元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
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『ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち』  三上 延
2015-11-24 Tue 12:10
ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)
三上 延
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 去年だっけ?ドラマで見ていた。本をほとんど読まなくなってたとはいえ、本が絡むと聞くと「ん?どんな感じで本を絡めて物語を作るの?」と興味を持ってしまう。視聴率は低かったみたいだけど私は面白いと思ってたし、書籍全体への造詣が深い剛力彩芽を尊敬してた。いや、凄いのは剛力彩芽ではないんだけど。

「夏目漱石『漱石全集・新書版』(岩波書店)」
 主人公の「俺」こと五浦大輔は大卒就職浪人中で、幼い頃に祖母の本に触ってひどく叱られたトラウマから活字を長く見ると気分が悪くなる体質の持ち主。その祖母が亡くなり、遺品整理の際に夏目漱石全集の1冊に著者サインがある事を発見する。本物かどうか鑑定してもらうためにビブリア古書堂を訪れるが、実は数年前に古書堂で見かけた働く美しい女性店員に会えるかもしれないという下心も抱いていた。
 現在怪我で入院中である店主・篠川栞子は内気で寡黙な性格ながら、並々ならぬ古書の知識を持っていた。本の事となると話が止まらなくなる癖を持っており、読みたくても読めない体質の「俺」と次第に打ち解けていく。

 1話目ということでお手柔らかに的な感じなのか、事件そのものも大した事ではない。サインがあった巻はかの有名な「それから」、なんか形式がおかしい献呈署名、書き込みに関する注意書きのないビブリア古書堂の値札、主人公の名前は「ダイスケ」。ああ、もしかしておばあ様、不貞ですか?って思ってるところに追い打ちで叔母の話。まあ、私のは推測レベル。篠川さんは、状況証拠レベルまで高めてあるから、あんまり自慢気に書くことでもないんだけど。
 この話のメインはサインの謎ではなくて、本を読みたくても読めない体質の「俺」と、本の話をすると止まらない篠川さんの出会うところ。そして「俺」がビブリア古書堂の店員としてスカウトされるところ。今後が楽しみになりそうな序章だった。
 

「小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)」
 「俺」が働き始めたビブリア古書堂に、志田と名乗るホームレスのせどり屋が訪ねてきた。常連だという彼は、篠川さんに失くした本を捜す協力を依頼したいと言う。本はどうやら、たまたま志田の自転車とぶつかった女子高生が持ち去ったらしかった。

 なぜ古びた文庫小説なんかを盗んだのか、志田の話を読んでも、本を盗んだと思われる女子高生と会話をしたせどり屋仲間の笠井の話を読んでも、私は全くわからなかった。今回の安楽椅子探偵っぷりは、なかなかだったと思う。解明された謎は相変わらずショボいけどね。
 今回は志田の優しさを噛み締める回かな。大切にしていた本のスピンを切られた事より、他人の本を盗んでまで好きな人へのプレゼントを完璧な形で渡そうとした小菅奈緒ちゃんの女心の方を「・・・・・・ああ、かわいそうにな」と言える優しさが素敵。
 ドラマでは志田は高橋克実が演じていたけど、気さくで豪快でちょっと汚いホームレスせどり屋役が合っていたと思う。


「ヴィノグラードフ クジミン『論理学入門』(青木文庫)」
 ビブリア古書堂に、坂口という男性が『論理学入門』を売りに来た。査定は翌日になると話して商品を預かったが、そのしばらく後に坂口の妻と名乗る女性から本を返して欲しいという旨の電話がある。不審に思った「俺」は、査定のために篠川さんを訪ねた折りに一連の出来事を話す。篠川さんは坂口が持ってきた本に服役囚の私物本に貼る「私本閲読許可証」が貼ってある事に気付いた。

