元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
2009年5月に読んだ本
2009-05-31 Sun 23:07
『涼宮ハルヒの憂鬱』  谷川 流 (5/31)
『吉原手引草』  松井 今朝子 (5/29)
『さいごの戦い―ナルニア国ものがたり7』  C.S.ルイス (5/27)
『魔術師のおい―ナルニア国ものがたり6』  C.S.ルイス (5/24)
『マドンナ』  奥田 英朗 (5/22)
『終末のフール』  伊坂 幸太郎 (5/20)
『赤朽葉家の伝説』  桜庭 一樹 (5/16)
『QED ~ventus~ 御霊将門』   高田 崇史 (5/12)
『ゴールデンスランバー』  伊坂 幸太郎 (5/10)
『心霊探偵八雲7 魂の行方』  神永 学 (5/7)
『夢の守り人』  上橋 菜穂子 (5/4)
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「涼宮ハルヒ」シリーズ  谷川 流
2009-05-31 Sun 22:50
『涼宮ハルヒの溜息』
『涼宮ハルヒの憂鬱』
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『涼宮ハルヒの憂鬱』  谷川 流
2009-05-31 Sun 21:25
涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)
谷川 流

角川書店 2003-06
売り上げランキング : 343
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 高校に入学したキョンこと「俺」の後ろの席にいた涼宮ハルヒは、文句なしの美少女ながらとてつもない奇人変人だった。「普通じゃないこと」を探し求め、話し掛けるクラスメイトを邪険にする彼女はクラスでも浮いてくるが、何となく1日1回日課のように話しかけていた「俺」。ある日突然、「不思議」を追い求めるクラブを作ることに協力させられることになる。
 結成された「世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団」略して「SOS団」は、「俺」の他に、唯一の文芸部部員だったが部室を乗っ取る際に部員にされた長門有希、萌えでロリ系なのに巨乳という理由だけで連れて来られた朝比奈みくる、季節はずれの転校生だから怪しいという理由だけで勧誘された古泉一樹が加わった。
 他の部員も自分同様に猪突猛進で高飛車なハルヒに付き合わされているだけだと「俺」だったが、実は長門は情報統合思念体によって造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースであり、朝比奈は未来人であり、古泉は超能力者であり、全員が各々の世界で起こっている不思議な現象の中心にハルヒがいて、そのハルヒが選んだ「俺」に鍵があるようだと言う。
 聞くだけは聞いた「俺」だったが、後日彼らの言う事を信じざるを得ないことを次々に経験する。

 人気シリーズ、やっと読めた。断片的に内容を知ってたもんだから、つい後回しにしちゃってたんだよねぇ。薄い本だからちゃちゃっと読めると思えば思うほど後回しにしてしまうのは、もう癖なんだろうな。
 さてこの本について。最初は全然面白くなかった。やたらと直喩・隠喩の多い表現、キョンのツッコミキャラを早く確立させたかったのか皮肉の多い表現が煩わしく感じるし、ハルヒがいかに傍若無人に周囲を振り回すかに力を入れ過ぎてて、話がなかなか進まない。
 やっとSOS団とやらが出来たから話が進むかと思いきや、それでもなかなか進まない。しかも周囲はハルヒの言うことを聞きまくりの振り回されまくりで、嫌ならちゃんと抵抗しろよと読んでてなんかちょっとイライラする。それが半分近くまで続くのが苦痛だった。大半の人気ラノベがそうであるように、無駄に容姿がいい人ばっかだし。
 しかし後半でこの物語の主旨がわかるとようやく面白さが理解できた。なるほど、斬新だ。ハルヒに好き勝手振り回されてる人達が従ってるのには、ちゃんと理由があることもわかった。キョンがハルヒに付き合ってる理由だけは、この巻では理解できなかったけれども。
 長門さんは宇宙人みたいなのが作ったロボットか何かで、朝比奈さんは時間移動してきた未来人で、古泉君はハルヒの精神が不安定な時に発生する閉鎖空間で戦う超能力者・・・って感じの理解でいいのかな?特に長門さんの説明が私の理解の範疇を越えてたために大まかな理解しかできなくて、合ってるのかどうか疑問だけれど。
 最後にハルヒが神かとも言われるような力を無自覚に発揮して世界が壊れかけたけどキョンのおかげで事なきを得たって時点で、この巻はキョン以外全員が不思議能力さんだということを紹介した巻だということがわかった。わかるの遅いかもしれないけど。
 ラノベが売れる時に必須条件であるイラストがいいということ、それだけに留まらないシリーズだと思うんで、今後を楽しみにしていよう。多分あと3~4冊しか読めないとは思うけど。

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『吉原手引草』  松井 今朝子
2009-05-29 Fri 16:49
吉原手引草吉原手引草
松井 今朝子

幻冬舎 2007-03
売り上げランキング : 50315
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 ある男が吉原の大見世舞鶴屋で起こった事件について、葛城を知る人に話を聞き歩いていく。吉原のしきたりなどを聞かされながら、次第に葛城自身と事件の真相に迫っていく話。
 第137回直木賞受賞作。

 話を聞き歩いてる人物は見目のいい男であり、葛城という花魁が関わった事件について話を聞きたがっているということ以外、何もわからない。ただ、章ごとの話者がぺらぺらと自分の仕事のことやら吉原のことを話しているだけという、読んだ事ない新しい手法の小説だった。1章目の一番最初からいきなり一人語りのように話がどんどん進んでいく。
 事件そのものも何のことだかわからない。聞き手らしき男は面と向かって事件について聞きたいとは言わない。舞鶴屋に関わる色んな人達に吉原についてや彼らの仕事内容を聞く中で、さり気なく葛城という花魁の名前を出していくだけだ。
 事件の存在感があまりにも薄いため、吉原内の様子や作法の描写の細かさに感心しながら読んでたらいつの間にか葛城の人柄がわかっていった。事件のことがわかったのは、かなりラスト近く。こんな構成、見たことない。ただ、面白いかどうかというと、ちょっと悩む。事件の存在は早いうちに書かれてるけど、ほとんど流されて吉原の話ばかり。最後の最後にやっとどんな事件だったかがわかり、そのすぐ後にハイ解決みたいな。
 新しいし、凄い。それだけだった。揺さぶられる感覚や深い共感みたいなのはなかったく、ただ、新しい手法だなっていうのと吉原ってそういうとこなんだ~ってだけ。インタビューがつらつら書いてあるようなもんだから起承転結もなく、「展開」みたいなのがあまり感じられなかったから先が気になるっていう感覚もなかったし。
 全く面白くないわけでもなかったけど、斬新な書き方だけが評価されて直木賞受賞になった気がしなくもないのが残念。だってこれ、普通の小説形式で書いてあったらどうだ?面白いか?普通でしょ。
 話を聞いて回ってた男の正体も、正直がっかりだったかな。何者がどういう理由で調べてるんだろうと思ってたら、ただの上司命令かよって。だから読み終わった後、手法の斬新さしか印象に残らなかった。
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『さいごの戦い―ナルニア国ものがたり7』  C.S.ルイス
2009-05-27 Wed 09:24
さいごの戦い (ナルニア国物語)さいごの戦い (ナルニア国物語)
ポーリン・ベインズ 瀬田 貞次

