元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
2008年5月に読んだ本
2008-05-31 Sat 23:55
『有頂天家族』  森見 登美彦 (5/31)
『さくら日和』  さくら ももこ (5/26)
『精霊の守り人』  上橋 菜穂子 (5/25)
『動機』  横山 秀夫 (5/20)
『塩の街』  有川 浩 (5/18)
『少年と馬―ナルニア国ものがたり5』  C.S.ルイス (5/13)
『QED 鬼の城伝説』  高田 崇史 (5/10)
『ホームレス中学生』  田村 裕 (5/5)
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『有頂天家族』  森見 登美彦
2008-05-31 Sat 23:48
有頂天家族有頂天家族
森見 登美彦

幻冬舎 2007-09-25
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 京都の街には、人間、狸、天狗が住んでいる。由緒正しき狸の下鴨家4兄弟の三男・矢三郎を語り手に、老天狗が人間に恋をしたり、狸が人間に狸鍋にされたり、狸同士が政権争いをしたりという何かとドタバタした話。
 矢三郎は、落ちぶれて力のほとんどを失った天狗・赤玉先生のアパートに通って彼の世話をしている。赤玉先生はかつて人間の少女さらったが、彼女は赤玉先生によって立派な天狗・弁天となり赤玉先生の元を去っていた。しかし赤玉先生は弁天への恋心を捨てることができない。彼女への恋文を矢四郎へと預けることから話は始まる。
 その弁天は矢三郎の初恋の人であるが、彼女は7人の人間が集まる「金曜倶楽部」所属している。「金曜倶楽部」は毎年忘年会で狸鍋を食べることで狸達から恐れられており、下鴨家の4兄弟の父・総一郎も、この狸鍋で命を落とした。
 父が死んでから、父の弟、つまり下鴨4兄弟の叔父・夷川早雲が何かと因縁を付けてくるようになった。弁天は矢三郎のことを「食べちゃいたいほど好き」と言いつつ鍋の具材にと追いかけたり、気まぐれに助けたりする。下鴨家と夷川家の勢力争いは、最後には赤玉先生や弁天をも巻き込んでいく。

 桓武天皇の時代に狸がどーの天狗がこーのというもったいぶった始まりに、何の比喩的表現による前振りかと身構えながら読んだ。しかも、固い話系かと警戒しながら。しかしこれが比喩でも何でもないことにまず度肝を抜かれる。本当に狸とか天狗の話。狸は何にでも変身するし、天狗は神通力を持っている。時々擬音語・擬態語が利いた文章が爽快で、矢三郎の面白主義な性格と抜群の相乗効果を発揮している。狸や天狗のもったいぶった口調も妙にマッチしている。ものすごくワクワクしながら読み進んだ。狸かわいいし。
 個性豊かなキャラクターというのも、森見さんにかかると捻り方が半端ない。下鴨4兄弟は偉大な父・総一郎の気質を中途半端に受け継いで、長男・矢一郎は責任感を受け継いだものの器が小さく、二男・矢二郎は暢気な性格を受け継いで父の死で蛙に変身して以来元に戻る方法を忘れて文字通り「井の中の蛙」生活。主人公の三男・矢三郎は阿呆ぶりを受け継いで面白くあることが全て。四男・矢四郎は純真さだけを受け継ぐが、怯えると文字通り尻尾を出して変身が解けてしまう未熟者。そんな4匹を束ねる母狸は宝塚が大好きで、雷が大の苦手だ。引きこもりの二男を除く3兄弟は、雷が鳴ると何を差し置いても母の元に駆け付ける。
 犬猿の仲である夷川家は、しょっちゅう喧嘩をふっかけてくる長男・二男の金閣、銀閣は四字熟語大好き。しかし使い方を間違ってたり、「樋口一葉」を四字熟語だと思い込んでたりする。その2匹の妹・海星は矢三郎の元許嫁だが、姿の見えないところからしょっちゅう罵詈雑言を浴びせてくる。しかしいざという時には矢三郎を助けてくれる。これが噂の、かわいいツンデレか。
 読み始めは「は?狸?『平成狸合戦ぽんぽこ』?天狗も?えっと・・・小説と見せかけて童話なの?」って感じでかなり混乱した。けど、面白い。目をむくほど面白い。
 どんなに大変なシーンでも矢三郎のせいでいまいち緊迫感に欠けつつも、最後には否が応でもハラハラさせられる。しかしそんなシーンで狸は偽叡山電車に化けて大暴走。もう下鴨家の家族愛には、たはは(泣笑)って感じ。
 『夜は短し歩けよ乙女』が話題になったけど、近隣の図書館は利用者が多くて予約してもなかなか回ってこない。だいぶ後に予約したこの本が先に来て渋々こっちから読んだんだけど、読む前の私の渋々っぷりを謝らなければならない。森見さんすみません、幻冬舎さんすみません。
 アマゾン書評見てると、『夜は短し~』の方が面白いって人が結構いる。それは楽しみすぎる。しかも『夜は短し~』で出てきたキャラが『有頂天~』にも出てきてたらしい。やっぱ『夜は短し~』から読みたかった!そういうの大好きなのに!
 巻末には第2弾の予告が。調べてみると、狸三部作になるとか。まーじでー。この本の語り部的に言うと「だが待て、しばし」というところか。「待つ待つ~♪」って気分。
 何か狸大好きになりそうだ。とりあえず、影の立役者「赤玉ポートワイン」でも買って飲むか。
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『さくら日和』  さくら ももこ
2008-05-26 Mon 16:45
さくら日和さくら日和
さくら ももこ