 奥さんが言うには、坂口はその本をとても大切にしていたそうだ。なぜ売ろうとしたのか、それが今回の謎。うーん、地味。真相も地味。この話のメインも、謎そのものではない。多少おバカながら真っすぐ前向きに坂口を愛するしのぶの姿に感動するヒューマニズム小説だと思うと、まあ成り立つかなぁ。
 でも、もうちょっと視力障害についてそれっぽく書いて欲しかった。一連のやり取りは篠川さんの病室で行われたから、それなりに明るい場所のはず。隣に座っている妻の顔さえはっきり見えないとすると、結構重度の視力障害を患いつつあるんだと思う。だとすると、薄暗い店内じゃ買取票を書くことも困難なはず。白い紙だったら存在くらいは見えるだろうけど、字が枠からはみ出すどころか住所氏名をどこに書いたら良いのかさえ見えないと思う。そもそも病院までたどり着くのも難しかったろうに・・・あ、タクシー使ったとか?
 謎の地味さや設定の適当さからして、次の章冒頭の篠川さんの隠し事告白をスムーズにするために存在する話なのか。でも、しのぶさんがダラッダラ話すわりには、読み飛ばすほど退屈な話でもなかったと思う。話が面白い女性の、多少長い話を相槌もなしで「へー」って思いながら聞いた気分かな。


「太宰治『晩年』(砂子屋書房)」
 前章の坂口夫妻が帰った直後、篠川さんは誰にも話さなかった秘密を「俺」話し始めた。入院に至るほどの怪我を負った理由を雨の日に石段から足を滑らせたからだと周囲には話していたが、実は誰かに突き落とされたのだと言う。犯人に関してわかっている事は、『晩年』に収録されている「道化の華」の主人公・大庭葉蔵の名を名乗っている男性であるという事、篠川さんが大切にしている太宰治『晩年』のサイン入り初版本を大金を積んででも欲しがっている事だけ。人に話せば店に放火すると脅迫されているので、警察に訴える事もできない。彼女は「俺」に犯人捜しを頼んだ。

 やっと事件らしい事件なんだけど、太宰のサイン&一言が書かれた本に400万円出すと言ったのに売ってもらえなかったからっていう常人離れした動機が凄い。私は太宰の事はスケコマシ中二病の天才作家としか思ってないけど、今でも熱烈なファンがいて命日にお墓で泣いてたりするようなスーパーカリスマ作家だと聞いた事がある。あながち酔狂な話とも言い切れないところが、この話の魅力。
 篠川さんは偽の太宰本で犯人をおびき出して屋上で燃やしてみせるけど、ちょっ!屋上から火の点いた本落とさないで!!!と思わずツッコミ。賢い篠川さんの事だから下に何もない場所を狙って落としたんだろうけど、火が点いてるって時点でやばいでしょ。風で飛んでったりしたら・・・。
 男の正体は、田中敏雄。1話目で出てきた「俺」の祖母の不倫相手、田中嘉雄の孫。つまり、腹違いのはとこだった。ここにきて、なかなかの偶然が発動。なんか唐突過ぎて、一瞬置いてけぼりを食らってしまった。でも、出自の秘密を知ったばかりの「俺」が、実の祖父について知ることができて良かったと思う。できれば別の出会い方をして、仲良くして欲しかったという寂しい気持ちもあるけど。今後出てくる事はあるかな?傷害罪で今後服役するだろうから、ないかな。篠川さんに一生に関わるかもしれない重傷を負わせてるから、絡みようがないか。
 あと、前章に出てきた坂口夫妻がちょっと出てくるけど、店の看板に放火した犯人を目撃した坂口氏が状況説明。おいおい、お前実は見えてるだろ!?って読者は誰もが思ったはず。これ、編集者か誰かツッこまなかったのかな?黒っぽい服着た人がどちら向きにしゃがんでたかなんて、見えないってば。
 今回も、ちょっとそこんとこもうちょっとリアルに書いて欲しかったわーって箇所がちょっとあったけど、これもラストの「俺」と篠川さんのやり取りにニヤニヤするための前ふりでしかないと思えば、まあいいか。