岩波書店 2005-11-11
売り上げランキング : 67226
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 ライオンの毛皮を拾った毛ザルのヨコシマとロバのトマドイ。ヨコシマはその毛皮をトマドイに着せて、アスランになりすますことを思い付いた。長いことアスランが姿を見せていなかったナルニアで、住民たちはライオンの毛皮を着たトマドイをアスランだと信じてしまう。
 カロールメンと手を組んでナルニアの住民達を奴隷のように扱うヨコシマに疑念を抱いたチリアン王は、親友の一角獣・たから石と共に立ち向かう。しかし狡猾なヨコシマやカロールメン軍によって窮地に立たされていく。ナルニアはカロールメンから侵略されることとなった。

 「ナルニア国ものがたり」シリーズ最終巻。先日6巻目を読んだ時は出産近いから最終巻は当分読めなさそうと思ってたのに、何だかんだで読めちゃった。
 この巻は全シリーズの中で一番面白かったように思う。ヨコシマとカロールメン軍のデマのせいでチリアン王子がどうにも身動きが取れない状態になってしまう。今回は敵がちょっと頭を使った作戦で来たもんだから、どう打破するのかとドキドキした。これまでは勇気ある行動を求められることが多かったけど、今回は下手に動くと墓穴を掘ることになる状態。でも、結局はアスランの不思議な力で全て解決なわけなんだけど。
 この最終巻で人間界から来たのは、ピーター、エドマンド、ルーシィ、ユースチス、ジル、ポリー、ディゴリーの7人。彼らは時々会ってナルニアの話をしているそうだ。けどスーザンだけはナルニアを信じない大人になっていて、他の人がナルニアの話をしても昔遊んだごっこ遊びとしか覚えていない。子供時代にこの本を読んでいたらスーザンのようにはなりたくないと思っただろうけど、三十路の私としては仕方ないよなぁって思ってしまう。でもスーザンって最後まで目立たない存在にさせられてる、かわいそうな子でもあるよな。
 それにしても、このラストには驚いた。みんな死んでるって・・・。で、みんなして神の御許へ行ったみたいな?ナルニアが終わり、ナルニアに関わった人はみんな死に、ペベンシーきょうだいの両親も死に、スーザンは残ったわけか。で、懐かしい面々とも再会できる。ちょっと戸惑う結末だな、これは。キリスト教ではこれが幸福なんだろうか。「え?」って感じで終わった。
 「ナルニア国ものがたり」シリーズが聖書を強く意識して書かれてることは随分前に調べて知ってたけど、知らずに読んで理解できただろうか?西洋宗教臭いなぁとは思ったかもしれない。少なくとも知らずに読んでたら、このラストには納得いかなかっただろうな。
 ちなみにアスランはアスランより偉大な存在の息子だから、神そのものではないらしい。神の子=キリストということか。で、エドマンドが『ライオンと魔女』で裏切った時、その罪を許し身代わりとなって処刑されたけど復活したというシーンが既にキリストの復活のことだったらしい。で、ナルニアとカロールメンの戦いがハルマゲドンで、その後、最後の審判でキリストの教えに忠実に生きてきた善人だけがミレニアムキングダムに行けるっていうシーンがこの『さいごの戦い』のラスト。ルイスがそう言ってるわけじゃなくてあくまで一説らしいけど、なるほどなー。まさに宗教書じゃないか。カロールメンはイスラム教という説が有力だとか。そうだとしたら結構蔑視した書き方してる気がしなくもない。アスランはタシ神を信じている若者にも優しかったし認めていたけれども。
 ナルニアが滅んで、隣国であるカロールメンやアーケンがどうなったのかはわからない。ナルニアを竜や大きなトカゲ類が荒らしまわってなくなってしまったシーンはあるけど「ナルニアを」荒らしたとしか書いてない。しかしその後昇ってきて太陽は黒ずんでて死にゆく太陽だとか。カロールメンやアーケンなんかはどうなったんだろう。キリストを信仰してなかったから選別されず、滅んだってことなのか?そういうところ、わざと書いてないのかアスラン信仰者以外はアウトオブ眼中だったのかも不明。ただ、キリスト教じゃない私から見たら、そういうとこちょっと微妙・・・。宗教ってやっぱり怖いもんだ。

1956年刊。アマゾンの画像は新装版。
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『魔術師のおい―ナルニア国ものがたり6』  C.S.ルイス
2009-05-24 Sun 04:01
魔術師のおい (ナルニア国物語)魔術師のおい (ナルニア国物語)
ポーリン・ベインズ 瀬田 貞次

岩波書店 2005-11-11
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 病気の母と共に、おじ・おばの家に住むことになった少年ディゴリーは、隣に住む少女ポリーと中良くなる。ある日彼らは自分達が住む棟続きのタウンハウスの屋根裏を冒険しようとし、ディゴリーの叔父・アンドルーから「立ち入り禁止」と言われていた部屋に入ってしまう。
 アンドルーに騙されて黄色の指輪で別世界へ行ってしまったポリーを助けるため、自分も指輪を嵌めたディゴリー。「世界と世界のあいだの林」で合流できた2人は、また別の世界・チャ―ンから女王ジェイディスをロンドンに連れ帰ってしまった。あちこちで騒動を起こした女王を元の場所に連れ帰ろうとしたディゴリーとポリーは、誤って女王だけでなくアンドルー、馬車屋までも連れてきた挙句、ライオンのアスランが作ったばかりのナルニアに来てしまった。
 こうして、できたばかりのナルニアに悪が持ち込まれた。

