元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『長い夜』 赤川 次郎
2012-04-21 Sat 18:51
長い夜 (桃園新書)
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赤川 次郎
桃園書房  1989.8
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 5億の借金を負ってしまい一家心中を決意した白浜夫妻と娘・仁美の前に、借金を肩代わりすると言う謎の男が現れた。小西と名乗るその男の条件は、ある小さな町に住んで自分の娘・宏子と孫・久弥が殺された事件について調べる事だと言う。宏子と久弥を殺したのは、娘の夫であり孫の父親である江田洋介。彼は妻子を殺した後、自殺してしまった。その件以外でも突然小さな事件が多発するようになっているその町で、一体何が起こっているのかを調べてもらいたいそうだ。依頼を引き受けた白浜家の3人と、彼らにくっついて来た仁美の幼馴染・武彦は、小西が指定する町の家に移り住んだ。
 一方、車上荒らしの三神は、ひょんなことから小西の運転手になる。小西に言われて運転した先の病院で、髪を振り乱した女から襲いかかられる。別の日に小西の使いでその病院に行った際に、その女の脱走を手伝ってしまった。

 赤川次郎はコミカルな話を書くイメージの人だけど、ホラー書いたらしっかりと怖い。ちょこちょこ視点が変わるけど、何となく背後は大丈夫かって感じの不気味さがつきまとう。1回読んでしまうと2回目は全然なんだけど、1回目は怖いんだよなぁ。赤川次郎ホラーは、人知を超えた何かによって人が死んでいって最終的には解決するけど結局“何か”の正体はわからないまま終焉するというパターン。これもそうだろうなと思いつつ読んだけど、それでもしっかりと怖かった。
 でも多少引っ掛かる点が。我が子の1人が行方不明なのに残ってる方の子に家庭教師を付けるなんて随分余裕じゃないですか、なんて思ってしまった。いやー、ティーンエイジの頃の私は何もわかってなかったけど、母親になった今は「いやいやいや!私なら半狂乱で解決策を探し続けるよ!」と進とルミの母親にツッコミ。ルミを発端に町の人達はおかしくなっていったようなんだけど、何か隠してるっぽいけど普通に生活するとか私にはできないと思う。ま、こういう浅さも赤川次郎ほどの人ならアリかな。
 それに、白浜夫妻は武彦を簡単に同行し過ぎだと思う。武彦の両親にはちゃんと連絡したのか?大体幼馴染とはいえ、白浜夫妻は仁美と武彦の仲を軽視しすぎじゃないか。私なら、一応武彦は旦那と同室にするし、仁美は自分と同室にする。
 こういうとこ、ある意味ラノベっぽい気がする。ラノベと言い切っていいのかどうかはわからないけど、少なくとも「ライト」な「小説」・・・つまり「ノベル」である事には間違いない。そういえば赤川次郎のシリーズ物・・・例えば三毛猫ホームズとか、三姉妹探偵団とか、精神病棟のやつとか、四字熟語シリーズとか、悪魔シリーズとか、天使と悪魔シリーズとか、萌え系のイラストさえ挿入すればラノベだよなぁ。そっかー、中学時代の私はラノベリーダーだったのかぁ。ラノベ流行期に、受け付けない司書が多い中じゃんじゃん読めてたわけだ。・・・ていうか、読者として完全に親目線になっちゃったな。初めて読んだ時はローティーンで、仁美・武彦と同じくらいだったのになぁ。
 思わずツッコミ入れちゃったとはいえ、このホラーテイストは今でも存分に楽しめた。私がいた図書館では一番貸出数が多い作家さんだったと思うし、まんべんなく色んな世代の人が借りてたように思うし、当分の間人気は不動なんだろうな。
 赤川次郎の大半は読んできたけど、この人のホラーでは『白い雨』『死が二人を分かつまで』が印象が強烈だった。何だか立て続けに読みたくなった。
別窓 | [あ行の作家]赤川 次郎 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『インペリアル』 赤川 次郎
2012-04-20 Fri 15:58
インペリアル (カドカワノベルズ)
赤川 次郎
角川書店  1992.12
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 有名ピアニストの影崎多美子は、3年ぶりに開いた演奏会で演奏中に倒れてしまう。彼女はステージに駆け付けたスタッフに、「インペリアル」と呟いて意識を失って病院に運ばれた。命は取り留めたけど、原因は心臓の持病で予断は許されない。
 多美子の2人の娘のうち、気質も才能も母に似た姉のそのみは高いプライドを持つピアニストになり、穏やかな性格ながら音楽家としての才能には恵まれなかった妹の由利は普通のOLとして生活していた。母の入院で先立つ物が必要になり、由利は偶然を重ねながら芸能界に入っていく。
 特殊な世界をディープに突っ込むことなく、ごく浅いけど妙にリアルに描いてあるからわかりやすい。プロの音楽家の激情あり、芸能界の薄汚さあり、不倫を含む男女のドロドロあり。サスペンスと書いてあるけど、ヒューマンドラマって感じ。わかりやすいからサラララ~と読んじゃうけど、終わってから「で?」って思った。
 多美子はどうして「インペリアル」と呟いたのか。音楽用語での「インペリアル」とは普通のグランドピアノより鍵盤が多いピアノの事らしいけど、その謎は最後の最後まで引っ張る。で、ラストに病院から抜け出した多美子の口から聞かされた事実が、もの凄くつまらない。もうちょっと意味ある事だと思ったよー。
 小中学生の頃にやたら赤川次郎を読んでたけど、実家に帰省して暇つぶしに読み返したコレ。当時も、何これつまんないって思ったのを思い出した。そして当時は、あんまり意味わかってなかった事も理解した。芸能界や音楽家の世界って本当にドロドロしてるらしいとか、大人の男女はそう簡単に関係を持つもんじゃないとか。
 読み終えた感想が「つまらない」でも、どんどん読んじゃうのはさすが赤川次郎。何かが起こるんじゃないかって気がしながら読んでしまって、読み終えるまでつまらない事に気付かなかった。そういう意味では、つまらないじゃなくて面白いのかな。
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