 好き嫌いは分かれそうだし、何やかんやツッこんだけど私は好きかな。「人の手から手へ渡った本そのものに、物語があると思う」という篠川さんの気持ち、結構同感。私程度の読書家が言うのはちょっと恥ずかしいけど、物語や内容以前の本そのものの存在が好きだとずっと思ってきた。だから、ほとんどの話が誰も傷つけず優しい事件だった事が、ちょっと嬉しい。唯一篠川さんは、本を巡って大怪我してるけどね。
 序盤はちょっとダラダラ長かったけど、「俺」と篠川さんが出会ってからは淀みない安楽椅子探偵っぷりが面白かった。センセーショナルな事は起こらないけど、穏やかな雰囲気が終始している。ただその分、読後の余韻は浅いと思う。ライトな小説、つまりライトノベルってわけで。見るからにラノベだから、それはいいんだけどね。
 23歳のはずの「俺」が高校生みたいな恋をしてるとこもちょっと不自然だけど、そこは私が清らかさを失って久しいからと解釈しよう。ちょっと納得いかないのは、「俺」が活字が苦手な原因が結構些細である事。それだけの事でトラウマ抱えてたら世の中どうなるんだ。トラウマ抱えるってもっとこう、「それから」を暗唱できるようになるまで怒鳴られ続けたとか、そういうレベルでしょ。・・・どんなシチュエーションかって我ながら思うけど。暗唱はさておき、もっと他に何か良い設定はなかったんかいと思う。
 色んなツッコミ所を内包しつつ、穏やかにパラパラと読めた。
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『PRIDE-池袋ウエストゲートパークⅩ』 石田 衣良
2015-11-21 Sat 16:53
PRIDE—プライド 池袋ウエストゲートパーク10
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 立て続けに池袋ウエストゲートパークシリーズいきました。

「データBOXの蜘蛛」
 中堅企業ながら最近勢いを増しているIT企業「ライフゲート」の開発部長・松永悟が、会社の新規プロジェクトの情報が入ったスマホを落としたという。スマホの拾い主は松永を脅迫し、600万円を請求していると言う。相手が情報をコピーしていつまでも脅迫し続ける事を恐れた松永は、彼らが二度と脅迫してこないようにする事をマコトに依頼した。
 マコトが犯人とのメールをやり取りし、金の受け渡し現場でGボーイズが犯人一味を痛めつけるだけで済むと思っていたが、犯人の仲間が松永の不倫相手・オリエに一目惚れした事で事態は急変する。

 仮にもIT系の会社員ならスマホのセキュリティについてもっと知ってて!と頭を抱えたくなる設定だった。オンラインゲームを開発するような会社が、スマホアプリの企画が上がってないわけがない。スマホの事、もうちょっと知ってていいんじゃないの?IT齧ってる程度ならまだしも、開発部長でしょ!?・・・いや、この話の本質はそこじゃないんだけどね。わりと引っかかって読み進んだけど、後半のオリエ危機で、見どころは脅迫事件じゃなかったんだと納得。


「鬼子母神ランダウン」
 ロードレーサーでサイクリングに行ったマコトとタカシは、鬼子母神で弟を自転車でひき逃げした犯人を捜しているというナナと出会った。サッカーでU16の日本代表候補に選ばれるほどの選手だった弟のマサヒロは利き足を骨折し、医者からは元のパフォーマンスを取り戻すのはほぼ不可能だと言われていると言う。
 
 話聞いちゃったから成行き的に協力するのかと思いきや、タカシがぽっちゃり系のナナに一目惚れしちゃったんで半分はタカシのために協力する模様。孤高のキング、まさかのデブ専ですか。Gボーイズにまで犯人捜しを協力させちゃうとは。
 事件自体はいつも通りマコトの機転で解決するんだけど、タカシがナナにいいとこ見せようと不必要に行動的だったり饒舌になったりするとこは新鮮だった。こういう可愛いとこもあるんだなーみたいな。最終的には付き合ったと書いてあったからちょっとうれしかったんだけど、数行後には破局。もっとタカシがナナにデレデレするとこが読みたかったなと残念に思った。
 今回の件もそうだけど、今までマコトも彼女できては次の話では別れてたりして、このシリーズは良くも悪くも恋愛に淡泊。レギュラーメンバー達もいつまで経ってもそれほど年齢は変わってないっぽい分、私の中でサザエさんやコナンみたいな存在になりつつあるかもしれない。


「北口アイドル・アンダーグラウンド」
 マコトが働く果物屋に、イナミと名乗る地下アイドルが訪ねてきた。最近変なストーカーに狙われているようで、マンションのドアに血が塗り付けられていた事もあったと言う。マコトがボディーガードを務める間にも、マンションのドアに赤マジックで誹謗中傷が書かれる事件があった。

 地下アイドルとはいえ、アイドル。やっぱり内情はドロドロしてそう・・・っていうイメージ通りのドロドロ感がライトに描かれていた。事件も些細だし、解決した時も何だかちょっと滑稽さも入ってて、その中でイナミの爽やかさがいい感じだった。でもいい大人になっちゃった私は、老後どうすんだよーなんて夢もへったくれもない事考えちゃうんだけどね。