 これまでの「ナルニア国ものがたり」シリーズと違い、ルーシー達がナルニアに行く何十年も前の話になる。ということは、ナルニアにとっては何百年か何千年か前になるんだろうか。ディゴリーとポリーが連れてきてしまったジェイディスが白い魔女であり、ジェイディスがロンドンで折ってそのまま持ってきてしまった街灯がアスランの歌の魔法で成長してあの街灯になったり、ディゴリーが後のカーク教授だったり、持ち帰ったりんごから生えた木をたんすにしたのが例のたんすだったりとかして、『ライオンと魔女』の長いプロローグのような感じがした。ナルニアの最初の王って、こっちの世界の人だったんだ~とかいうのも何だか感慨深い。
 しかしこの巻はやけに宗教色が強くなったかな。アスランによるナルニア創造もそうだけど、ジェイディスがりんごを持ち帰るように誘惑するところとかは聖書そのまま。私は聖書にあまり詳しくはないけど、アスランがディゴリーの罪を償うチャンスをくれて、成し遂げたディゴリーに赦しを与える辺りもキリスト教っぽい感じが漂ってくる。ただこれはキリスト教に限ったことではなくて、純粋に子供のための物語として読んでも充分すぎるくらい楽しめるようにできている。
 ところで私は、読みとったのではなく調べてアスラン=キリストを知っている。何でキリストが世界を作ってんの?と思うんですが。キリストは神の子であって、世界を作ったのは父親ってことになる。だからキリストにもその力があるっていうことなんだろうか?日本でも西洋でも欧米でも、神話で「神」と「神の子」って結構隔たりがあるイメージなんだけど、まああくまで私のイメージなんだし、これは宗教本ではなくて宗教をモチーフにした物語なんだから、あんまり深く考えるもんじゃないんだろう。
 ちょっと古い児童書なんで、書き方とか訳し方なんかが古くて読みづらいところはある。特に今回は結構気になった。それがあっても、物語そのものは面白い。全7巻中6巻まできたけど、臨月どころか出産予定日を昨日に通り越してる私にはもうこれ以上は当分読めそうにない。もたもた読んでるからこういうことになったんだけど。ただ、自分の子供には文庫版でもいいから、買ってあげたいなぁ。
 
 1955年刊。アマゾンの画像は新装版。

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『マドンナ』  奥田 英朗
2009-05-22 Fri 16:58
マドンナマドンナ
奥田 英朗

講談社 2002-10
売り上げランキング : 407522
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 40代で課長職にある男達を描く短編集。

「マドンナ」
 妻子ある春彦だったが、部下を好きになって夢想だけで恋愛を楽しむことが何度かあった。その春彦のいる営業三課に、定期人事異動で倉田知美がやってくる。二十代半ながら落ち着いた知美を好きになった春彦は、毎日落ち着かない日々を過ごすことになった。28歳の山口も知美を気に入った様子であり、春彦と山口は次第にむきになっていく。
 かわいいような間抜けなような・・・。いや、やっぱり間抜けかな。知美が想いを寄せる人が突然現れて振られる2人が、またさらに間抜けで。いや、28歳独身の山口はいいんだろうけど、春彦はちょっとなぁ。世の中こういう間抜けな男もいるんだろうか。それとも男ってこんな間抜けばっかなんだろうか。既婚者としては、前者であってほしいところ。

「ダンス」
 第一営業部の課長5人中4人が、飯島部長に合わせて早めに出勤している。田中芳雄も出世のために毎日そうしていたが、出世に興味がない浅野だけは定刻に出勤し、社内のイベントにも一切参加していなかった。浅野のことが気にくわない飯島部長は、芳雄に浅野の5課を他の課に吸収させようという言う。同期の浅野が自分の部下になるのは嫌だし、他の課に吸収されて最大勢力になられるのも嫌だと思った芳雄は浅野を会社の運動会に参加させる約束をしてしまう。
 家では高2の息子・俊輔が大学には行かずダンススクールに行きたいと言い出したと妻の千里から聞かされる。芳雄は絶対に反対だったが「父親は最後の砦だ」と、説得は千里に任せていた。
 赤の他人として見るなら、お金は自分で稼いでダンススクールに行きたいと言う俊輔の目標は立派だと思う。大学くらい出ろっていうのはありがちな親の意見だけど、やっぱ自分の子供にはそう言っちゃうもんなんだろうか。息子と直接話すのは妻に任せて、話そうとしない姿は情けないと思う。うちは、やりたいことがあるならお父さんに自分で言いなさいって家だからなぁ。
 でも、芳雄自身はいい人で弱い人なんだろうなぁ。浅野のために上司に掛け合ったり、運動会では庇おうとしたり。男って・・・と思わずにはいられない話だった。

「総務は女房」
 一度事務系部署へ異動させられることが出世コースだという会社で、恩蔵博史は総務部第四課への異動を喜んでいた。しかしその課は会社の購買部に入っている商店と癒着していた。博史があるべき姿に変えようとすると、部下からも総務部の上司からも反対に遭ってしまった。お歳暮・お中元にもらっている商品券がもらえなくなるのは困るし、どの課もやっていることだからと言う。
 なるほど、会社ってこんな感じで旨い汁を吸うわけか。それで不況になると、公務員叩きをするんだよなぁ。と、公務員一家だった私(過去形)は思う。いやまあ、あんまりこの本には関係ないんだけど。
 私から見ると博史がやってることは正しい。ただ、営業が会社を支えてきてるというのにという傲慢のようなものも見え隠れする。
 この話では博史の妻・幸子が相当むかつく。専業主婦で地域のエコロジー活動をがんばってるのはいい。ただ、エコ見学のためにドイツに行きたいというのはどういうことか。それだけならまだしも、難を示した夫に文句を言うとか。専業主婦は家事奴隷になれと言うつもりはない。ただ、2週間て長すぎだろと思う。たくさん稼いでくれる夫のおかげでPTAのリサイクルなんかに専念できるのに、何だそれ。キレられて言い返せない博史も情けない。最後には、土下座しにきた松田商店の社長との話に勝手に割り込んでくるし。こういう女は嫌。

「ボス」
 田島茂徳の部の部長に、浜名陽子が任命された。彼女は部内の禁煙、ノー残業デー、休日の接待ゴルフ禁止など、次々と新しい取り決めを打ち出す。従来のやり方を曲げられてやりづらさを感じる茂徳は反発するが、いつも理路整然と言い返されていた。
 これの前の話と、上司と部下の立場が逆だな。内容は全然違うけど。これも男共は情けない。自分がやってきたことが正しいと思ってるなら説得してくれよ~と思うけど、茂徳はいっつも説得されてしまう。でも浜名陽子の言うことは受け入れられない。彼女のやり方で全員の士気が下がってるんならともかく、受け入れている人もいて業績も上がってるんなら言うことはないんじゃないだろうか。
 この話も妻の美佐子がうっとおしかった。それ以上に、主人公の茂徳が情けない。さらに、浜名陽子がノー残業デーにこだわった理由がわかったラストでは、ちょっと不愉快になった。

