に近い物があって、事件そのものもあんまりドロドロしてなくて、読みやすかった。話の展開より、人物同士のやりとりが楽しい。能力が高くて自信満々で高飛車って、男女問わず私好みだし。
 話のメインが勝村とさくらで「山猫」は最後にいいとこだけ持っていくとこが残念なような、「山猫」の掴みどころのなさを表してていい感じなような。単体で成り立つけどシリーズ物として続いていくなら、プロローグ的ないい1巻目だと思う。
 勝村って頼りなくて悪い奴らからも「山猫」からも振り回されっぱなしなんだけど、さくら視点の時の癒し系っぷりや意外と記憶力抜群な所も今後の活躍を期待したい。もちろん、さくらの勝気美人なところも。でもって、2人がお互い密かに好意を抱いてるところも。作者が「待て!しかして期待せよ!」ってあとがきに書いてるんだから、期待していいよね。
 チラッとながら「心霊探偵八雲」シリーズの後藤刑事がさくらの先輩として声だけ登場してるのには嬉しいようなやり過ぎなような・・・。ハイクオリティの作品でこれがあると嬉しいんだけど、失礼ながらあちこちに過去の偉人が使ってきた設定とデジャブ感じる作品だとあざとさを感じるというか何と言うか、まあ根がひねくれてて粗探し好きなのは認める。
別窓 | [か行の作家]神永 学 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『双頭の悪魔』  有栖川 有栖
2016-05-17 Tue 13:41
双頭の悪魔 (黄金の13)
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有栖川 有栖
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 前作『孤島パズル』で親戚達が殺し殺される場に居合わせた有馬麻里亜は、傷心のまま旅に出た。あちこちを旅をしてふらりと四国に行き、芸術家達が外界との交流をほとんど絶ってにひっそりと暮らす山奥の村・木更村を訪れる。
 部外者の立ち入りを禁止するその村から出ようとしないマリアを連れて帰ってくれるよう、マリアの父親から依頼された英都大学推理小説研究会(EMC)のメンバーのアリス、江神、織田、望月の4人は、織田の運転する車で木更村の手前の夏森村までやってきた。しかし木更村の入り口で1人の村民とカメラマンとの諍いに巻き込まれて誤解される。4人は夜の雨に乗じて木更村に潜入する事にしたが、見付かって村民達と大乱闘になった。
 一方村民のせいで脚に怪我を負い木更村に滞在する事を特別に許されたマリアは、ほぼ自給自足の村民と共に生活したり、画家の鈴木冴子のモデルになったりして過ごしていた。穏やかに過ごしていたある夜、村の当主・木更菊乃が村民で画家の小野博樹と結婚すると発表した。小野は木更村を開放して観光地にしようと提案していたため、村民達に動揺が走る。
 作曲家の八木沢や、造形作家の前田哲子から外部の者がマリアの知人を騙って村と接触を図ろうとしていると聞かされて何となくEMCの仲間達を思い出していたマリアだったが、夜に図書室で過ごしていると窓から江神が訪ねてきた。他の3人は夏森村に強制送還されたものの江神だけ木更村に留まることが許され、翌日にはマリアと他のEMCのメンバーが再会する予定だった。ところが翌朝、小野の死体が村の奥にある鍾乳洞で死体となって発見される。死体は岩棚の上で逆さ状態になり、調香家・香西琴絵が作った香りに包まれて死んでいた。しかも振り続けた雨のせいで起こった鉄砲水で唯一の橋が流されてしまい、停電まで起こってしまう。、警察が村中を捜査するのを嫌がる菊乃が通報するのは2日間自分達で捜査をしてからと決めていた。2日目の夜に犯人は作曲家の八木沢だと推理していた江神だったが、八木沢がピアノ演奏中に背後から刺殺されて琴絵が作った香りが振りかけられているのを発見しされた。
 夏森村では、橋が流れてマリア達と接触できなくなったEMCの3人が、木更村に閉じ籠る過食症の元アイドルの千原由衣を執拗に探していたカメラマン・相原直樹の死体を発見した。
 

 前作『孤島パズル』から2ヶ月後の11月を舞台に、アリスとマリア2人の視点から描かれる。前半の、EMCの4人がなかなかマリアに会えない辺りはもどかしいけど、江神がマリアと合流してからは急に頼もしくなった。でも逆に、夏森村組のアリス、織田、望月が何だか頼りない。でも、3人で論争を繰り返すうちにアリスが犯人を突き止めるんだけど。
 分断された場所で2ヶ所で起こったから連続殺人事件って感じはしない。でも江神の推理っで2ヶ所の殺人事件が突然交わり、1本に繋がる。ただ今回の謎解きの部分がいつも以上に長く感じた。琴絵がずーっと反論し続けたからかな?時系列順に憶測状態の部分から先に話すから、琴絵の嫌味ったらしい返答が繰り返されるのにイラッとする。謎解きは20ページ分くらいあるんだけど、確たる状況証拠であるラスト3ページくらいを先に説明してから交換殺人の解決に入った方がわかりやすくない?そもそも、交換殺人って題材にリアリティ持たせるのって難しいよね。どちらから見ても相手が本当に殺すかどうか当てにならないから、先に犯罪を犯すのは嫌だと思う。片思いの相手のために相原に殺意を抱いて、木更村開放反対だったから一緒に生活してきた仲だけど小野を殺しましたって感じになるのかな。どうなんだ、それ。
 トリック自体は回を重ねる毎に面白くなっていくシリーズと思う。でも、最後に犯人が死ぬのはいただけない。たまにはアリかもしれないけど、あんまり良い終わり方じゃない分毎回だとちょっと飽きる。
 今回はアリスとマリアはほとんど・・・いや、全く交流しなかった。織田と望月さえ電話で話したのに、アリスとマリアが再会する直前で、物語は終わる。そんなーって思ったけど、今回2人が離れてる分、江神さんを加えた三角関係になってきたように思う。アリスは単純にマリアが好きなんだと思う。ただ、マリアが好きなのがアリスなのか江神さんなのかわからなくなってきた。でもって江神さんがジェントルマン過ぎて、マリアに対してラブなのかライクなのかわからない。
 マリアの回想の中でチラッと出てきた「臨床犯罪学者」の話。学生アリスと作家アリスは別シリーズだとネットで見て知ってたけど、学生アリスが書く小説が作家アリスみたい。そういう世界が作ってある事に、なんだかワクワクする。
別窓 | [あ行の作家]有栖川 有栖 | コメント:0 | トラックバック:0 |
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