集英社 1999-07
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 離婚発表から始まるこのエッセイ。周囲は離婚に大賛成だったそうだけど、どんな理由で離婚したんだろうか?かなり気になる。相手がいる話だから、「DVで・・・」とか「浮気性で・・・」とか書くと訴えられかねないからこんな消化不良な書き方しかできないんだろうか。
 相変わらずの人生に息子が加わり、ところどころにお金持ち的エピソードがあり、何かちょっと以前より落ち着いた気もするさくらももこがいるエッセイ。賀来千香子や宅麻伸やよしもとばななといった有名人お友達が出てきて、どうにも大物っぷりを発揮している。パーティで50万使ったと繰り返し書き綴ったり、あちこち食べ歩きしたり旅行したり・・・。以前のような庶民的愉快エッセイではない。ちびまる子ちゃんはすっかりビッグな大人になったんだなぁと、ちょっと寂しい気分になった。
 『もものかんづめ』では大爆笑しながら読んだけど、これはサラサラっと読んで“へ~、さくらももこって今はこんな生活してるんだ~”で終わりっていうのが何か寂しい。そもそもエッセイというより日記っぽいと思う。まあさくらももこはエッセイ書けばどかんと売れる人になったし、『ちびまる子ちゃん』はサザエさんに替わるファミリーアニメとなりつつあるし、気合いの入ったエッセイ書かなくてもいいんじゃないかなと、こっちまで気合いの入らない読者になってしまった。
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「守り人」シリーズ  上橋 菜穂子
2008-05-26 Mon 16:16
『闇の守り人』
『精霊の守り人』
『夢の守り人』
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『精霊の守り人』  上橋 菜穂子
2008-05-25 Sun 19:30
精霊の守り人 (偕成社ワンダーランド)精霊の守り人 (偕成社ワンダーランド)
上橋 菜穂子 二木 真希子

偕成社 1996-07
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 短槍使いの女用心棒のバルザは、川に落ちた新ヨゴ皇国の第二皇子チャグムを助けた。そのお礼にとチャグムの母である第二王妃の館に招かれた折、夜中に王妃がチャグムを連れて密かに訪ねてきた。彼女はバルサに、チャグムは体に何かが取りついたために命を狙われている、この子を守って欲しいと依頼する。
 新ヨゴ皇国の先住民ヤクーの伝承によると、チャグムの体に宿ったのはニュンガ・ロ・イム<水の守り手>という雲を作る精霊だった。この世「サグ」と重なるように存在する「ユナグ」の生き物ニュンガ・ロ・イムが百年に一度サグの人間に卵を産む時期には干ばつが起こる。卵を産みつけられた人間はニュンガ・ロ・チャガ<精霊の守り人>としてラルンガ<卵食い>から卵を守り切れなければ、干ばつがそのまま続いて大きな被害が出ると言い伝えられている。
 新ヨゴ皇国の歴史書では建国者トルガルは200年前に水妖を倒してその地に豊作をもたらしたとされるが、それは塗り替えられた英雄譚だった。宮では若い星読師シュガが、聖導師に才能を認められて歴史を紐解くうちに段々と真実を知っていく。

 上橋菜穂子さんは、日本の現代児童ファンタジーの最高峰だと思ってる。しっかりした骨組みと厚みある内容、都合の良さや無駄な見目麗しさのない作品達はライトノベルと確実に一線を画していると思う。司書としての知識だけでそう思ってて、実際ほとんど読んでないといういい加減っぷりの私ですんません。良質ファンタジーとしての評価がとっくに定着したこの「守り人」シリーズを今頃読む私って司書としてどーなん?と思いつつやっと借りた。
 まず主人公が30歳の女性であることにちょっと驚く。少年少女が活躍するラノベとは明らかに違う。でも内容は、最初の方は意外と普通で“ラノベと変わらんなぁ。こんなもんか・・・”と思いつつ読み進めた。ところが物語が複雑さを増してきた頃からどんどん面白くなって引き込まれていった。
 新ヨゴ皇国の歴史、ヤクーの伝承、「サグ」と「ユナグ」のことなど、複雑ながら説明は簡潔でわかりやすい。バルザの人生や、皇国の星読博士、<狩人>の存在なども含めて、何もかも根底をきっちり書いてあるから浮ついた所もない。そうやって進めていく話自体も当然面白い。ネーミングや街並みはアジアンテイストだけど、思想は日本的であるとこも入り込みやすかった。皇国の神話なんか、日本の神話にあってもおかしくなさそうな内容だ。
 序盤はイメージが悪かった新ヨゴ皇国だけど、トロガイからの手紙で考え改めて歴史の真実を調べ始める星読博士や本当に必要なことを知ってバルザ達に協力的になる狩人に考え改めさせられる。お互いに支え合って存在するサグとユナグ、ヤクーの伝承部分と皇国の歴史書、お互いの必要性を感じ始める星読師と呪術師など、一方の独善性だけじゃなくて両方の必要性を描いてるその巧さに脱帽した。
 もちろん人物も良かった。体も精神も鍛え抜いたバルザが、弱くも知性あるチャグムに第二皇子としてではなく人として向かい合う。バルザの幼馴染で呪術師を目指す青年タンダと、タンダの師匠で最高の賢者であるトロガイもだ。また、政に携わっていくうちに大切なことを伝えられなくなっていった星読博士や国のために汚い仕事を請け負う狩人が持つ国を守りたいという気持ちも、ちゃんと彼らの思想を描いている。それでいて登場人物達の中の特定の誰かに偏りすぎた書き方はせず、平等に好ましく描く著者の姿勢も好きだ。バルザとタンダが想い合ってることも、さらりとさり気なく描かれていていい。
 一致団結したクライマックスの後にはちょっとほっとしたような寂しいような結末を迎える。評価の高い児童ファンタジーとは思って読んだけど、もっと評価されていい作品じゃないかこれは。漢字使いは小学校低学年向けだけど、対象年齢はもっともっと高くても充分楽しめるはず。
 私は和製ファンタジーって結構好きだけど、日本のファンタジーはどうしてもラノベにくくられがちでつまらない。もっと本格派書ける人が育ってくれたらいいのになぁ。
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『動機』  横山 秀夫
2008-05-20 Tue 23:37
動機動機
横山 秀夫