「パティオ」
 鈴木信久が勤務する土地開発会社で再開発した港パークは「職」「遊」「住」をテーマにしていたが、お台場に客を取られて「遊」が失敗していた。信久は港パークの中庭・パティオで毎日読書をしている老人が父親を思い出させて気になりだした。ある日その老人に話し掛けてみたが、翌日から彼は来なくなった。
 パティオで行ったバザーが成功に終わり、上司はもっと客を集めるために次々と案を出してくる。老人がいつも本を読んでいる藤棚を取り壊すと言い始め、信久は正面から反対した。
 信久は老人を見て、自分の父親を思い出していた。信久の母親は去年亡くなっており、父親は寺から借りている畑で家庭菜園を再開したばかりだった。しかし寺は住職が代わり、檀家にお布施や煤払いの人手を要求した挙句、畑として貸していた土地を売ると言いだしていた。
 これはなかなか心温まる話。信久が上司と対立している時に部下・加奈子から老人の情報を聞いて、上司そっちのけで話を聞くシーンなんか楽しくなる。で、オチが藤棚は緑化促進で区の補助金もらってるから無理で、上司の思い通りにはいかないことにスカッとする。
 信久の妻・順子もなかなかの人。寺と檀家の関係に、不満はがつんとぶつけることができる。その分信久の父親に矛先が向いても、きちんと怒れる人だと思う。父親が借りている畑はきっと潰されるんだろう。元気だったお年寄りを老けたなぁって思う時って何だか寂しい気分になる。父親を見る信久からそういう気持ちが伝わってきた。

 会社勤めの男達を描いてるのに堅苦しくなく、安易に不倫とか出てくることもなく、精一杯頑張ってるのに小物感が否めない5人の課長達。ずっと公共施設で働いてきた私には会社の中ってよくわからない。両親は公務員で出世レースとはほぼ無縁だし。これを読んで、中年男の悲哀と苦労が見えてきた。彼らを描いて生き生きと見えてくるのは、凄い。
 しかしこの話に出てくる妻の何人かに腹が立った。私の母親はずっと正社員で働きながら、家事もちゃんとしてきた人だ。私のような人間が出来上がってるから、もしかしたら子育てはちょっと疎かだったかもしれない。まあ少なくとも、犯罪犯したり暴力振るうような人間にはなってない。母親がそうやって生きてきたのを目の当たりにしてるから、専業主婦風情が威張ってると不愉快だ。それを受け入れてる夫も、何なんだろうか。専業主婦の、家族のために自己を犠牲にしているつもりになっている様子は醜い。
 奥田さんはこういう女性までリアルに描いちゃってるから困るな・・・。こういうムカッ腹も含めて、面白い本だった。
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『終末のフール』  伊坂 幸太郎
2009-05-20 Wed 12:11
終末のフール終末のフール
伊坂 幸太郎

集英社 2006-03
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 8年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡するという発表から5年が経った世界。一時期大変な混乱に陥った社会は諦めによる落ち着きを取り戻し、残る3年を静かに迎えようとしていた。そんな世界の、仙台市にあるマンション・「ヒルズタウン」の住人達を描く短編集。

「終末のフール」
 10年前、成績が良く器量も良かった娘・康子は父親である「私」と喧嘩して家を出ており、その2ヶ月後に成績が悪く不器用な息子・和也が自殺し、「私」は妻の静江と過ごしていた。しかしその日、康子が来ると言う。
 この「私」は家族に対して「馬鹿」というのが口癖なんだけど、私の父親と一緒だ。読んでてそれがすごく不快だった。私も康子みたいにブチ切れられたら少しはすっきりしたのかなぁ。でも私はあまり賢くないし体も弱かったしその他諸々で兄妹一金のかかる子だったから、その後ろめたさでやっぱブチ切れるのは無理だな。結婚して自分にとってのホームが配偶者と暮らす家になった時に初めて、そんな事を言われる筋合いのない人間になれた気がした。父親もそれを察してるのか私が結婚したからなのか、私に対してあんまり「馬鹿」とは言わなくなったかな。それか、結婚してからはそんなこと言われるような会話をしてないのかもしれない。
 とまあ、かなり私事を書いたけど。「私」は息子のことを「失敗作」と言うような男だ。静江さんはこんな男と結婚して生活を続けて、幸せなんだろうかと本気で思う。でも静江さんと和也にはこの父娘を仲直りさせるだけの物があったのは事実で、「私」と康子の方は今後の3年間は幸せなんじゃないかな。
 話としてはいいのかもしれないけど、どうしようもなく相当個人的な理由でモヤモヤくる話だった。 

「太陽のシール」
 世界が残り3年になって妻の美咲が妊娠した。子供は3歳までしか生きられない。産むべきか産まざるべきか、優柔不断な「僕」は悩む。そんな折、高校時代の友人と再会してサッカーに誘われた。約束の日に土屋と再会した「僕」は、土屋の子供が先天性で進行性の病気を持っている話を聞かされる。
 この話は産むか産まないかの選択が出た時点で、どうせ“産む”を選択するんだろってわかってしまったのが良くない。最終的に“産まない”を選択してくれたら凄いなと思いつつ読み進んだけど、案の定“産む”を選ぶし。だからラストにあまり感慨はなかった。オセロにはちょっと笑ったけど。

「籠城のビール」
 俺」と兄貴の妹の暁子はかつて人質事件の被害者となるも無事生還したが、その後執拗にマスコミに追いかけられるようになった。犯人が死んだこともあって何の罪もないはずの暁子が根も葉もない記事を書かれ、マスコミの対応を一手に引き受けていた兄もどんどん無表情になっていく。結局暁子は自殺し、その後母親も自殺した。杉田が司会をしていた番組は特に悪質だったため、「俺」と兄貴は小惑星に先を越される前に復讐しようと杉田の家に押し込みをした。
 うーん、いまいちリアリティに欠ける話だったかな。凶悪殺人の被害者ならともかく、強盗に人質に取られた程度の被害者をマスコミがいつまでも追うかなぁ。「俺」は妹の器量が良かったことも関係したと考えてるけど、それだけじゃこのマスコミの執拗さを描くにはちょっと弱い。
 起承転結の「起」の部分で引っかかっちゃうと、後々まで引きずってしまう。杉田一家が本当は自殺をしようとしていたという辺りになっても、ふーんとしか思えなくなっていた。ドアに耳を当てたくらいで警察の喋り声が聞こえるのも何だかなぁ。
 こういう物語は人の営みを見ればいいとわかっていても、リアリティがないと何か入り込めない。