「PRIDE-プライド」
 若いホームレスを相手にした支援施設が話題になっている事を知ったマコトは、週刊誌に掲載しているコラムのネタにならないかと動く。そこへ偶然、リンという美しい女性が仕事を依頼してきた。3年前に自分をレイプした連中を探していると言う。彼らは現在、池袋周辺で何件も事件を起こしており、タカシの元カノも被害にあった事でGボーイズも動き出す。

 リンって、9巻に出てきた中国人の名前と一緒じゃーん!なんて鬼首取ったかのように言うのは下世話ですか、はい。タカシって2話前にデブ専って言ってたのに元カノは美人なのかよ!?とかもツッこんじゃ駄目ですか、そうですか。
 それはさておき、物語の常だけどホームレスの自立支援事業とリンの件はつながってる。今回の件はそんな物語の構成の単純さなんてどうでもいいくらい苦しい事件だった。輪姦事件に、一昔前に一部でよく取り上げられた警察でのセカンドレイプ。そこからさらに、ラストでマコトへの圧力のためにリンが拉致される。
 この話はフィクションだからマコトとGボーイズがいい感じで片付けてくれるけど、現実でもこういう事件はあちこちで起こっているわけで。本当に刑罰が軽すぎるよ。去勢してやってくれって思う。
 ラストのマコトとタカシのやり取りがまるで最終回みたいだったんでちょっと焦って検索してみたら、去年11巻目が発売されていた。最終回なのかと焦ったくせに、出てるなら出てるで「なーんだ」って気持ちになっちゃう不思議現象。なんていうか、こんだけヒリヒリした物語を書いて、ちょっとセンチメンタルな終わり方しておいて、次回はまたマコトもタカシも彼女いませんって感じの体で新しい事件を迎えるんだと思うと「なーんだ」ってね。阿藤快みたいに、「なんだかなぁ」でもいい。
 このシリーズを読み始めたのは、15年近く前。マコトやタカシと同世代だったんだけど、当然ながら私は年を取って彼らは相変わらず若いまま。ただ、絡む事件は世相を反映してたり、アイテムもスマホが出てきたりなんかするもんだから、彼らの変わらなさが逆にちょっと寂しい。つらかったり苦しかったり魂を削るような事件もあったのに、成長しないのか。フィクションだからと言ってしまえばそれまでだけどね。似たような感じで別のシリーズ始めるってわけにはいかないのかなぁ。まあ、いかないんだろうけど。
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「池袋ウエストゲートパーク」シリーズ 石田 衣良
2015-11-20 Fri 13:40
『非正規レジスタンス―池袋ウエストゲートパークⅧ』
『ドラゴン・ティアーズ―龍涙―池袋ウエストゲートパークⅨ』
『PRIDE-池袋ウエストゲートパークⅩ』
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『ドラゴン・ティアーズ―龍涙 池袋ウエストゲートパーク9』 石田 衣良
2015-11-20 Fri 13:38
ドラゴン・ティアーズ―龍涙 池袋ウエストゲートパーク9
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売り上げランキング: 16,874

 再読じゃない読書、久し振り。5~6年振りかな。読書すると集中しちゃうのは人間の性だし、私の仕事モードスイッチでもあるから、なるべく読まないように過ごしてきた。私的記念すべき第一冊目は、サクッと読めて展開も何となくわかっちゃうけど飽きるようで飽きないシリーズ物の新刊。
 それにしてもタイピングが退化したな・・・。速度は変わらないけど、頭の中にある次の文字を打っちゃう不思議現象が・・・。以前はSEの配偶者より速くて正確だったのに。
 さて、久々にレビュー。

「キャッチャー・オン・ザ・目白通り」
 タカシからの紹介で、有名エステで大金を騙し取られた女性達からの依頼を受けたマコト。テレビに出るほど有名なオカマエステティシャン・ブラッド宮元に近付くため、マコトとタカシはまず求人案内に応募して何の苦も無くキャッチとして相手の懐に入った。
 