文藝春秋 2000-10
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 4編の短編集。

「動機」
 警察官は勤務時間外も警察手帳を持ち歩くように義務付けられている。J県の警視である貝瀬はその制度に疑問を持ち、勤務時間外の警察官の手帳を一括保管する案を起こして強引にテスト導入に踏み切った。しかしテスト導入が始まった矢先、U署で保管されていた警察手帳30冊が盗難に遭った。内部者の犯行の可能性も考えて記者会見発表まで2日の猶予をもらい、貝瀬自分なりに調べようとする。
 追い詰められていく貝瀬、警察内部のぎすぎすした人間関係、家族への思い、常に警察官であることを課せられ続けた人が退官する際に不安定になってしまう「揺らぎ」、そしてその先にあった犯人の動機に、緊張していたものがフッと和らぐのを感じる。横山さんの作品の、和らぎ好きだ。それから益川との喧嘩のシーンではぐっときた。

「逆転の夏」
 妻の妊娠中に行きずりの女と関係を持った山本。その女は事後に女子高生であることを告げ、山本を恐喝してきた。カッとなった山本は彼女を殺してしまう。13年後に出所した山本は、保護司の及川の世話で遺体搬送の仕事に就いた。淡々と真面目に働く山本に、ある日殺人依頼の電話がかかってくる。
 話を聞いてくれただけで数十万のお金を通帳に振り込んでくれるカサイという男を最初はうさんくさく思っていた。しかし元妻の静江に償いとして給料の中から送金していた山本は、静代を喜ばせたい一心でこのお金を静代に送った。さらに殺人の謝礼金欲しさに殺人依頼を承諾する。
 犯した罪を考えると同情の余地はないんだけど、出所してからは妻と息子に送金することだけを生きがいにしている山本は読んでて哀れで仕方ない。さらに全員が哀れに思えてしまう結末が切ない。せめて静代さんは幸せになってほしい。

「ネタ元」
 女性記者である水島真知子が三か月前に書いた記事が地元住民の不興を買い、「県民新聞」は読者離れが深刻になっていた。そのため、一週間前に起こった主婦殺人事件を書くことで読者離れに歯止めを掛けようとしていた。
 女性であることで記者の中で一線ある扱いを受け続けていた真知子は特ダネを抜くよう圧力をかけられながら奔走し、そのストレスから万引きを繰り返していた。その真知子に、大手新聞者の「東洋新聞」から引き抜きの誘いがある。東洋新聞は真知子のネタ元を欲しているようだが、特ダネを教えてくれた地裁の庶務・佐伯美佐子とは顔見知り程度でしかない。男社会で働く者同士の共感から特ダネを教えてくれたと推測されるが、自分から教えてくれとは言い出せずにいた。
 元事件記者の横山さんが、警察組織ネタと並んで得意な記者世界。これといって大きな出来事は起こってないんだけど、何か引き込まれてしまうんだよなぁ。不思議。

「密室の人」
 裁判中に居眠りをしてしい、寝言で妻の名前を口走った裁判長の安斎。裁判コラムに書くかもしれないと言われて眠れない夜を過ごしている時に、妻が服用している睡眠薬と自分が常用している整腸剤が瓜二つであることに気が付いた。
 居眠りは記事にならなかったが、今度は弁護士が記者会見で公表すると言っている。そのゴタゴタで、上司が自分の妻を思わず呼び捨てにしてしまったのを聞いて固まってしまう。裁判中の居眠りに根深く複雑な背景があったことを、安斎は遅ればせながら気付いた。
 これは横山作品で唯一読み終わってから悶えた。「うおぉぉぉ!それでどうなったんの!?扉開けたらどうだったの!?」と。横山さんだから、きっと美和はいたんだろうなぁと思いつつも美和のしでかした事の大きさを考えると・・・と、考えてもどうしようもないことを考えてしまう。
 仕事男の持つ家族愛。横山さんがこれを書くと、どうしてこうも男臭くてかっこいいんだろうか。