「冬眠のガール」
 両親が自殺して1人残された「わたし」は、「お父さんとお母さんを恨まない」「お父さんの本を全部読む」「死なない」を目標にしていた。4年かけて書斎にたくさんあった父親の本を全て読み終えた日、スーパーで会った中学時代の同級生から「彼氏なしのまま終わりなんて寂しい」と言われ、恋人を探しを新たな目標にする。
 この話は面白かった。恋人探しを始めた美智がビジネス書に書いてあった「新しいことをはじめるには、三人の人に意見を聞きなさい」を実行するんだけど、意見を聞きに行った先での会話が和やかで楽しい。最後にドラマチックな出会いを見付けられそうな辺りで終わるけど、これが出会いだといいなって素直に思えるような可愛い人だった。

「鋼鉄のウール」
 小学生の時に小惑星衝突の発表があり、自分の部屋から出てはならないと言われていた「ぼく」。あたふたと怯え切った父親を見るのがつらいまま、5年が過ぎて16歳になった。相変わらずの父親に自分の家は終わってると確信をして外出したところ、以前通っていたキックボクシングのジムで会長と苗場さんがトレーニングを続けているところを見かける。「ぼく」は再びジムに通い、苗場さんを見ながら5年前までの苗場さんの様子を思い出す。
 終末が来ても変わらないストイックな苗場さんもかっこいいし、死んだ富士岡とのタイトルマッチの対策を続ける会長もいい。けど、父親に「逃げるな」と言えた「ぼく」もかっこいいと思う。苗場さんとのスパーリングは、多分負けるだろう。けど、この終わり方になんだか充足感を感じた。

「天体のヨール」
 首を吊った時に学生時代の友人で天体オタク・二宮との会話が浮かび、そのままロープが切れて自殺に失敗した「俺」こと矢部。もう一度自殺をやり直そうとした時、その二宮から新しい小惑星を見つけたかもしれないと電話があった。「俺」は二宮に会って話しながら、学生時代の彼との会話や後に結婚する千鶴のことを思い出す。
 二宮が話す天体のことや恐竜の話なんかが意外に面白い。そんな中でぽつんと語られる千鶴の死が、そこだけ変に浮かび上がってくる。これまでの5話が変にまとまりがいい分、再び自殺することをほのめかす最後の一文新鮮でもある。直前に「冬眠ガール」の美智らしき女の子が彼氏ができた様子なんでこっちも喜んでたら、最後にふっと鎮めてくる感じ。

「演劇のオール」
 女優の夢を諦めて仙台に戻っていた「わたし」は、インド出身の俳優に感化されて他人の家族を演じていた。早乙女さんの孫、亜美ちゃんの姉、勇也と優希の母をそれらしく演じ、同じマンションの一郎と付き合っている。その日は犬を見付けたため、犬の飼い主も演じてみた。
 「わたし」が別々に接してた人達が最後にしゅっと集まる感じが楽しい。「わたし」が拾った犬が勇也と優希の飼い犬タマ、一郎が実は整体師で早乙女さんの腰を治し、亜美ちゃんが獣医の卵でタマの皮膚病を治そうとし、早乙女さんの家で見たかったビデオが見付かり・・・こういうごちゃごちゃしつつ繋がってる感って結構好きって気付いた。
 短編同士の繋がりが伊坂さんらしいと思いつつ読んでたけど、この話は単品でも伊坂さんらしさが詰め込まれている。

「深海のポール」
 レンタルビデオ屋を営業し続ける渡部の父親は、2年前に同居を始めた時からマンションの屋上に櫓を組み立てている。小惑星がぶつかった直後には洪水が起こると聞いて、人々が水に飲み込まれていくところを見物する予定なのだと言う。
 こういう話って、何かしながら昔のことを思い出すのがデフォなんだろうか。新興宗教にはまりかけてた母親を父親が連れ戻した話や、延滞ビデオを取りに行った蔦原が語る警察官だった父親の話なんかを読んで、この話も思い出満載かとちょっと食傷気味。
 でも、櫓を組み続けるお父さんはやっぱりちょっと愉快で楽しかった。

 同じマンションの住人達を描いてるから物語同士に繋がりがあって、さっきまで主人公だった人が通りかかったりする様子を読むって楽しい。こういう連鎖モノって好き。
 地球の終わりが発表されて荒れた時期を過ぎ、人々が運命を受け入れる心境になりつつある時代を描くというのは新しかった。でも、8人の主人公達全員が達観しててちょっとつまらなくも感じた。みんなして良い子ちゃんすぎだな~と。だから全部同じような雰囲気しか感じられなくて、途中で飽きた。できれば1~2人はっちゃけた人も見たかったな。地球滅亡発表直後に人を殺しまくった人とかさ。はっちゃけた人はみんな通りすがり程度の脇役でしかなかったのが、ちょっと物足りなかった。
 それにしても、8年後に地球滅亡ってなかなか早めの終了宣言だよなぁ。3日後に滅ぶとかだったら、私は閉じこもって家族と過ごしたいと思うところなんだけど。8年だと、滅亡まで生きるか今すぐ死ぬかを選ばないといけない。できるだけ長く家族が一緒にいることを選んだとしても、そのために日々の糧を得る努力が必要だ。そうして外に出て、誰かに殺されたりするとか嫌だし。自分がそうなるのも嫌だし、配偶者がそうなったのを知らないで家で待ち続けるのも嫌だ。だからと言って一緒に出掛けようものなら、いざという時に配偶者の足を引っ張るのは私になってしまって怒られそうだ。うーん、地球滅亡宣言はギリギリの間際まで国家機密でお願いします。
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『赤朽葉家の伝説』  桜庭 一樹  
2009-05-16 Sat 00:01
赤朽葉家の伝説赤朽葉家の伝説
桜庭 一樹

