元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
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2008年12月に読んだ本
2008-12-31 Wed 12:44
『チーム・バチスタの栄光』  海堂 尊 (12/20)
『一瞬の風になれ 第三部 ドン』  佐藤 多佳子 (12/12)
『一瞬の風になれ 第二部 ヨーイ』  佐藤 多佳子 (12/7)
『切羽へ』  井上 荒野 (12/5)
『一瞬の風になれ 第一部 イチニツイテ』  佐藤 多佳子 (12/3)
『夜は短し歩けよ乙女』  森見 登美彦 (12/1)
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『チーム・バチスタの栄光』  海堂 尊
2008-12-20 Sat 21:33
チーム・バチスタの栄光チーム・バチスタの栄光
海堂 尊

宝島社 2006-01
売り上げランキング : 32831
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 東城大学医学部病院の誇る心臓手術左心室縮小形成術「バスチタ手術」は、アメリカから招聘した桐生臓器制御外科助教授を中心に構築された「チーム・バスチタ」によって非常に高い成功率を誇っていた。ところが立て続けに3件の術死が起こる。
 不定愁訴外来の「俺」こと田口公平は、この件についての内部調査を院長から依頼された。全くの専門外であり院内の出世争いから早々に身を引いていた「俺」は戸惑ったが、リスクマネージャー委員会の検討事案に該当するかの予備調査をしてほしいとの頼みを引き受ける。
 次の手術は三日後。アフリカの少年ゲリラ兵へのバチスタ手術はメディアから注目を浴びているだけでなく、失敗は国際問題に発展するかもしれないというプレッシャーも帯びていた。
 たまたま3件の失敗が起こったのか、医療事故なのか、それとも何者かの故意によるのか。この件を引き受けた田口は、「チーム・バチスタ」のスタッフ全員の聞き取り調査から始める。

 2005年に『チーム・バチスタの崩壊』で「このミステリーがすごい!」大賞を受賞。賞自体に歴史が浅いこと、賞のネーミングセンスが胡散臭いこと、医療問題を扱うと聞いて何だか敬遠していたこと、何やかんやで全く読む気はなかった。でも、映画化、ドラマ化とあまりにも話題だったことと、私が好きな討論番組で海堂尊さんがゲストとして来てたことがあって、ようやく図書館で予約を入れた。人気すぎて、何か月待ったかわからない・・・。
 読み始めても、用語が難しいからゆっくりとしか読めなくて難儀した。漢字で書かれる医学用語は、日本人ならその字面を見れば何を意味してるかわかる。でも日常用語とはかけ離れてるんで、ひとつひとつを理解しつつ読もうとしたら進まないことこの上ない。飛ばし読みが苦手なんで、じりじりしながら読んでった。
 3件の手術失敗は、たまたま3件続いただけなのか、医療事故なのか、事件なのか。素人が読んでも見当がつかない。だからこの本がどういう方向に向かっていくのか全くわからないまま、4件目の謎の術死が起こっても“これ、ちゃんと面白く終わるのかな?”と雑念に囚われまくりながら読む。
 でもその後登場した外部からの調査者、厚生労働省の役人「ロジカルモンスター」の白鳥が来てからようやく事件として進んでいく方向が決まって安心して読めるようになった。ロジカルモンスターのロジカルがあんまりロジカルじゃないのは置いといて、人を追い込みながら尋問していくやり方が結構面白い。パッシヴ・フェーズだのアクティブ・フェーズだの、その他大量のカタカナ用語は正直その場限りの理解だったけれども。
 主人公・田口の一人称で語られているのに、彼の影は薄い。濃い他の登場人物達の中では平凡な人物なのかと勘違いしそうになるけど、時折挟まれる回想シーンでは味わいある人物のように描かれたりする。そんな彼による冷静な思考が結構面白い。
 でも最後は、犯人はしっかりと不幸になって欲しかったな。あまり重い罪には問われないような終わり方がモヤッとする。殺人を題材に扱うんなら、ちゃんと罰せられて欲しい。現実の医療事件が罪に問いにくい物が多いとしても、フィクション内くらいすっきりしたいじゃないか。でも事件後の病院側の対応はいい。高階院長の頭の良さに感心しつつ読み終えた。
 日本の医療問題は、恥ずかしながらこの本を読んで初めて気付いた。日本では子供の臓器移植は認められていない。そのために寄付金を募って渡米して手術を受ける話が美談としてメディアに取り上げられたりする。日本で子供の臓器移植ができないという問題を本気で取り上げるメディアがないこと。言われてみれば確かに変な国だな。焦点を絞ってあるだけで、医療って他にも多くの問題があるんだろうな。
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『一瞬の風になれ 第三部 ドン』  佐藤 多佳子
2008-12-12 Fri 23:26
一瞬の風になれ 第三部 -ドン-一瞬の風になれ 第三部 -ドン-
佐藤 多佳子