 すべてが横山秀夫の得意分野となっていて、相変わらずどれも面白い。そして短編は絶品。短いけど物足りなくはない。苦悩や葛藤をしっかり書いてるけど、書きこみ過ぎてもない。今回もすごく面白かった。
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『キノの旅 4』  時雨沢 恵一
2008-05-18 Sun 09:44
キノの旅―The beautiful world (4) (電撃文庫 (0440))キノの旅―The beautiful world (4) (電撃文庫 (0440))
時雨沢 恵一

メディアワークス 2001-07
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「像のある国」
 若い旅人がある国で見たのは、長い棒を持った人間の足下に何だかよくわからない生き物がいる像。昔、空から降りてきて、人々を苦しめていた22人の悪魔を棍棒一振りで退治したという。
 巻頭カラーを使った話だけど、本当にこれだけの話。意味がよくわからなかった。ただ、イラストを見るとその像は西郷隆盛像に見えないこともない。ああ、キノが日本に来た的な?と思ったけど、そういえば「キノの旅」シリーズには犬も出てくる。犬を“よくわからない生き物”って書かないだろうし。
 この本を最後まで読んで、ここで感想を書く前に結構長々と考えて、そういや時雨沢さんは時系列混濁が得意だったなと気付いてようやくわかった。9話目とリンクしてるのね。って、何年後だよ!?あ、いや、ここでの旅人はキノではないのかも。

「×××××」
 旅人がモトラドで草原の道を走っていると、道端で小さな子供が手を上げていた。モトラドが止まると、子供は連れて行って欲しいと言う。モトラドは乗る所がないと断り、旅人は誰かの命を預かることはできないと断って立ち去った。
 これも巻頭カラーを使った話であり、イラストによると「旅人」は第一話と同一人物に見える。けど、意味はよくわからないな・・・。子供の名前は「×××××」とあり、うろ覚えながらシリーズ2巻目辺りに出てきたキノの昔の名前がそういうふうに書かれていた気がする。じゃあ子供はキノなのか?でもキノは旅を始めた時からエルメスに乗ってたからなぁ。心の風景とか?よくわからない。

「二人の国」
 これと言って見所のない国で退屈していたキノだったが、喧嘩をしている男女を見ても絶対に止めに入らないように言われる。その後通りすがりの男性に家に招待されてついていくと、男性の妻はひどい虐待にあっていた。男性が寝た後、キノはサンドと呼ばれるその女性から夫を殺して欲しいと頼まれる。この国の社会通念に縛られて見合結婚をし、社会通念によって離婚もできない。旅人は犯罪を犯しても一日以内に出国したら罪に問われないから、という彼女の願いをキノはきっぱりと断る。
 DVを目の当たりにしても淡々としていられるキノは、やっぱいい。DVだけじゃなく、おかしな法律がまかり通ってる国という設定が面白かった。最後はすっきりしたような、しこりが残ったような・・・。

「伝統」
 昔からの伝統で、猫耳を付けるという国。人々は全員猫耳を付けており、キノにもしきりに猫耳を勧めてくる。
 これが国を挙げたドッキリだというオチには、ちょいクスリ。しかも、旅人の間では結構有名な話で、この国の人は知られていることを知らないというのも、ちょいクスリ。シズが半年前にこの国に来たということになってるけど、キノとシズはもう会うことはないんだろうか。

「仕事をしなくていい国」
 機械が発達しているため、旅人は何をするにも無料だった。しかし国民は<仕事>と呼ばれる意味のないことをやり、ストレスをもらうことで賃金を得て暮らしを豊かにするというシステムがあった。
 これは面白い国だな。私は昔からどうでもいい点で余計なことを考えるタチで、小学生の頃ドラえもんを見て“未来の人達は何の仕事をして生活してるんだろうか。こんなに便利な物がたくさんあったら仕事がなくなっちゃうんじゃないか”と考えてた。その回答をもらったような気分だ。もちろん、ドラえもんとキノは全くの無関係なんだけれども。

「分かれている国」
 二つに分かれた道を海へと続く道へ進むと、海沿いの街に着いた。新鮮な海の幸で宴会が開かれ、キノは歓迎を受ける。キノが翌日は北方の高地に行く予定だと言うと、人々は「奴らはとても残酷だ」と言う。
 翌日、森の手前にある街に行ったキノ。そこでは森の動物達を狩って宴会が開かれ、キノは歓迎を受ける。キノが前日に海沿いの街に泊まったと言うと、人々は「奴らはとても残酷だ。それなのに我々を残酷だと言い、自分達の真の残酷さに気付いてない」と言う。
 この本が出たのは結構前なのに、何かタイムリーだな、私。まさかシーシェパードが意味不明なことを言っている時にこれを読むとは。オーストラリア人に読ませたいよ、全く。まあ、日本人は奴らがカンガルーを食べてても何も言わないけど。さらに、捕鯨文化にイチャモン付けてくるのは政治的背景もあるからなんだけど、さすがにラノベでそこまでは書ききれないか・・・。