東京創元社 2006-12-28
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 子供の頃に“辺境の人”から紅緑村に置いていかれ、多田夫妻に育てられた祖母の万葉。彼女には時々、人の未来が視えた。村一番の名家であり、製鉄所を営む赤朽葉家の夫人・タツに請われて赤朽葉家の息子・曜司のもとに嫁いだ万葉は、「赤朽葉家の千里眼奥様」と言われて大切にされる。その万葉は4人の子供を生みそれぞれ、泪、毛毬、鞄、孤独と名付けられた。
 万葉と曜司の長女で、美しくも気性の荒い毛毬はレディースの頭を張っていた。親友の死に取り憑かれたまま中国地方を制覇してから引退したが、高校卒業後は引退してマンガ家になる。人気絶頂のマンガ家として自分の半生を題材にしたマンガを描く中、兄の泪が不慮の死を遂げたために彼女が婿養子を取ることになった。週刊連載に追われながら生きた毛毬は最終話を描きあげた直後、「わたし」が9歳の時に死んだ。
 毛毬の一人娘「わたし」こと瞳子は家族の他に、祖母の友人・みどりや、毛毬の替え玉・アイラ、母のかつての担当編集者・蘇峰と共に暮らし、母や祖母の昔の話を聞きながら成長し、ユタカと付き合っている。祖母・万葉が死ぬ直前に残した「わしはむかし、人を一人、殺したんよ。だれも、知らないけど」という言葉が気になり、一体誰を殺したのかを調べることにした。

 第一部から第三部まで製鉄所を通して語られる無骨な時代の流れと、どことなく浮世離れした赤朽葉家の人々のコントラストが不思議ときれいな物語だった。万葉の時代は昭和の中期だけど、鳥取を舞台にしているためかもっと昔に感じる。都心は近代化しつつも、田舎はこんな風に神話が息づく時代だったんだろうか。サンカに置いていかれた万葉の不思議な雰囲気がとても神秘的だ。
 毛毬の時代は昭和後期。「懐かしの~」系のTVで見るような世界に、猛女である毛毬に視点を置きながらも変わらず存在している万葉の姿が美しい。時代背景的にも小気味良い語り口調で毛毬の青春時代が語られている。しかし瞳子は、毛毬が初めて描いたマンガには、毛毬には可視できなかった異母妹・百夜そっくりな女を登場させていたことを知っている。本当は見えていたという瞳子の推察は、正統派不良のイメージだった毛毬の固くて暗い意志が見えてちょっとぞっとさせられる。
 瞳子の時代は「ニート」という言葉も出てきていることから完全に現代を感じさせられる。ここにきて突然ミステリー要素が入ってきて、万葉が殺したのは誰か?それを調べる瞳子という具合になるけど、そこはちょっと流れにそぐわない感じがしたかな。ミステリーの解答は実に万葉らしかったんだけど、もうちょっと自然に織り込んで欲しかった。
 面白い小説というより美しい文学。色調表現が終始、物語の幻想的なイメージに拍車を掛けていた。
別窓 | [さ行の作家]さ行その他の作家 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『QED ~ventus~ 御霊将門』
2009-05-12 Tue 23:52
QED ventus 御霊将門 (講談社ノベルス)QED ventus 御霊将門 (講談社ノベルス)
高田 崇史

講談社 2006-10-06
売り上げランキング : 224641
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 週末、姉のために靖国神社案内にかこつけてタタルを花見に誘った沙織。しかしタタルはいつも通り一方的に神社の説明に入り、折角だから近くにある平将門を祀る築土神社にもお参りに行こうと言う。その翌日、奈々と沙織はタタルと共に日本三大怨霊の一人・平将門の史跡を巡るために茨城に行くことになった。

 平将門って平清盛の父親って思ってた。清盛の話には全くならなかったんでおかしいなと思ってネットで調べたら、血縁関係はあるけど親子ではないようだ。全然知らなかった・・・。
 さて、平将門について何も知らなかった私。こんな名前が日本史の授業で出てきた記憶はあるって程度だ。読み終わっても結局なにした人なのかはよくわからなかったけど、それでもまあ面白かったかな。このシリーズを読み続けてきてるから、ここでも「鬼」や「タタラ」に繋がってくるのかと驚かされる。
 面白いと思ってるわけでもないのに何となくこのシリーズを読み続けてるのって、昔の人が神社や祭りなんかに裏の意味を持たせてたり、勝者が伝説を捻じ曲げていることを教えてくれてるところにあると思う。歴史って奥深いなって素直に思う。
 さて、この巻では人が死ぬような事件は起こらない。代わりに取ってつけたように神山禮子が出てくる。千葉の大学付属病院で働くようになった神山が休みを利用して成田山に行く。そんな彼女の後をつけるストーカーの目線も同時に描く。この話、シリーズ中で最も不要な話に思える。次作で神山さんはまた事件に巻き込まれそうなことが書いてあったけど、それにしても不要。
 あと、沙織は登場以来レギュラーになってるけど、そろそろ奈々とタタル2人で歴史の話をするシーンが欲しいかな。小松崎は一緒にいても黙ってることが多いけど、沙織はちょっとうるさいんで登場はもうちょっと控えめがいいなと思ってる。
別窓 | [た行の作家]高田 崇史 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『ゴールデンスランバー』  伊坂 幸太郎
2009-05-10 Sun 12:05
ゴールデンスランバーゴールデンスランバー
伊坂 幸太郎

新潮社 2007-11-29
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 青柳雅春は大学時代の友人・森田森吾に呼び出される。ファーストフード店では学生時代と変わらない様子だった森田森吾だったが、彼の車で移動後におかしなことを言い始めた。自分は何者からか青柳雅春を誘導するように命令されているから、逃げろと言う。
 仙台出身の金田首相が凱旋パレードを行う中、爆弾を取りつけたラジコンが飛んできて金田首相が暗殺された。森田森吾に言われるがまま逃げ出した青柳雅春は、自分が首相暗殺の容疑者として追われていると知る。
 学生時代に青柳雅春と付き合っていた樋口晴子はニュースを見て驚くが、次第に彼が犯人ではないと確信を深めて、些細な形ながら自分にできることをやっていく。しかしその行動は青柳雅春にとって大きな助けとなる。
 身に覚えのない罪で追われることとなった青柳雅春の3日間の逃亡生活と、逃亡しながら思い返す学生時代を描く。

