元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
10月に読んだ本
2008-10-31 Fri 23:59
『朔風ノ岸―居眠磐音江戸双紙8』  佐伯 泰英 (10/27)
『カシオペアの丘で 下』  重松 清 (10/14)
『カシオペアの丘で 上』  重松 清 (10/10)
『夜明けの街で』  東野 圭吾 (10/6)
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『朔風ノ岸―居眠り磐音江戸双紙8』
2008-10-27 Mon 11:30
朔風ノ岸―居眠り磐音江戸双紙 (双葉文庫)朔風ノ岸―居眠り磐音江戸双紙 (双葉文庫)
佐伯 泰英

双葉社 2004-03
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 大晦日の夜、磐音は草履商備後屋の番頭・佐平と名乗る男が掏摸にあったと騒いでいるのを見かけた。何となくその男を見送ってから長屋に帰り中居半蔵からの手紙を読むと、妹の伊代が家中の御旗奉公井筒洸之進の嫡男・源太郎と祝言を挙げると書かれていた。
 年が明けて今津屋に挨拶に行った折、おこんに伊代へのお祝いを見立ててくれるよう頼むと初売りに連れて行かれた磐音。磐音からは加賀友禅の着物を、今津屋からとして象牙の櫛と簪を買い、甘い物でも食べて帰ろうとしたところで南町奉行所の木下一郎太と会った。聞けば草履商備後屋で一家毒殺事件が起こったとのこと。大晦日のことを思い出した磐音は、おこんと別れて一郎太に同行した。
 備後屋では番頭の佐平が屠蘇に石見銀山を混ぜて一家を殺害し、その後井戸に身投げしていた。さらに通いの番頭の話によると、二、三千両あるはずの金子が三百両少ししかないそうだ。また、佐平が掏摸にあったような事実はないという。
 しかし笹塚の調べで、二番番頭の陽太郎が若い頃に産ませた子供であり、伯父である寄合近藤供継の御用人・竹垣九郎平とで仕組んだことだった。松の内に近藤家で行われる賭場に踏み込む際に磐音も同行させられ、竹垣の居合いを叩き伏せた。
 
 乾物問屋の若狭屋を訪ねると、関前からの品物が届いていた。番頭の義三郎によると、若狭屋でも上の部類に入るがまだまだ改良すべき点も多いと言う。
 磐音は関前藩の江戸藩邸にいる伝之丈と秦之助を若狭屋に紹介し、その後佐々木道場に連れて行った。さらに今津屋の由蔵にも紹介した。
 今津屋でくつろいでいると笹塚から呼び出しがかかった。蘭医の中川淳庵らを狙っていた血覚上人一派の上に立つ人物と思われる「鐘ヶ淵のお屋形様」の正体が遠江横須賀藩譜代大名西尾家の隠居・西尾幻楽という人物らしい。

 品川柳次郎が父親からの紹介で、旗本大久保家の仕事を持ってきた。大久保家の知行所で不穏な動きがあるらしく、見回りに行く御用人の馬場儀一郎の用心棒の仕事だ。竹村武左衛門と3人で請け負うことになった。
 知行所では弘法大師ゆかりの温泉があり、客の遊び程度に賭場をやっていた。ところがこれに渡世人・唐次郎が目を付けてきた。さらに下田湊の網元・蓑掛の幸助も手を出してきて、二派が争っている。取り立てて策もないままに来てしまった一向だったが、3人の機転と磐音の腕で解決。

 中川淳庵が何者かに攫われた。どうやら「鐘ヶ淵のお屋形様」の仕業のようだ。笹塚らと協力して、西尾幻庵宅を見張っている時に会った尼僧にも協力してもらい、無事淳庵を救い出し、一派をお縄にすることができた。