講談社 2006-10-25
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 充電期間である冬が終わり、「俺」は3年生になった。たくさんの新入部員が入ってきたが、中でも鍵山は根岸や桃山よりも足が速い。400mリレーのオーダーは鍵山、連、桃内、「俺」となった。しかし鍵山は癖のある性格で、尊敬する連にはべたべたと付きまとうが2年の桃内とはほとんど口をきかないでいた。
 その鍵山が、県記録会で肉離れを起こす。根岸が代走して県大会を通過したところで鍵山は復帰できたが、今度はバトンワークがなかなか上手くいかない。オーバーハンドからアンダーハンドに変わったバトンパスになかなか慣れることができず、そんな鍵山で南関東大会、総体と進めるにはリスクが高いと思ったメンバーは1走を根岸で走ることを希望する。その「俺」たちに根岸は「走らない」と宣言した。

 3年生になった新二は緊張で腹を下すこともなくなり、部長としての目配り気配りをする先輩になっていた。地道な努力によってどんどん速くなり、大会上位で上に進んでいく。髪も黒に染め、何となくバカっぽさがなくなっていったように思う。
 才能だけで走っていた連も地道なトレーニングを重ね、着実に体力をつけていった。
 新二は部長として様々な部員に視線を向ける。皆でインハイを目指すけど、通過できる人とできない人は当然出てくるわけで。自分の出番を控えながらも失敗した部員の精神フォローまで引き受けようとする新二はきっと、守屋さんを超えるいい部長になってると思う。
 若菜ちゃんとの恋の話は、序盤に急接近したかと思ったらそれっきりだった。インハイ予選を勝ち抜け、思わず新二に抱きついて喜ぶ若菜ちゃん。気を使って2人っきりにする部員達。結局皆には双方の気持ちはバレバレだったみたいで、後日鳥沢さんが「若菜も鈍いけど、あんたも鈍い」と言ったんで安心した。やっぱ若菜ちゃんも遠い存在の仙波より、不器用だけど努力家でいいヤツでどんどん速くなっていってる新二のほうがいいよね。新二は総体終わったら気持ちを伝えるって言ってたけど、南関東大会のシーンで終わったんで結局2人の恋はそれ以上見ることができずに残念だった。
 この巻ではてっきりインハイ行くのかと思っていたら、南関東大会2日目にリレーで鷲谷を破って優勝した日で物語が終わる。でもクライマックスは爽快すぎて、あの問題児の鍵山が新二に抱きついて喜んだシーンで読んでてこっちも嬉しさが爆発した。
 表現が過剰すぎないのに人物達の気持が色々伝わってきて、新二も連も成長していってて、本当に読んでて楽しい本だった。3巻は競技シーンが多くて、正直誰が何者なのかわからなくなってたりもしたけど十分楽しかった。
 新二たちはインハイで何位になったんだろうな。大学でも陸上やるのかな。新二と若菜はやっぱり付き合うんだろうな。クライマックスの試合には健ちゃんにも来てて欲しかったけど、インハイには来たのかな。終わった後にも広がっていくこの読後感、いいね。
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「一瞬の風になれ」  佐藤 多佳子
2008-12-08 Mon 12:26
『一瞬の風になれ 第三部 ドン』
『一瞬の風になれ 第二部 ヨウイ』
『一瞬の風になれ 第一部 イチニツイテ』