 2008年の本屋大賞受賞作品。ケネディ暗殺事件の犯人にされたオズワルドをモチーフにした小説であり、同時に個人情報を監視されることになった社会というIFワールドも作りだしている。
 伊坂さんの作品って読み終えた直後にもう一度読みたくなる物が多いけど、これは違った。読んでる最中に最初から読みたくなったという不思議な小説。最初から読みたくなるけど、続きも気になるという物凄いジレンマだった。結局、とりあえず全部読むことを優先させたけど。
 仕組まれた出会い、予め捏造された数々の証拠、街中に設置されたセキュリティポッドからの情報監視により追ってくる警察と、まるでアメリカ映画にありそうなストーリーだった。でも絡んでくる人物達に深みがあるのは小説ならではだと思う。ちょっと展開が強引なところもあるけど、その強引さこそエンタメとして楽しめる箇所なんじゃないだろうか。
 面白いのは構成。最初にニュースを通した般市民の視線から入り、次に20年後にこの事件を調べたルポライターか何かの視線になり、それからやっと当事者・青柳雅春の視線になる。冒頭から引き込まれるという感じではないけど、「ん?何が起こるの?何が言いたいの?」というモヤモヤ感が青柳雅春の主観になった途端に一気に解放されていく。私は3章までをサクサクと流し読みしたから、4章に入って事件が起こった瞬間から最初から読み始めたくなったわけで。20年後の視点で事件の関係者達がどうなったかを先に説明されてるから、「この人は今後こうなっちゃうんだよね」と思いながら読むのは意外と快感だった。
 逃亡に関わっていく人達がなかなかクセがあって、その辺はやっぱ伊坂さんだなぁと思った。殺人鬼の「キルオ」なんか殺人鬼なのに憎めなし、私はむしろあの飄々とした感じは好きだ。コンビニにたむろしている若者達もピリピリした中で和んだし、保土ヶ谷さんの胡散臭さも面白い。ただ、偽青柳雅彦がいるという情報があった病院と、カズが殴られて入院した病院と、保土ヶ谷さんが入院している病院が一緒っていうのはちょっと強引すぎかなと。一緒の病院でないと話が繋がらないし、それまでの強引な展開は楽しめたんだけど、クライマックスにつながるシーンが強引だとちょっとだけ萎える。
 とはいえさすが伊坂さん。人間同士のつながりに、じんとくるものを残してくれる。樋口晴子だけじゃなく、2年前に強盗から助けたアイドル、学生時代にバイトをした花火屋の轟さん親子なんかの協力で見事逃げ切るわけだけど、そうやって助けてくれた人達の存在こそが青柳雅春の人生だったんじゃないだろうか。
 読み終わっていまいちスッキリしないのは、青柳雅春の逃亡が成功して終わりだという点。ケネディ暗殺事件同様、誰が仕組んだ陰謀だったのか等の真相がわからない。青柳雅春もオズワルドのように暗殺されるかと思ったけど、最終的には逃げ切れた。じゃあ真相究明に関しても違っていいじゃないか!誰が仕組んだのか知りたいんですけど!みたいな。
 自分の無事を知らせる方法は面白かったんだけど、できれば青柳雅春には大手を振って歩ける生活ができるようになってほしかった。でも敵は結構ビッグな存在だろうから、真相を暴いて世間に公表するような話となると伊坂ワールドじゃなくなるかな。悪い言い方をすると、伊坂さんの手には余るストーリーになってしまいそうだ。この辺は好みの問題で、ただ単に私が勧善懲悪が好きってだけなんだけど。悪い奴はちゃんとお仕置きされてほしい。
 事件が起こってからの疾走感は、さすが本屋大賞受賞作だけある。やっぱこの賞が一番ハズレがない。ていうか、この賞ができて以来ずっとノミネートされてる伊坂さんが凄いんですけど。今回ようやくの大賞受賞、おめでとうございます。
 余談だけど。ルポライターみたいな人がこの20年後にこの事件について調べたって設定のせいなのかな?登場人物がずっとフルネームで書かれてた。だから私もそれに合わせて感想書いたけど、なかなか面倒だった。あんまり親近感湧かないし。勝手に感想書いてる私の心情の問題なんだけど。
別窓 | [あ行の作家]伊坂 幸太郎 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『ダーリンは外国人  with BABY』
2009-05-10 Sun 00:27
ダーリンは外国人 with BABYダーリンは外国人 with BABY
小栗左多里&トニー・ラズロ

メディアファクトリー 2008-03-12
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 基本的にマンガについての感想は書かないつもりでいたんだけど、今の自分が参考になることも多かったので感慨深く読めたんで記録しておこうかと思う。
 出版間もない頃に本屋で見かけて“新しいの出てるんだ~”と何気に立ち読みしかけたんだけど、出産後のシーン「あなたは炭水化物なの?」で笑いそうになって本を置いた。そのうち図書館で借りるか~と思いつつ伸ばし伸ばしにしてると、私が妊娠。さらに何だかんだで後期に入ってようやく読めた。
 これまでのシリーズで愉快夫婦だった2人だけど、子供が出来た後はかなり自由が制限されているのが見てとれる。私はそもそも選択子無しになろうか悩んでたくらいだから、何もない時にこれを読んでも「質落ちたな。まあ部分面白いけど」としか思わなかっただろう。しかし私の突然の妊娠→産むか→9ヶ月間の妊婦生活で、当然この本を見る目が変わる。
 とりあえず、出産はとても痛いということはわかった・・・。実は今もう臨月。陣痛が来るのは明日か?明後日か?いきなり破水しないでくれよ・・・など切実に思いつつ、痛さに関してはあまり考えないようにという後ろ向きな感じで過ごしている。これを読んで、やっぱ痛いんだなぁとしみじみ思っている。
 しかも「おっぱいマッサージ」ってやつ、痛いのね。何か色々不安になってきたけど、もう産院に身を委ねようと思ってる。初産だし。
 子供のために色々考えて夫婦で相談して決めてって悩んでいかないといけないんだなぁ。とりあえず五体満足で生まれてください。足の裏、揉むぞ。
別窓 | [あ行の作家]あ行その他の作家 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『心霊探偵八雲7 魂の行方』
2009-05-07 Thu 20:21
心霊探偵 八雲〈7〉魂の行方心霊探偵 八雲〈7〉魂の行方
神永 学

文芸社 2008-02
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 遠足で来た鬼無里(きなさ)で、智也が大きな杉の木の傍らに積み上げられた石を崩してしまった。その直後、側にいた由美子が倒れてしまう。その少し前に撮った写真には、真っ赤な瞳をした女性の幽霊が写り込んでいた。
 真人は以前自分を助けてくれた教育実習の先生に助けを求める手紙を書く。手紙を受け取った晴香は、八雲と後藤刑事と共に真人が住む長野県の戸隠に行くことになった。晴香達が長野に着くと、由美子は行方不明になっていた。
 八雲と後藤、晴香と真人に分かれて調べを進めることにした。晴香は45年ほど前に行き倒れになっていた親子がいたという話を聞く。凛という女性とその息子は村の診療所で生活させてもらえるようになったが、地主の息子が診療所に運ばれた揚句に死んだ件から疎まれるようになった。診療所の先生が渓谷に転落して死んだ日、凛と息子も姿を消した。凛と息子は両目が真っ赤で、息子の額には角があったという。
 一方東京で。警察は妻殺しの犯人の医者の家宅捜索で七瀬美雪と思われる女性のカルテを発見していた。宮川課長と石井は七瀬美雪が都内に潜伏している可能性があるとして、それらしき場所を片っ端から調べていく。