「ぶどう」
 オープンカフェでお茶を飲んでいたキノは、突然三十歳くらいの男に話しかけられる。男は、旅は人生の無駄遣いだの、モトラドのような危険な乗り物ではなくて車を買うべきだの、一方的に説教をしてきた。彼はかつてモトラドで旅をしていたが、今は結婚して少しでも多く稼ぐこと、休みの日は家族サービスをすることを強要されていた。そんな彼の横を、キノはエルメスに乗って颯爽と通り過ぎる。
 何が「ぶどう」なのか一瞬迷ったけど、イソップの「すっぱいぶどう」ってやつですかね。何か、男にも男の妻にも妻の母親にもムカッとくる話だった。

「認めている国」
 入国して泊まろうとしたホテルで、オーナーに話しかけられたキノ。オーナーによると、明日は“いらない人”を選ぶ投票日だそうだ。国民が“自分にとって必要な人”を投票し、“誰からも選ばれなかった人”は国から殺される。しかし毎年、誰からも名前を書かれない人はいないため、選挙後は全ての人がお互いを必要とし合って生きているのだと言う。そのオーナーは、周囲から煙たがられている存在のようだった。
 オチが面白かった。しかし、冷静に考えると成り立たない選挙だよね。1人1票投票で、被記名者が1人被ると1人死ぬシステム。2人1組にならないと、書かれなかった人は数人じゃ済まないはず。

「たかられた話」
 陸の視点を通したシズの話。訪れた国は盗賊団にたかられており、月に1度やってくる盗賊団のために大量の食糧を差し出さなければならないことになっていた。次に盗賊達が来るのは明日だと聞いて、シズは翌日の朝から彼らを待ち、22人全員を殺した。しかしその国の住人達は、やり過ぎだ、人殺しだとシズを責めた。
 国民は優しいなぁと思う。水戸黄門も悪代官とかを殺したりはしないもんなぁ。助さん格さんがお代官様や越後屋を殺して「一件落着」とか言ったら話は変わっちゃうし。でも、旅人に過ぎないシズにできる精一杯のことは皆殺しだったんだろうな。

「橋の国」
 海の中にそびえる巨大な橋。これを渡れば、渡し賃を払わずに隣の大陸に行ける。旅人とモトラドはその橋を渡りながら、欄干に書かれた橋のできるいきさつを読んでいった。 
 橋を作った国の人達がなぜそこまで橋に固執したのかがわからない。何もかもを犠牲にし、最後には国民の骨を使ってまで完成させるなんて、人の所業じゃなくて昆虫の本能とか、そういう不気味さを感じる。

「塔の国」
 230年かけて塔を作り続けている国では、ちょうどキノ達が訪れた時に塔が崩壊した。人々は自分達が生きている時代に塔が壊れたことを喜んで、次は300年崩れないものを目指して建てると言う。
 塔を作り続ける国に嫌気がさした一人の男が、自分を国から連れ出せとキノを脅そうとした。キノが塔を建てるのが嫌ならレンガに彫刻を彫る人になればいいと提案すると、彼は嬉しそうにそれに賛同した。
 やっぱり自分が生まれ育った環境には、良くも悪くも気付かないうちにがんじがらめにされてるってことかな。

エピローグ「紅い海の真ん中で」
 訪れた国が廃墟と化しており、キノとエルメスはその国を立ち去った。大きな丘の頂上で紅い花が咲き乱れる中、キノはエルメスを倒して自分も仰向けに倒れ込み、歌い始める。そのままプロローグに続いて、歌い終わったキノにエルメスが起こしてくれるように頼む。

 この巻は結構好きな話が多かった。特に好きなのは「仕事をしなくていい国」「分かれている国」かな。段々このシリーズが本当に面白く感じてきた。手塚治虫っぽさを感じてきた、と言うと言い過ぎかな?そういう多文化と淡々と流れる時間のようなものを感じたんだけど。
 今回からあとがきが変だった。全く違うストーリーで制作秘話を語るという・・・。全く違うストーリーというか、ジャンルもテンションも別物過ぎて、一体何のために?みたいな。まあ、お遊びみたいなもんなんだろうけど。何これ?みたいな、嫌じゃないけど微妙な気分がした。
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『塩の街』  有川 浩
2008-05-18 Sun 00:59
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有川 浩

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 ある日突然、いくつもの巨大な塩の塊が降ってきた。その時から、生き物の体が塩そのものになって死んでいくという奇妙な現象「塩害」が起こり始める。ライフラインも危うく、社会秩序も崩壊しつつある世界で、17歳の真奈は秋庭という青年の許に身を寄せる。
 塩害のどさくさに紛れて警視庁科学捜査班所属から陸上自衛隊立川駐屯地の司令になった入江は、空から降ってきた塩は生命体であるという説を唱えて東京湾に突き刺さっている巨大な塩の塊を攻撃しようとしていた。その役に白羽の矢が立ったのは航空自衛隊の戦闘機乗りだった秋庭。さらに秋庭は、塩塊に攻撃をする戦闘機を米軍から奪うという計画を立てた。立川に来てから何となく秋庭を遠く感じていた真奈だったが、その話を聞いて彼への恋心を抑えきれなくなる。