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『一瞬の風になれ 第二部 ヨウイ』  佐藤 多佳子
2008-12-07 Sun 23:26
一瞬の風になれ 第二部一瞬の風になれ 第二部
佐藤 多佳子

講談社 2006-09-22
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 健ちゃんはJリーガーになり、谷口若菜が短距離から中距離に転向し、連は夏に練習と試合をすっぽかしたペナルティに真面目に取り組んでいる。そんなシーズンオフを経て春になり、後輩が入り、そしてインターハイを迎える。
 インターハイ予選のリレーで連が肉離れを起こし、関東高等学校陸上競技大会には進出したものの、その大会では5着。それ以上先には進めないまま、3年生が引退する時期になった。部長の守屋に呼ばれた「俺」は、そこで次期部長に任命される。
 若菜は次第に打ち解けてきて、メールのやり取りや会話も増えた。健ちゃんの試合に誘ってみたらあっさりとOKをもらい、デートが実現する。この日のことを思い出すと「俺」は甘苦しい気分になり、どんどん若菜のことが気になっていく。
 サッカー馬鹿の家に生まれながらサッカーを辞めた「俺」は、家族が自分の走りを見に来る事をずっと拒んでいた。しかしやっと、両親に秋の新人戦関東選抜に来てもらうことになった。リレーでは全員が調子良く、4位で予選通過。しかしその日、大好きな健ちゃんが交通事故で大怪我をする。
 大会から病院に駆け付けた「俺」に、健ちゃんは「そんな格好で病院に来るな」と怒鳴りつける。手術が必要でリハビリを含めて1年以上かかる怪我で、復帰は不明。そんな状態の健ちゃんの元にチーム・ジャージで駆け付けたことをひどく後悔した「俺」は、その日から部活に行けなくなってしまう。

 主人公の新二は、自分の実力を未だに過小評価しつつも着実に力を付けている。大人しい若菜とも親密さが増して若い恋の予感。後輩もたくさん入り、特にサプリメントやスポーツ小物オタクの桃内が愉快だ。みっちゃんっていい先生だなって何度も思わされたりとかして、これはキャラ読みだけでも絶対楽しいはず。
 第一部よりワクワクして読んでいったけど、後半は一転して健ちゃんの試練にどう向かい合えばいいのかわからずにいる「俺」が痛々しい。怒鳴った健ちゃんではなくて自分を責める新二を、親も連もどうすることもできなかった。けど、きっかけを作ってくれたのは若菜ちゃんだった。
 きっかけはきっかけに過ぎない。でも、そこから新二を捕まえた連の「かけっこ」という言葉に拍子抜けすると同時に、新二を魅了する連には新二が必要なんだという事実には泣かされる。
 そして、神谷家のことも。1巻では母親は健ちゃんのおっかけやってて、新二も大切だけど健ちゃん優先って感じだった。けど、健ちゃんの怪我で初めて母親は決してそれだけじゃないことがわかった。息子のどちらかが体調を崩すと自分まで具合悪くなり、怪我した健ちゃんがつい怒鳴ったことはちゃんと叱る。新二は「うちは兄弟で母親を取り合うのではなく、俺と母親で健ちゃんを取り合っていた」みたいなこと言ってるけど、やっぱ母親は新二の母親でもあることには変わくて、ちゃんと愛されてるんだなって思った。
 新二があんまり思慮深い子じゃないんで、新二目線の書かれ方はどうしても全体的に軽い。でも書かれていることは意外に深く、気付いたら感動させられている。次は3巻だ。とても楽しみで、「ドン」の言葉が私を煽ってるようにも感じてしまう。
 競技シーンのリアル感のなさは相変わらずで、これはもうこういう人だと割り切ろう。

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『切羽へ』  井上 荒野
2008-12-05 Fri 22:21
切羽へ切羽へ
井上 荒野

新潮社 2008-05
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 島唯一の小学校で養護教師をしながら画家の夫と静かに暮らす「私」こと麻生セイ。春休み最後の日、「私」は島に転任してきた音楽教師の石和聡と出会った。それ以来石和の存在が気になり、何となく目で追ってしまうようになっていく。
 第139回直木賞受賞。