 4巻で自分を呪われていると言ってた少年・真人が再登場。何とかして友達を助けたいと頑張るけど、あんまり役に立ってないような・・・。普通ならこういう少年は最終的にキーパーソンになったりすると思うんだけど、まあいいかと肩の力が抜けるのがこのシリーズ。
 45年前の事件で両目が真っ赤な親子。しかも八雲の母親・梓が発見された場所、戸隠。八雲に関係がないはずがないという展開で、その関係がなかなか明らかにされないのがちょっともどかしかった。絶対に血縁者か何かだろ!?と思い続けていたけど、八雲が凛の孫だと言い出すのは結構終盤。
 かつて村人から迫害された凛達の話をしているだけの人に食ってかかる晴香も、今回はちょっとウザいように思う。
 後藤が勝手に仕事を抜けて長野まで行ったり、長野県警にでかい態度取ったり、宮川が担当の違う石井と組んで美雪を探す辺りも、警察ってそんな緩い組織じゃないって!と何度もツッ込んだ。細かい点がおかしいのは今さら気にしないけど、今回の巻は違和感を覚える所が多すぎる。
 七瀬の潜伏先から見付かった八雲の父親の生首は、結局七瀬に奪われてしまってまた謎。今後は彼女と八雲との対立になるんだろうけど、今回の巻はその辺があまり進まなかったように思う。5巻で八雲の過去が明らかになり、6巻で一心が他界したけど、7巻はちょっと行き詰った感じ。今回の事件が凄惨でも、凛が殺されたのは45年前で、八雲の父親が凛を殺した男達に復讐したのが25年前。どっちも時効なうえ、犯人全員死んでるし。
 凛の殺され方が妙にエグくてちょっと浮いてるのが、後味の悪さを手伝ってるかもしれない。
別窓 | [か行の作家]神永 学 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『夢の守り人』  上橋 菜穂子
2009-05-04 Mon 00:19
夢の守り人 (偕成社ワンダーランド)夢の守り人 (偕成社ワンダーランド)
二木 真希子

偕成社 2000-05
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 バルザはガルシンバ<奴隷狩人>から助けた歌い手の青年・ユグノがリー・トゥ・ルエン<木霊の想い人>だと知って、タンダに合わせるために一緒に連れていくことにした。
 一方、娘のカヤが眠りから覚めないと長兄から相談されたタンダ。病気や呪いではなく<魂抜け>だと診断し、師匠のトロガイに相談した。トロガイは星読博士のシュガから、新ヨゴ皇国の一ノ妃も眠り続けているという話を聞いており、<ナユグ>に<花の夜>が訪れているらしいと判断した。
 トロガイは昔、<花>の宿主の魂の母になったことがあった。<花番>との間に生まれた息子は<花>の成長を助け、<花>が満開になったら受粉してくれる<夢>を誘う。たくさんの<夢>たちに花房に宿って夢を見てもらい<花>は種を実らせ、その種が発芽した時にまた新しい世界が生まれるのだそうだ。
 カヤを診たトロガイは何もせずに帰ったが、タンダは1人で<魂呼ばい>をすることにした。しかし術に失敗し、<花番>に体を乗っ取られてしまう。
 また<ヨゴノ宮>では、チャグムは教育係のシュガからトロガイと会っていることを聞かされた。1年半前に自分を助けてくれたバルザ、タンダ、トロガイをひどく懐かしく思い、帝になりたくないと思ったチャグムもまた、眠ったまま目覚めなくなってしまった。

 トロガイの若い頃の話があったこと、チャグムが再登場したことは、このシリーズに感銘を受けた者として非常に嬉しい。でもちょっと今回の話は狭い範囲に詰め込み過ぎかなぁ。ユグノの歌に誘われて<夢>を見続ける人の中にカヤに一ノ妃にチャグムがいるなんて、なかなかの密度。将来への空しさと旅の歌読みへの恋心を抱くカヤ程度の人が<夢>から覚めないんだったら、同じような状態になる人がもっと多くても―つまり流行病みたいになっててもいいんじゃないかと思うし。そのユグノの魂の母親がトロガイで、追われているユグノをたまたま助けたのがバルザで・・・って偶然すぎかと思う。
 <花番>を乗っ取ったのが息子を亡くした一ノ妃だとか、それだけで乗っ取られるような脆弱な存在なのかと疑問。元々心に何かを抱えた人が<夢>に誘われやすいようにできているんなら、<花番>がそんなに簡単に取り込まれちゃだめじゃないか。もちろんただの息子ではなく、ゆくゆくは帝になる身分だった第一皇子。子供を亡くすと同時に与えられるはずだった地位まで無くなってしまうというのは、普通の民草には経験し得ない感情ではある。それを考えても、ちょっと弱いかな~と。最終的にはトロガイにあっさり説得されて<夢>から覚めるし。もっとドロドロとした私利私欲にまみれた人だったらもうちょっと納得できたかもしれない。トロガイやタンダみたいに、呪術師の素質がある人だったとかでもいい。何かもうちょっと・・・という気がする。
 そもそも1巻、2巻が素晴らしすぎたからこう思っちゃうんだろうな。普通の児童ファンタジーなら“児童向けだし、こんなもんか”と思ってたに違いない。そういう点で言うと、十分面白いけど1、2巻に比べるとちょっと劣るかな。
 とはいえ、バルザは相変わらずかっこいいし、運命を受け入れざるを得ないチャグムの弱さも強さも描ききっているところはさすが。また、バルザがタンダをいかに大切に想っているかが伝わってきて、タンダが操られていることが切なかった。タンダはバルザに恋愛感情を抱いてるようだけど、バルザの方の感情は明確にはされない。けど、タンダがバルザの心の拠り所になっていることだけは痛いほどわかった。

 ところで。このシリーズはすごく面白いんだけど、内容を上手くまとめるのに苦労するんだよなぁ。色んな想いが交錯してて、それも備忘録に収めておきたいと思うと結構大変。もっとまとめ上手になりたいと思う。
別窓 | [あ行の作家]あ行その他の作家 | コメント:0 | トラックバック:0 |
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