 何だか、タカシがいかにイケメンかって事を描くのに躍起になってる気がして鼻についた。でもって、今回の件を解決に導いた案はタカシ。顔と戦闘とカリスマはタカシだけど、頭脳は断然マコトっていうIWGPセオリー形式が好きな私としては、久々に読んだ1話目がこの展開っていうのに何だかちょっとがっかりだった。
 最後の短い戦闘シーンも、マコトもいいけどタカシはもっとかっこいいみたいな。これはいつも通りなんだけど、前半にマコトの活躍が少なかった分、最後までマコトが冴えない感じでちょっと寂しい。
 流れはいつも通りの勧善懲悪で、すっきり解決だったんだけど。

「家なき者のパレード」
 今回もタカシからの紹介で、ホームレスの支援組織「絆」のヨウスケからホームレスに関する依頼。行政の働きで最近街でホームレスを見ることが少なくなったが、彼らの数が減っているのではなく分散して生活せざるを得なくなっているうえに不況の煽りでますます生存競争が厳しくなっているそうだ。そんなホームレス達の中で、時々ひどい怪我をしている者がいると言う。話を聞こうとしても何があったのかは教えてくれない。問題のありかも解決の方向もわからない件を丸投げする依頼だった。

 ヨウスケとタカシのつながりは、Gボーイズメンバーにもホームレスがいるからだそうだ。第一巻が出たのはもう20年近く前。あの頃の怖かっこいいストリートギャング団は物悲しさ漂うようになってきてるんだなぁ。微妙に流行ったカラーギャング闘争を模した1巻最終話・・・タイトルは忘れた・・・は、なかなかのわくわく感と感動を持って行ってくれたというのに。タカシは相変わらず羽振りいいけどね。
 マコトが話を聞いたホームレスに圧力をかける者が現われて手掛かりが聞き出せなくなっていき、ついには重傷を負うホームレスまで出た。腕の骨を折られたホームレスのガンさんの発起で、事件が実態を現す。ホームレスが働けなくなった時に一定期間収入を保証する「日雇労働被保険者手帳」通称「あぶれ手帳」を騙し取る、城用建設の存在が明るみになった。
 無血闘争に近いデモで解決したその饒舌っぷりこそが、このシリーズの見どころだと思う。こういう話を最初にして欲しかった。

「出会い系サンタクロース」
 一見マンションに見えるが中は壁が薄くて狭い部屋がたくさんあって、そこでいわゆる「素人」の女性と、時間単位でお金を払う男性とが会って話をする「出会い部屋」という物があるという。太めのサラリーマン・ヒデトは、その出会い部屋で知り合ったアヤに恋をした。アヤは母親の借金返済のために出会い部屋で働かされているそうだが、それでも足りずに身体を売るように圧力をかけられているそうだ。ヒデトはアヤを助けてほしいとマコトに依頼する。
 風俗の事ならプロ・・・暴力団の本部長代行・サルの協力を得ながら、ヒデトが通う出会い部屋「カルプス」について調べていく。

 暴力団が絡むと、ザ・アンダーグラウンドって気がするのは私が凡人過ぎるからだろうか。暴力団の人達ってどうやってお金を稼いでいるのか全く知らなかったから、IWGPに書いてある事が私が知ってる暴力団知識の全てだ。だから、何だかよくわからないけどかっこいいイメージがあるのはマコトの友達の羽沢組部長代行・サルのせいだと思おう。
 新しい稼ぎ口として出会い部屋に手を出したいサルとの利害が一致したマコトは、世間知らずが故に法外な利子の付いた借金を背負うアヤを出会い部屋から救い出す。マコトは完全に虎の威を借る狐状態なのは2話目と一緒だけど、こういう軽くて読みやすいアングラ話は結構好きだ。

「ドラゴン・ティアーズ―流涙」
 中国の戸籍制度は厳しく、生活も労働も生まれた場所でしかできない。貧しい農村で生まれた者は、どう足掻いても一生貧しさから抜け出すことはできないそうだ。そんな農民達は、日本への出稼ぎを夢見て外国人研修制度に選ばれる事を切実に願っている。日本では3K長時間過酷労働でも、彼らにとっては3年で中国での生涯収入に匹敵する賃金を得られるそうだ。
 今回河南省から送られてきた労働者250人のなかで、クーシュンクイという女性が脱走した。彼女が1週間のうちに見付からないと、他の250人も強制退去させられる上に、中国の送り出し組合も3年間派遣を禁止されるという。今回マコトは、送り出し組合からアドバイザーとして雇われた日本国籍を持つ中国人リンからクーシュンクイを探すように依頼される。
 池袋の中国人組織「東龍(トンロン」)が絡んでいるらしいとの事で、マコトは今回もサルに協力を仰ぐ。サルの方はサルの方で、東龍とみかじめ争いが起こっていた。サルが所属する羽沢組のライバル京極会が、東龍のバックについているらしい。