 白鶴太夫を描いて一躍名を挙げた北尾重政が、おこんを描きたいとしつこく今津屋に通っているらしい。おこんが頑なに断り続けるのは、磐音が原因だと由蔵が言う。その北尾が命を狙われていると、一郎太が磐音の元にやってきた。
 吉原では今、途絶えていた太夫の位を作るために客に選ばせる、という催しを行おうとしていた。抱えの花魁を人気絵師に描かせようと北尾のもとには注文が殺到したらしいが、好みではない花魁は全て断ったために反感を抱かれているのではないか、ということらしい。
 磐音が長屋に戻ると、父親から手紙が来ていた。奈緒の祝言のこと、磐音を呼べない事情を詫びる言葉などが書かれていた。そこへ幸吉とおそめが相談があるとやってきた。聞くと幸吉に奉公の話が来ているという。幸吉の父親の知り合いが薬種屋の住み込み奉公の話を持ってきたが、幸吉は鉄五郎のような鰻屋になりたいと思っている。鉄五郎との話はあっさり済み、あとは父親を説得するだけとなった。
 その折、一郎太の使いの者が呼びに来た。絵師川流一伯が殺され右手首が無くなっているという事件が起こった。かつて江戸に出没した辻斬り「小手斬り佐平次」という人物のようだ。数日間の張り込みで小手斬り佐平次をおびき出した磐音は、これまた見事に仕留める。
 また、幸吉の方向の件も一件落着し、長屋に戻ると伊代から祝いの品に対するお礼の手紙が来ていた。


 以前磐音が軽くこらしめた福坂利高が再び通りかかるけど、腹立つおっさんになっていた。その日暮らしをしている磐音に、汚い恰好で藩邸前をうろつくなとか言ったり。脱藩したんだから藩主の福坂実高の周りをうろつくなとか。それら全てに納得する磐音が歯がゆい。実高は立派な藩主なのに。利高、今後失脚しないかな。
 今回は関前藩の海産物がそれなりに評価されたけど、まだまだ今後が大変そうだということ以外、物語に進展らしきものはなかった。幸吉が奉公に出る年齢になって、ちょっと大人になったとかこの程度か。こりゃシリーズが長くなるはずだわ・・・。まだ半分も読んでないのにどんどん続編が出やがるし。
 面白くないわけじゃないけど、もうちょっと全体の話のどこかしらに進展があるといいのに。
別窓 | [さ行の作家]佐伯 泰英 | コメント:3 | トラックバック:0 |
『カシオペアの丘で 下』  重松 清
2008-10-14 Tue 17:51
カシオペアの丘で(下)カシオペアの丘で(下)
重松 清

講談社 2007-05-31
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 シュンはトシとも再会を果たし、4人は無事に顔を合わせることができた。その翌日、風邪をひいた哲生を連れて行った病院で、シュンが倒れてしまう。癌は確実にシュンの体を蝕み、東京に戻ることもできない状態になっていた。そうなったことでシュンは、祖父への憎悪やミッチョとトシへの罪悪感と向かい合い始めた。

 癌ってこんなに恐ろしい病気なんだと初めて知った。若くて体力がある人ほど癌細胞はどんどん転移する、逆に年とっている人の癌細胞の方が増えにくい、というのは知識として知っていた。でもこんなふうに、昨日まで大丈夫だったことが今日は駄目になっていく病気だとは・・・。
 残された時間を病院にいるのではなく家族と過ごしたい、だけど東京には帰りたい、というシュンの気持ち、いい大人が馬鹿みたいだと思う。入院して癌の症状を和らげないと移動は無理だけど、入院は嫌だなんて、そりゃトシがイラつくのも当然だ。でもシュンが家族を想ったり過去を思い出したりしている所を読むと、泣けてきちゃうんだなぁ。もし自分の配偶者が・・・って考えないわけにはいかない。
 過去に炭鉱で起きた事件のこと、身体障害者となったトシ、流れた赤ちゃんで終わった恋、不幸な殺人事件、交通事故のトラウマ、そして病気のこと。それから、「許す」ということ。下巻は上巻以上にめいっぱい詰め込んである。上巻では詰め込んであった内容が調和していたのに、下巻はやっぱ爪l込み過ぎ感が出てきたように思う。ただの詰め込み過ぎじゃなくて、不幸を詰め込んである。読者としては受け止めたいんだけど、下巻を読んだことで病気以外のことがボヤけてしまって残念だ。
 正直、ミッチョとシュンの恋の破綻やミウさんのトラウマの話は引っ張る必要なかったんじゃないか?下巻で出されても、「ま、そんな事だろうと思ったよ」という程度。ミウさんの話なんて、「今知りたいのはシュンの残り少ない人生なんですけど?」みたいな。
 すごく美しい話なのに、そういうとこが残念。『その日の前に』の方が断然いいと思う。
 それでもやっぱり、大人になってからも友達っていうのはいいな。皆が何かを抱えている中、ユウちゃんのいい奴っぷりが読んでてもすごく癒しになった。哲生くんもいい子で、この子が北都に行って父親の幼馴染たちに会えたのは本当に良かったと思う。最後に少しだけ書かれていたシュンの葬式のシーンが、一番涙が止まらなかった。
別窓 | [さ行の作家]重松 清 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『カシオペアの丘で 上』  重松 清
2008-10-10 Fri 14:25
カシオペアの丘で(上)カシオペアの丘で(上)
重松 清