 夫ある身の主人公が突然島に来た男性に惹かれていく話だということは知っていたけど、本当にそれだけの話だった。
 東京に住んでいる妻帯者と不倫関係を続けている月江、憎まれ口を叩くことがコミュニケーションとなっているような老婆のしずかさん、あどけない子供達なんかに囲まれた「私」は、静かに石和のことを目で追っている。「私」自身は惹かれていることに気付いていないような描かれ方にもどかしさすら感じる。
 前半では取り立ててどうということもない島での日常が描かれ続けたけど、あまりの文章の巧みさにするすると読んでしまった。流れるようなきれいな文章で、半分以上読んでから、あれ?まだ何も起こってないような・・・と我に返った。だからといって詰まらないわけじゃなくて、この文章を読んでいること自体が目的になっているくらい巧みな文章だった。さすがサラブレット、と言うと失礼かな。
 物語は何も進展しないながら、夫との仲は少しずつすれ違いが起こるようになってくる。これも変化が小さすぎてわかりづらかったけど、最初の方だけ再読してからそう思った。最初は夫婦が穏やかに愛し合っている感じだったのに、いつの間にか夫の影が薄く感じるようになっているように思う。「私」視点を書きながら少しずつ仕掛けられた作者の罠に、私は次々と引っかかっていったみたい。いつしか印象の薄い夫だ思うようになっていった。
 「切羽」をずっと「せっぱ」と読んでたけど、「きりは」と読むそうだ。トンネルを掘っている時の一番先端の部分を「切羽」と言うらしい。トンネルが貫通すればなくなってしまう切羽。「私」は切羽まで行かなかった。石和も寸前で止まった。
 切ないようなほっとしたような、でも穏やか過ぎる結末に拍子抜けしたけど、不思議と退屈とは感じなかった。チープな言い方をすると、大人のプラトニックラブってやつですかね。
 「切羽」とは作者の妹の名前でもあるそうだ。「荒野」と「切羽」って、和風響きが美しい名前だと思う。

 物語始まってすぐの夫婦の会話で、舞台は長崎じゃないかと思った。地元の言葉なんで、ほんの一言二言でピンとくる。その後に出てくる海産物で、やっぱりそうかと思った。途中で大村空港という丹後が出てきたんで、もう間違いない。ネットで調べたら、舞台は崎戸島らしい。
 私は今でも実家に帰ると自然とこれに近い言葉づかいをしている。たまに配偶者が首をかしげるほどだ。この作品ではわかりにくい方言は避けてあったけど、自分が使う方言を文章化されると何とも不自然に感じてしまう。大阪弁とかの方がすいすい読んでしまうのは不思議だ。
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『一瞬の風になれ 第一部 イチニツイテ』  佐藤 多佳子
2008-12-03 Wed 22:18
一瞬の風になれ 第一部  --イチニツイテ--一瞬の風になれ 第一部 --イチニツイテ--
佐藤 多佳子

講談社 2006-08-26
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 「俺」こと新二は幼い頃からサッカーをやっているが、才能に恵まれた兄・健ちゃんにはどうしても追いつけない。健ちゃんが小学校から通うサッカー強豪の学校に、中学受験でも高校編入試験でも落ちてしまった。自分の才能に限界を感じ始めていた「俺」は、サッカーを止めて適当な高校に入学する。
 幼馴染みの連も同じ春野台高校になり、「俺」は連が伝説的なスプリンターだったと知った。体育の授業で連の圧倒的速さを見た「俺」は彼に陸上部を強く薦め、「新二も走る?」の一言で自分も陸上部に入る事を決めてしまった。
 サッカーの天才である兄とは違う道を選んだ「俺」は、今度は連の走る姿に魅了されながら陸上に染まっていく。