 よくある事だけど、やっぱり表題作が一番面白い。
 東龍のボス・楊は、低賃金重労働から逃げ出して当然だと言う。リンは、逃げ出した女性を風俗業に就かせる違法就業であり、脱走は他の中国人にも過大な迷惑を掛けると言う。マコトも私も、多分他の読者の方々も、何が正しいのかわからなくなる。
 しかしながら、制度の網を潜り、楊の面子も潰さないたった一つ・・・少なくとも私には他の方法は考えられないたった一つのやり方で、クーは救われる。マコトのお母さん、やっぱいいわー。マコトのお母さんとリンのやり取りで、こんな方法があったんだ、リンの帰化の話はただの生い立ち話じゃなくて伏線だったんだと感激がじわじわ押し寄せた。クーに「書類のうえだけでもマコトの妹になってみないかね」と言うその穏やかな言い回しが、マコトのお母さんの温かさズドンと伝わってきた。
 ラストがいいよね。「かわいい妹と花見をする。そいつはなにを隠そう、おれのガキのころからの夢なのだ」っていうこれ、些細ながら叶わない夢を淡く抱き続けてきた感じが、マコトがとても可愛く思えた。
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3年が経ちました
2015-11-09 Mon 22:17
 最後の記事から3年・・・。久しぶりにログインしようとしたらIDとPWがわからず、登録していたはずのフリーメールを見ようとしたら無料サービス終了してて長期間開いてない人のボックスは削除されていて、試行錯誤に1日近くかかってしまった。
 閑話休題、気付けば3年。やっぱり子供が2人になってからの更新は無理だった。上の子が大人しかったんで、この調子なら2人育児でも結構余裕そう――なんて思ってる時期が私にもありました。反省。
 それにしても母親って物は思ったより心身共に変わるみたいで、集中力がとても散漫になったと思う。本を読んでいても、常にあれこれ気に掛かる。子供の昼寝中に読書しようと思っても、起きて危ない遊びをしてたりしないか?夜泣きするかもしれないから私も今のうちに寝てた方がいいんじゃないか?いや、晩御飯の準備とかやってた方が後々楽なんじゃないか?それともいい加減散らかったこの部屋を何とかしたい・・・と、頭のどこかで常に考えてしまってて、「没頭する」って事ができない。
 下手に物事に集中しちゃうと子供が死んじゃう事もあるから、この散漫さは必要不可欠なわけで。母親の本能って凄いんだなって改めて実感。以前は周囲の音が聞こえないくらい読書に集中できてたのに、衣擦れの音しかしない子供の寝返りでも反応してしまう体質になった。下の子が幼稚園に通い始めるようになって、ようやく集中力という物を取り戻しつつある。
 でもってもう一つ発見というか再確認。文章を書くのが下手になった。元々上手とは言えないかもしれないけど、それでも時々褒めてもらえてたからド下手ではなかったと思う。でもここ数年長い文章を書くことがなかったから、書こうとすると箇条書きのような文章しか浮かんでこない。もしくは女のおしゃべりのようなダラダラとした贅肉の多い文章だったりとか。語彙力も低下して、”ここんとこの表現は、もうちょっと硬い文章にした方が映えそう”とか思っても思い浮かばない。
 とりあえずリハビリとして、過去に読んだ私的五つ星小説やマンガ本をちょこちょこ読み始めたのが去年から。その後、好きな短編シリーズ本の新刊を読み始め、さてそろそろ色々読むかなって思ったんだけど、読んだらレビューを書くって生活を続けていた自分が懐かしくって、読み終わった後すぐに次の本に手を出せないでいる。
 小説みたいに、より多くの人に読んでもらう事を前提とした文章を何度か読んでるうちに、ようやくここまで来れたと思う。