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 炭鉱の町、北海道の北都。アメリカが打ち上げた衛星ボイジャーを見るために家を抜け出して、炭鉱跡地で星空を見上げる小学4年生の仲良し4人組トシ、シュン、ユウちゃん、ミッチョ。ここが将来遊園地になるといいねと話し、そこを「カシオペアの丘」と名付けた。
 それから30年が経ち、炭鉱跡地は本当に遊園地ができた。市役所職員だったトシが園長になり、ミッチョは彼と結婚していた。遊園地の名前はミッチョが応募した「カシオペアの丘」。夢が叶ったように見えたが、どんどん廃れていく現実は厳しかった。
 その遊園地に遊びに来た川原夫妻が巻き込まれた事件で、「カシオペアの丘」での思い出の写真がテレビで流される。そこから4人の友情は、再び「カシオペアの丘」に向かった。
 40歳を目前にして肺に悪性の腫瘍が見付かったシュンは、ワイドショーで「カシオペアの丘」の写真を見かけて衝撃を受けた。炭鉱の町を取り仕切っていた「倉田」家の次男だったシュンは、炭鉱で起こった事故で生存が絶望視されていたとはいえ、消防団員のトシの父親他7人の救出を諦めた祖父を嫌悪している。小学校の時の喧嘩以来車椅子生活になったトシに罪悪感を抱いている。大学時代に交際していたミッチョにも罪悪感を感じている。故郷を捨てて暮らす東京で、帰りたい、謝りたいと思いながらも帰ることができないでいた。

 トシとミッチョの夫婦愛、炭鉱王だった倉田千太郎のこと、シュンの病気と家族のこと、川原真由ちゃんの事件でボロボロになっていく川原さん。ユウちゃんと取材に来て以来、妙に北都のことを知りたがるミウさん。これだけのことを1つの話に収めるなんて、なんて欲張りなんだろうか。皆色々抱え過ぎ!でも内容は重すぎるのに、全体的に優しさを感じる不思議な物語。やっぱ重松清だからだろうか。
 でもやっぱり冒頭ののどかな始まりから一変して、次の章の幼女殺人事件で顔をしかめてしまう。最近本当に子供を狙った殺人が多い。少し読み進めたところで捕まる犯人にはさらに衝撃を受ける。それでも生きていくことを選択した以上は、冷静になっていくしかないのがまた辛い。殺人事件で子供の葬式を挙げるなんて、人が経験し得る中でも上位の不幸だろう。
 真由ちゃん殺しの犯人が獄中から書いた友人宛ての手紙が出てくるんだけど、この手紙がかなり引っかかる。実在するある少年犯罪者が、獄中からあんな感じで虚勢を張ったような手紙を書いているのを知ってる。縁もゆかりもないながら個人的に注目してる事件だけに、この手紙には憤慨してしまった。物語の中ではいちキーパーソンでしかない川原さんを何でこんなに苦しめるのかなぁ。要るのかな、こんなシーン。体がどんどん癌に侵されていくシュンのすぐ近くに、こんなにも精神的に痛めつけられる川原さんの存在があることが読んでてきつい。不幸の比較をしてしまうじゃないか。
 うさぎの着ぐるみを着たミッチョが川原さんと再会し、思わず泣いてしまったミッチョがシュンとも再会を果たしたところで上巻は終わる。
別窓 | [さ行の作家]重松 清 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『夜明けの街で』  東野 圭吾
2008-10-06 Mon 10:55
夜明けの街で夜明けの街で
東野 圭吾