 2007年の本屋大賞を、一体いつ読んでるんだという疑問。今住んでるとこは人口が多すぎて、油断すると予約数が3ケタ後半とかなってしまってどうにも大変だ。期待感も忘れかけてる頃に届いたんで延滞ギリギリになって慌てて読んだんだけど、やっぱ面白いわこれ。予約入れた頃の期待通りじゃないか。1~3まで全部読んでから感想書こうと思ってたけど、期待以上に面白かったのが嬉しくって1冊目が終わった時点でパソコンを開いてこれを書きだしている。
 努力、葛藤、友情、恋と、青春もの扱う素材はどうしてもありがちになってしまう。そこをどう料理するかが作家の力量ってやつなんだろう。でもってこの作品、そこんとこがとっても上手い。
 主人公は金髪だし語り口調もアホっぽいけど好きなことのために最大限の努力をしてる子だ。健ちゃんと連という2人の天才が身近にいるのに卑屈になったり嫉妬したりせず、純粋に尊敬している。いい加減なところが多い連に腹を立てることもなく、こういう奴だからって感じで接してるのも心地いい。彼は彼で努力の天才だと思うんだけど、スポーツは努力だけ人に負けなくてもどうしようもないからなぁ。
 それに比べて天才の連は真面目に取り組まない。才能が平等じゃないことを痛いほどわかってる新二は、そんな連に添いつつも悔しさを覚えて叱りながら泣く。真っ直ぐないい子なんだなー。
 でも、新二も充分早いみたいだ。天才双璧の間にいるから褒められても受け止められないでいるけど、きっとこれからどんどん速くなっていくんだろう。新二と連が走る種目はリレーだ。2人でどんな世界を作っていくんだろうかと、続きが楽しみ。
 恋の話はまだっぽいけど、2巻以降明らかに色濃くなっていきそうな気配がビシバシ伝わってくる。新二と若菜ちゃんと仙波とか、クレールと連とか、どうなるのかなって思うし。
 ちょっとマイナスポイントなのは、競技シーンの筆致が淡すぎるところ。最初はわざと、さらっと書くだけに留めてるのかと思った。最初というと体育のシーンだけど、その後の大会のシーンも、合宿で体を動かしてるシーンでさえも、どこか覚束ない。
 この著者自身はスポーツと親密な間柄じゃないんだろうか。それともクライマックスでどかんと来るんだろうか。そこのとこに小さな不安を抱きつつ、今から2巻いきます。
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『夜は短し歩けよ乙女』  森見 登美彦
2008-12-01 Mon 13:18
夜は短し歩けよ乙女夜は短し歩けよ乙女
森見 登美彦

角川書店 2006-11-29
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 後輩の女の子に恋をしたヘタレ大学生の「私」は、なるべく彼女の目に留まる作戦・題して「ナカメ作戦」なるものを決行する。乙女を巻き込む奇怪な出来事たちにもへこたれず、ボロボロになりながらも偶然を装って彼女の前に姿を現そうとしていく。そんなことに全く気付かない天然乙女は、ひたすら興味の赴くままに歩き続ける。


1章「夜は短し歩けよ乙女」
 OBの結婚お祝いの後にお酒を飲みたくなってバーに入ったことをきっかけに、乙女はたくさんの不思議な人達に出会う。育てた錦鯉が竜巻に攫われたと嘆くおじさん・東堂。男前な女性、羽貫さん。自称天狗の樋口という若者。
 高利貸しの李白という翁の存在を知った乙女は、「偽電気ブラン」飲み比べ勝負に挑むために李白に会いに行く。「私」は乙女を追う道々で次々にハプニングに見舞われていく。

2章「深海魚たち」
 乙女が古本市に行くと知り、「私」もナカメ作戦のために古本市に出掛ける。『ラタタタム』という絵本を探している乙女と、同じ本に偶然同時に手を出すという古典的なシチュエイションを夢見て歩きまわる「私」だったが、やたらと物知りな少年との出会いで乙女を見失ってしまった。
 そんな折、李白が主催する我慢大会の話を聞いた。勝った者は翁の持つ本の中から好きな本を1冊手にする事が出来るという。「私」は乙女のために、真夏に火鍋を囲むという我慢大会を乗り切る。
 一方乙女は『ラタタタム』を探しつつも物知りな少年との会話を楽しみ、羽貫さんと再会し、古本市を思いっきり堪能していた。

 本に携わる仕事をする者として、このラストは好きだ。やっぱり1冊の本で人が喜んでくれるとほっとするのは職業癖なのかな。このラストには「探していた本が見つかった」以上の喜びがあって、なんだか嬉しくなった。