 さて、実は去年の4月に、もう一度司書の道を歩む手始めとして、ある大手図書館が業務委託している会社の契約社員になってみた。6年間で記憶力の低下が凄まじいし、下の子は一時預かりにしてたから勉強する暇もない。以前なら活字や分類番号を見たらスーッと意識が一点集中していくのを感じていたんだけど、社会復帰直後はどうもピンとこなくてボーッとなってしまってた。
 そもそも時給の割には仕事量が多く、時間にもうるさく、間違うと叱咤もきついから、人がどんどん辞める。でもってどんどん雇う。常に新人を数人抱えている状態で、全然作業効率が上がらない。どんだけどんどん辞めるかというと、去年4月に私と一緒に10人入って、その年の10月末には私で辞めるの8人目。
 実は先月Lineがあって、9人目が辞めた。1年半で9人辞めるってどんだけ・・・。学生街のバイトじゃあるまいし。
 私は先輩から作業が遅く間違いが多いと表でも裏でも言われてたんだけど、あまり気にしないでいた。でも上司に報告され、就業時間を減らされて簡単な仕事しか任せない立場にされ、そこまでご迷惑ならって辞めた。辞める時に仲良かった人数人に、「私が覚え悪くて作業遅くて間違いも多くて、ごめんなさい」って挨拶をしたら、全然そんな事なかったし皆あんなもんだった。むしろ何故あなたにだけああやっていつまでも簡単な作業しかさせないでいるのか、ずっと気になってたと言われた。結構何人にも言われたから、本当だと思う・・・ていうか思いたい
 辞める時になって周囲から話を聞いて総合すると、どうも司書経験がある人が気に食わない的な?そんな感じもあった事を知った。私の非の方が大きいとは思うんだけど、「過去の経験がナンボのもんか知らないけど、ウチは厳しいわよ」みたいな。で、従順な人は気に入られる。言い返す人は嫌われる。私は昔取った杵柄レベルで、小馬鹿にされるって感じかな。叱られても気にしないで、次頑張ろうってタイプだったのもボスから気に入られなかった点っぽい。凹んで2~3日ボスにビクビクしちゃうタイプは気に入られてた。
 大学卒業して初めて勤めた図書館がすっごいいい人達ばかりで、次に勤めたとこもとっても優しい人達ばかりで、女社会って言うほどドス黒くないと思ってたら3回目にしてちょっとモヤモヤしたとこを経験。
 余談ついでに、その後割とすぐ「そうだ!京都へ行こう」ってノリで「そうだ!全く違う仕事を経験してみよう」とパン屋さんのパートに。ここも人の入れ替わりが早い職場だったと入ってから知った。
 週4希望なのに週6入れられたり、時間過ぎても帰らせてもらえなくて幼稚園のお迎えに遅れたり、是非にと言われて下の子の入園式の早朝に1時間だけの約束で出勤したのになかなか帰らせてもらえなかったりしたんで辞めた。他の人はもっとひどい目に合ってたし(exm.忙しい時に休み希望してネチネチ嫌味、思い付きで新しいやり方を提案し順応できないと怒鳴られる、些細な失敗で攻撃性人見知りの奥さんから猛攻撃・・・私はあまり気にしてなかったというか、理不尽攻撃が面白おかしくなってたのが顔に出てたりして、最後には半ば存在無視されてた)。
 で、5ヶ月くらいで辞めて、現在プー半年目。そろそろ再就職活動を・・・と思うけど、2回の就業体験でちょっと腰が重くなってるところ。というか、偶然2回良くない職場に入ってしまったのか、私の能力が物凄く低下してるのか、悩んでる。とりあえず過去2回の、見切り発進的就職はしません。


 ・・・やっぱりダラダラ書いちゃう癖がついてるなぁ。後半、愚痴っすわ。
 できれば2週間に1冊とかでいいから、読んでレビュー書きたいなと思ってる。でも司書を辞めた上に充てもなくなった今、完全にただの趣味でしかなくなるんで、どうなるかは不明。
 というか、スマホが普及してネット社会に拍車が掛かってる現代において司書の存在って昔より小さくなってると思う。大抵の調べ事は指先で済んじゃう世の中だもん。レファレンス力が相当レベルの人じゃないと、やっていけないでしょ。脳みそが錆びついてギシギシ鳴ってる私には、もう司書の道は無理かなぁと思ってる。けど、夢見てる。そんな現状です。
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