 「図書館戦争」シリーズの作家さんだけど、文芸誌やネットで見かけると「自衛隊三部作」とやらに触れてあることが多い。どんなもんかと図書館で予約してみたんだけど、カウンターで受け取った瞬間うげって顔になったと思う。なにこのイラスト。こりゃまた下手なイラストレーターですなぁ。家に帰って口絵を見て、さらにげんなり。イラストに関してはツッコミどころに事欠かなかった。
 しかし内容は面白い。最初は塩害のことにはあまり触れず、何となく混沌とした世界で起こる出来事が連作短編のように描かれている。体がどんどん塩になっていってやがて死ぬという設定を活かした前半2編が好きだった。重そうなバッグを持って群馬から歩いてきたという青年・遼一は塩化した幼馴染の女性が入っていた。彼はその女性を静かに海に流し、その後自分も塩化した。
 次の話はその帰りのこと。車が銃を持ったひとりの男に襲われた。その男は真奈に銃を突きつけ、2人の家に連れて行けと言う。彼は脱獄した囚人だったが、塩化現象の研究のために人体実験をさせられていた。どんどん塩化していきながら、彼は高校時代に好きだった女の子の話をする。
 そこまでの話は面白かったんだけど、何かメインストーリーの塩塊攻撃辺りから何となく物足りなさを感じた。何かいきなり好き好きモードになったと思ったら、「愛か世界か」みたいな話になった。真奈は世界より秋庭がいてくれることを求めるんだけど、そんな選択は誰にでもできるからわざわざフィクションストーリーで持ってこられてもお腹いっぱいって気分になってうんざり。それまでは真奈のこと結構好きだったけどなぁ。
 さらに戦闘機のことがゴタゴタと書いてあって、基本読み飛ばさない主義の私は眠くて眠くて何度か落ちかけた。あってもなくてもストーリーに影響しない専門知識は、ストーリー展開を邪魔しない程度に書いてほしいと思う。
 専門知識をさんざん披露しておいて、電信が「猫は巣を飛び出した」と「バベルの塔は崩壊した」だってんでこれはもう笑ってしまった。暗号電文ってもうちょいかっこいいイメージなのは、トラトラトラの影響か?
 頭がいいという設定の入江に頭がいいエピソードがあまりないのも、何か拍子ぬけ。塩害の原因を突き止めたことがそういうことって言いたいのかもしれないけど、些細な閃きと膨大な実験データに依ってたんだったら「天才」とは言わないよなぁ。周囲を阿呆に描いておいて、ちょっとだけ鋭い演出を「頭がいい」という役にするのは無理がある。これは「図書館」シリーズも然り。まあこの『塩の街』はラノベだからこの程度も・・・って、作者がこれでデビューしたのは30歳越えてからか~。うーん。
 さらに私はこの作家と相性が悪いのかもしれないと思うことがある。「図書館」シリーズは私の専門分野のために、あれ?と思うことが多くて物語に集中できない部分が多くあった。そして今回。私のかつての知り合いに航空自衛隊の戦闘機乗りがいてさー。かなり親しかったんで戦闘機についてはほんの少しは知ってるわけで。マニアよりは知らないだろうけど一般人よりはってレベルなんだけど、おかげさまでこの本でもあれ?と思うことが何点かあったんだよなぁ。些細過ぎるけど、戦闘機乗りが英語が堪能じゃないから米兵と意思の疎通が難航するとかあり得ないから。ただのサル芝居のシーンでもあり得ないから。そりゃねーべと思ってしまうと集中力が削がれるのは悪い癖なんだろうけど。
 何かこう、前半の2話が面白かったのに後半が残念。そして一番残念なのはこのイラスト。骨格や肉付きがおかしかったり、同一人物が違う人に見えたりと、ストーリーを損なってる。去年ハードカバーで改訂増補版が出てるけど、そっちは変なイラストはなし。さらに大幅に改稿してあるらしいから読んでみようかな。
 ところでこの本、「自衛隊三部作」の陸自編らしい。確かに拠点は陸自だったけど、活躍してるのは空自なんでずっと空自編だと思ってた。
別窓 | [あ行の作家]有川 浩 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『馬と少年―ナルニア国ものがたり5』  C.S.ルイス
2008-05-13 Tue 23:27
 
馬と少年 (ナルニア国物語)馬と少年 (ナルニア国物語)
C.S. ルイス C.S. Lewis ポーリン・ベインズ

岩波書店 2005-09-10
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 カロールメンという国で父親と2人で暮らしている少年シャスタは、奴隷として売られそうなところをものいう馬のブレーと共に逃げ出した。ブレーはナルニア国の馬で、子供の頃にさらわれてからずっと普通の馬を演じていたのだと言う。シャスタとブレーは、途中で同じように馬に乗ったアラビスという少女に出会った。彼女は政略結婚をさせられそうなところを逃げてきたところだと話した。彼女が連れた馬フインもナルニアのものいう馬だった。 2人と2匹は一緒にナルニアを目指すことになる。
 途中でタシバーン国のラバダシ王子が宣戦布告もなくナルニア国に攻め入ってスーザン王女を攫おうとしている計画を知り、このことを一刻も早く知らせるためにナルニアへと急ぐ。