3章「御都合主義者かく語りき」
 「私」や乙女が通う大学での学園祭。何にでも興味を示す乙女は様々な催しを回った結果、大きな緋鯉のぬいぐるみを背負い、たくさんの小さな達磨で作った首飾りをし、林檎飴やプラカードを持って歩くという目立つ格好になっていく。しかし「私」はなかなか乙女に追いつけない。
 乙女も「私」も色んな人に出会う。コタツなのに韋駄天という矛盾した存在の「韋駄天コタツ」に入っている樋口と羽貫、一目惚れした相手に会うまではパンツを履き替えないと誓っている「パンツ総番長」、象の尻そっくりの触感を持つ「象の尻」を展示する須田紀子。「私」の友人であり、女装が趣味の「学園祭事務局長」など。
 学園祭事務局長は至るところで突然開演されるゲリラ演劇を追っていた。乙女が偶然にもその演劇『偏屈王』のヒロインになってしまったことを知り、ヒロインと恋仲の「岩窟王」役になるために奔走する。

 「私」のトラブルの呼び込みっぷりが、もはや笑うしかないレベル。でも、最後にはハッピーエンドなんだなぁ。しかしまあ、色々とあり得ない。いいなぁ、こんな大学。末端に在籍してるだけで楽しそう。
「パンツ総番長」と須田紀子さんもめでたしめでたしで、良かった。でも、須田さんはずっとパンツ履き替えてないような男でいいんだろうか。


4章「魔風邪恋風邪」
 冬になり、京都ではひどい風邪が流行っていた。羽貫も樋口も事務局長も須田も、その他登場人物たちも次々と風邪に伏していく。「私」も例外なく寝込み、夢なのか妄想なのか判別不能の世界で乙女が見舞いに来てくれる幻を見続ける。
 そんな中、乙女は「私は風邪の神に嫌われているのです」としょげかえりつつも大切な友人たちをお見舞いのために訪ね歩く。そのうちに、人舐めするだけで即座に風邪が治る「ジュンパイロ」という薬の存在を知った。2章で出てきた博識の少年から「ジュンパイロ」をもらい、この流行り風邪の発信源が李白翁であると知った乙女は、風邪菌が竜巻となって襲いかかる李白翁の屋敷にお見舞いに行った。


 こういうのも純愛っていうんだろうか。大学生なのに中学生のような恋をしている先輩の滑稽な姿は何だか笑えない。むしろ懐かしい。中高生時代に恋をしている周囲の友人たちってみんなこんなんだった気がするな。「ナカメ」作戦やるほど暇人じゃなかったけど、待ち伏せして偶然を装ったり、好きな人の趣味を調べて話が合うように勉強したり。みんな努力家だったなぁ。私は恋愛に疎かったんでやったことないけど、例えば今好きな人ができたらやっちゃうかもしれない。既婚者なんで問題あるかもしれないが。
 「私」と乙女の語りが交互に書かれているけど、乙女が何ともかわいい。お友達パンチも、むんと胸を張る姿も、二足歩行ロボットダンスも(どんな物か、いまいち想像できてない気はするけど)、「なむなむ」も。こんなかわいい乙女と、何となく地味そうな「私」がどうなっていくのかと思ったら、やっぱり何だか微笑んでしまうようなエンディングで。
 森見さんの表現力に笑わされながら、楽しく読ませていただきました。 
 私はこの『夜は短し~』より後に書かれた『有頂天家族』を先に読んだから、樋口君や李白翁の天狗っぷりに感動した。赤玉先生がダメすぎただけで、天狗ってやっぱ立派な存在なんだよ!李白が天狗だとは書いてなかったけど、どう読んでも天狗だと思う。
 『有頂天家族』では赤玉ポートワインを飲みたくなって、翌日買って飲んでみた。ぶどうジュースみたいな味だったんでぐいぐい飲んでみたら、そう強くないんであっさりダウン。そして今回は電気ブランが飲みたくなった。偽電気ブランは多分森見さんの創作だろう。だから本物の方の電気ブランの方を飲みたい。諸事情で禁酒しないといけないんだけど、いつか必ず!
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