角川書店 2007-07
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 不倫する奴なんて馬鹿だと思っていた――とモノローグで語る妻子持ちの主人公・渡部の課に、派遣社員として仲西秋葉が入った。派遣社員が来るのはよくある事だと全く興味を持つこともなかったが、ひょんなことから個人的に何度か会うことになる。意地っ張りな秋葉を次第に放っておけなくなっていた渡部を、秋葉が誰もいない実家に誘ったことから不倫が始まっていく。
 渡部は妻を誤魔化しながら何度も関係を重ねるうちに、次第に秋葉に本気になっていく。クリスマスもバレンタインも何とかして秋葉に会い、とうとう妻と別れることも考え始めた矢先、秋葉が時効目前の殺人事件の容疑者であることを知る。
 秋葉の実家で父の不倫相手だった秘書が殺された事件があったが、第一発見者である秋葉が容疑を掛けられていた。秋葉の両親は1年ほど別居した後に離婚したが、2日後に母親が自殺。その3ヶ月後に起きた殺人だったために、母親の自殺の原因となった不倫相手を秋葉が殺したという動機もあった。

 本っ当に幅広い人だな東野さんは。ミステリー作家と思いきやブラックユーモアの利いた作品も出すし、読後に奈落の底に落とされるような物もあれば号泣させられる物もある。そして今回は不倫もの。以前読んだ『レイクサイド』も不倫は絡んでたけど、今回は殺人より不倫がメイン。
 渡部が少しずつ秋葉を気にするようになり、関係が始まってからはどんどんのめり込んでいく様子がリアルに思えてならない。私に不倫経験はないけど、人はこうやって不倫に陥っていくんだな~とか思いながら読んでしまった。戸惑いつつも浮かれた気分っていうのは、きっととても魅力的な状態だろう。そこに殺人容疑というドキドキが絡んでくるけど、普通に結婚生活を起こっている私としては秋葉が真犯人であることを願ってしまう。こんな女、殺人罪で捕まってしまえばいいのに・・・なんて思ったり。
 ミステリーの真実はわりと肩透かしだったけど、秋葉がどんどん独占欲を出していく様子が不気味でゾクゾクしてくる。その裏にまた真意が隠されているとは。
 東野さんに時々あるボディーブローのような結末ではなく、かなりライト。だからちょっと物足りない気はする。けど、そつがない。
 それにしても、いい奥さんと可愛い娘がいながら不倫かぁ。妻は女じゃない、自分は男じゃない、だから女として愛せる人に出会って男を取り戻させてくれたことで離れられなくなる・・・って、夫婦ってそうなっちゃっていくものなのかなぁ。ラストで渡部の妻・有美子が不倫に気付いてたっていう結末には、ちょっとゾクッとした。子育てに専念してパート程度しかやっていない有美子は、今後養育費をもらったとしても困窮に陥るだろう。だから責めずに耐えていた。女って怖いっていうか母は強しというか。
 ラストの新谷の話は、物語としては蛇足って気がしなくもない。渡部の不倫を散々引き止めていた友人の話が最後にポンとあるのを見た時にはやや興醒めだと思った。でもなかなか凄味のある話で、これはこれで非常に面白かった。
別窓 | [は行の作家]東野 圭吾 | コメント:0 | トラックバック:0 |
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