 今回の話は、「ライオンと魔女」で洋服だんすからナルニアに入ったピーター、エドマンド、スーザン、ルーシィがナルニアを統治している時代の話。4人の年齢に関わるようなことには全く触れてないけど、そこそこ大人になってるようだ。ていうか物腰が完全に大人の王族仕様で、ちょっと寂しいような、また出てきてくれて嬉しいような気分。
 ラバダシはナルニアの手前のアーケン国では略奪を行う予定だったけど、ナルニアとアーケンの連合軍が勝利を収める。この世界ってナルニア以外にも国があって、しかもナルニア以外では動物はしゃべらないんだなぁ。すんごい特別なんですね、ナルニア。
 シャスタはナルニアの4人にアーケン国のコーリン王子と間違われた事件があったけど、シャスタは実はコーリンと双子であり、アーケンの第一王子だったことが判明する。それまでが結構悲惨な道のりだったから、素直にめでたしめでたしと思えて良かった。
 児童文学なんで戦争のシーンでも大怪我や人が死んだりすることが少ない。そのため、捕虜にしたラバダシをどうするのかと思ったらアスランが登場。ロバにするというのがナルニアらしいし、この惨さのない平和な感じが安心する。
 シャスタが結構波乱万丈で面白かった。

1954年刊。アマゾンの画像は新装版。
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『QED 鬼の城伝説』  高田 崇史
2008-05-10 Sat 18:06
QED 鬼の城伝説 (講談社ノベルス)QED 鬼の城伝説 (講談社ノベルス)
高田 崇史

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 シリーズ9冊目。岡山県吉備津神社の占卜「鳴釜神事」は、その昔に大和朝廷によって退治された温羅(ウラ)の首が釜を唸らせて人の吉凶を告げる。一方、鬼野辺家に先祖代々伝わる大きな釜は、鳴ると当主が死ぬという噂があった。その噂を信じてなかった鬼野辺健爾だが、婚約者の妙見明日香に「後で蔵に来てごらん」と誘った直後、蔵の中で生首死体となって発見される。
 ジャーナリストをしている熊崎宛てに、この事件の投稿が来た。その事件を取材に行くという小松崎に、前から岡山で趣味の寺巡りをしたかったタタルが同行すると言い出し、ついでに棚旗奈々・沙織姉妹も誘って4人で岡山旅行をすることになった。タタルが急用で遅れるため、先に岡山入りした3人。少し観光した後に妙見明日香に会いに行った小松崎だったが、彼女の兄の妙見巧実も殺された。その後、鬼野辺家の二男の圭佑が自分が犯人だという遺書を残して自殺した。

 今回タタルが登場したのは物語の中盤過ぎ。そのために解説代役として、岡山行きの新幹線では沙織が岡山の鬼・温羅について調べてきたことを披露する。岡山に着いてからは小松崎に手紙を送った若い女性2人が詳しく勉強して開設するという設定。こういう女性たちって結構引くんですけどー。でも、それをやっちゃうのがこのシリーズ。人物像や会話や地の文の不自然さなんか気にしちゃいけない。
 タタルが合流してからは事件が急展開。圭佑の遺書は本物であること、手段、動機まで解明させる。同時に温羅伝説と桃太郎伝説の関係も考察する。殺人事件はいつも通りオマケみたいなもんだったんだけど、温羅伝説の方がかなり面白かった。
 このシリーズを読んでいていつも思うのは、この歴史に詳しかったらもっと楽しめるだろうなぁということ。私は場合によっては奈々より知識がないこともあり、よくわからないまま読み進むことが結構ある。しかし今回の話は桃太郎伝説。日本で一番有名な話と言っても過言ではない。だから今回の歴史考察は、かなり面白かった。
 このシリーズでここまで面白いと思ったのは、「ベイカー街の問題」以来だ。やっぱ取り上げられてるテーマの前知識がどれだけあるかって大きいもんなんだな。この本のタタルの説明だけで素人が理解できるほど上手くストーリーに溶け込んでないから、結局何となくってだけで読み流してるからすぐ忘れる。過去のシリーズ思い返してみても、どんな事件だったかとか歴史考察とかもう覚えてないし。2~3回読めば理解できるし記憶に残るのかもしれないけど、そこまで魅力を感じてるシリーズでもないしなぁ。まあ、機会があれば読み返そう。
 桃太郎伝説は、丑寅の方向が鬼門だから反対の方角である動物「戌」「酉」「申」を連れて鬼退治に、という説が一番一般的だと思う。私も、昔の人って方角で験を担ぐとか能天気だなぁという程度にしか思ってなかった。でもタタルは、思いっきり根底から覆してくれた。この説の信憑性を高いと思うのは、私が単純だから?
 このシリーズの「式の密室」辺りから毎回賤民の歴史に触れ、次の「竹取伝説」からは必ずタタラに触れる。日本の歴史ってそんなにタタラ場から土着民を追いだしてきて利益を奪い、彼らを「鬼」として忌み嫌う風習を作ってきたんだろうか?それともこのシリーズがやたらとそんな話を取り上げてるだけ?私にはよくわからないけど、根深さには驚かされる。
 これだけ取り上げてると、ふと『もののけ姫』を思い出した。あれって朝廷がタタラ場を奪おうとしてどんちゃかやる話だけど、シシ神が首飛んで大騒ぎになってアシタカとサンが首を返して終了という、うやむやな結末だ。でも歴史的に見て、エボシ達はは結局朝廷にタタラ場を奪われるんだろう。QEDシリーズを読み続けて、ふとそう考えた。舞台モデルは出雲だそうだから、エボシ達も土蜘蛛とか呼ばれるようになるんだろうなぁ・・・と関係ない所にまで思考が飛ぶ。
 最近、奈々はしっかりとタタルを意識してるし、沙織も小松崎も気付いてる。それとは別に、沙織と小松崎がえらく仲いいのが気になる。ダブルカップルになるのか?50歳の男性が書いてるミステリーで?いやまあ、著者の年齢性別は関係ないと言えばないんだけどね・・・。
別窓 | [た行の作家]高田 崇史 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『ホームレス中学生』  田村 裕
2008-05-05 Mon 00:36
ホームレス中学生ホームレス中学生
麒麟・田村裕

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 「すべらない話」から話題を呼んだお笑いコンビ麒麟のツッコミ田村が、中学時代の壮絶な体験を綴った自叙伝。
 夏休みの前日に家が差し押さえられ、父が子供達3人に言った言葉は「これからは各々頑張って生きてください。・・・・・・・・・・・解散!」だった。中学生で自活力のない田村は自分がいれば兄と姉に迷惑がかかると思い、友達の家に泊めてもらうと言う。しかし実際には家がなくなったと言うのが恥ずかしくて友達の所に行くことができず、公園で寝泊まりすることにした。

 完全に流行に乗り遅れて、麒麟自体を以前ほどテレビで見かけなくなってからようやく予約していた図書館の本が回ってきた。予約してから1年ちょっとかかった・・・。みんな買おうよ!と、お前が言うな的なことを考えつつ待ちに待った。
 「すべらない話」で何となく知ってた上に、この本がベストセラーになってからあちこちの番組で披露していた話なんで全体的に知ってる話ではあった。でもやっぱ、すごい出来事だよなぁ。「解散」って・・・と絶句する。
 公園での生活が限界を迎えた頃に友達の両親が色々と面倒を見てくれる。果てには兄弟3人が一緒に住めるようにアパートを借りるための援助をし、生活保護を受けられるようにまでしてくれた。この両親が本当にいい人達でさー。前に田村のことがTV取り上げられて、このお母さんからの手紙を読む企画があったのを見た。そこの家のお母さんが、田村をその家で面倒を見るかどうかをお父さんに相談したら「うちはもう3人子供がいる。3人も4人も変わらない。最初から4人だったと思えばいいじゃないか」みたいな事を言ったらしい。なかなかの男っぷりなお父さんだ。
 田村も大変だったけど、田村のお姉さんが一番大変そうだった。田村とは別の公園でお兄さんと一緒に寝泊まりしてたらしいんだけど、お兄さんはコンビニでバイトをしている。お兄さんがバイトでいない夜は、女である姉は田村のように公園で1人で寝るわけにはいかない。でもどうしようもなく眠いから、眠らないためだけに一晩中町を徘徊していたそうだ。
 お母さんの話は何度も出てきてたけど、どれも思い出話っぽいのばかり。田村が小5の時に癌で亡くなったと書いてあったのは、この本の中盤辺りだった。それからお父さんも癌で入院し、治ったものの会社を首になったそうだ。新しい仕事に就いたものの、病み上がりで仕事を続けるのは大変だったらしい。そしてこの「解散」へとつながる。田村はお父さんを全く恨んでなくて、むしろ頑張ってくれたことに感謝していると言う。それは「すべらない話」でも言ってたし、他のテレビで取り上げられた時にも言っていた。本当、いい子だなぁ。って、私より1歳年下なだけなんだけど。
 もうね、芸人が好きで『ホームレス中学生』を取り上げたトーク番組もいくつか見て話はほとんど知ってるのに、何で改めて読んだだけでこんなに感激しちゃったんだろう。田村を助けた人達、支えてくれた人達、ダメなところがいっぱいある子でこんな体験したのに明るい田村。なんて人間がでかいんだ。ただ、こういう注目のされ方は芸人・田村としては良かったのか悪かったのか・・・。ベストセラー作家になって印税ザクザクでテレビにも出まくって・・・そして今。麒麟ってあんまりTVに出てなくない?「つらい体験をしたけど周囲の助け得て乗り越え、今は明るく笑ってお笑い芸人」というちょっと同情っていうか憐憫っていうか“こんなコントしてるけど本当はすごい体験をしたんだよね、うんうん”みたいな眼差しで見てしまう。これって芸人としてはマイナスだと思う。麒麟の漫才見ても田村の人生を思い出してしまうもんなぁ。
 まあ、お笑い芸人としてこれからも頑張ってほしいもんだ。
 ちなみにお父さんはどっかの番組の企画で探して見付かったそうだ。今は田村と一緒に住んでるらしい。
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